(事例紹介)脅迫の疑いで岐阜県関市の男性が逮捕
脅迫の疑いで男性が逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
【事例】
警察によると、関市の役所に電話をかけ「お前の仕事場に爆弾をしかける」などと対応した職員を脅迫した男性を逮捕した。
現在のところ、役所から爆弾等は発見されていない。
警察の取調べに対し、男性は「脅迫するつもりはなかった」と容疑を否認している
(本件はフィクションです。)。
【脅迫罪の成否について】
(脅迫)
第222条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
2(略)
まず、刑法222条1項が要求する「生命・身体等に対する害悪の告知」に当たるかを検討すると、爆弾は爆発すれば人の生命・身体に重大な危険を及ぼすものであることは明らかであることから、この発言は同項にいう「害悪の告知」といえます。
次に、「脅迫」といえるかどうか即ち一般人を畏怖させるに足りる程度かという点につき、爆発物を用いた加害予告は、その危険性の性質上、場所や時間の限定がなくても通常人であれば容易に恐怖心を抱くものであり、「脅迫」の要件を満たすことも明らかでしょう。
さらに、故意(刑法38条1項本文)の有無を検討すると、逮捕された被疑者は少なくとも電話で上記発言をする意思を有し、その結果として相手方が害悪を示唆された状態に置かれることを認識していたものと認められます。
したがって、被疑者が取調べにおいて「脅迫するつもりはなかった」と供述しているとしても、発言内容・態様からみて客観的に畏怖を惹起する危険を自覚し得たことは明らかであり、このような弁解によって故意が否定される余地は乏しく、脅迫罪の成立が認められるものと考えられます。
【業務妨害罪の成立の余地】
(偽計業務妨害)
第233条 ……偽計を用いて、人の……業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
本件のような犯行予告型の事案で注意を要するのが、別途業務妨害罪が成立する可能性が高いということです。
本件の爆破予告は、害悪の内容は爆弾による爆発という強度の「威力」であるから、欺罔手段を要件とする偽計業務妨害(刑法233条)ではなく、威力業務妨害(234条)が問題となると思われます。
「人の業務を妨害した」とは、判例上現実の妨害結果の発生は不要であり、本件のような爆破予告であれば十分業務を妨害するに足りる行為があることになり得るのです。
そして、刑法54条1項前段は「1個の行為が2個以上の罪名に触れるとき」は観念的競合として扱い、「最も重い刑により処断する」と定めています。
この場合、法定刑が「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」である脅迫罪ではなく、より重い法定刑である「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」を定める威力業務妨害罪の刑を基準として処罰がなされる可能性があることに注意を要します。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、脅迫事件等を含む刑事事件を専門的に取り扱う法律事務所です。
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