強盗致傷事件で逮捕
強盗致傷事件で逮捕されてしまったケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
事案
岐阜市のガソリンスタンドで起きた強盗致傷事件で、46歳の男Aが逮捕されました。Aは、岐阜市今川のガソリンスタンドで約4500円分のガソリンを給油後、代金を支払わずに逃走し、止めようとした男性店員にケガをさせた疑いが持たれています。
防犯カメラの解析などからAが浮上し、容疑を認めています。
(東海テレビ「スタンドで給油後に代金約4500円分支払わず店員にケガさせ逃走か」(2023/9/11)を引用・参照。)
~強盗致傷罪の成立について~
(事後強盗)
第238条 窃盗が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕を免れ、又は罪跡を隠滅するために、暴行又は脅迫をしたときは、強盗として論ずる。
(強盗致死傷)
第240条 強盗が、人を負傷させたときは無期又は6年以上の懲役に処……する。
(未遂罪)
第243条 第235条から第236まで、第238条から第240条まで及び第241条第3項の罪の未遂は、罰する。
まず、本事案ではAは約4500円分のガソリンを給油し、代金を支払わずに逃走しようとしています。
この時点で、Aは「他人の財物を窃取」しようとしたものとして、少なくとも窃盗未遂罪が成立することになります(刑法235条、243条)。
そして上記の刑法238条は、「窃盗」犯人が「財物」を「取り返されることを防ぎ」又は「逮捕を免れ……るために」、「暴行……をしたとき」は、「強盗として論ずる」と定めていることから、少なくとも窃盗未遂を犯したAが「財物」たるガソリンを「取り返されることを防ぎ」または「逮捕を免れ……るために」、店員Vに「暴行」を加えていることから事後強盗未遂罪が成立すると考えられます(なお、事後強盗罪が既遂に達しているか否かは窃盗が既遂に達しているか否かによって判断されます)。
さらに本事案では逃走する際に店員Vにケガを負わせてしまっていることから、「強盗が、人を負傷させた」といえ、強盗致傷罪(刑法240条前段)が成立しうることになります。
~強盗致傷事件における刑事裁判~
強盗致傷事件は、上記のとおり法定刑として「無期……の懲役」(刑法240条前段)を規定していることから、「死刑又は無期の懲役若しくは禁錮に当たる罪に係る事件」(裁判員法2条1項1号)として、裁判員裁判対象事件となることに注意を要します。
つまり、(事後)強盗罪として起訴されるか(法定刑は「5年以上の有期懲役」)それとも強盗致傷罪として起訴されてしまうかによって、(裁判官のみによる)通常の刑事裁判になるか裁判員裁判になるかという大きな分岐点が存在することになります。
本事案では、強盗致傷罪の成立を争うのは難しいと思われますが、被害者に生じたケガが本当に強盗の際(強盗の機会)に生じたものなのかを争いうるケースにおいては、どちらの罪名で起訴されるかが弁護活動においても重要になると考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、強盗致傷事件を含む刑事事件のみを専門にしている法律事務所です。
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