【岐阜】警察に対する偽計業務妨害で逮捕
偽計業務妨害で逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
事案
2週間で46回の110番通報をして警察の業務を妨害したとして、岐阜市に住む被疑者Aが逮捕されました。
警察によりますとAは7月25日から8月8日までに46回にわたり110番通報をし、「これから事件を起こしたろか」「今から警察署に殴り込みに行こうと思う」などと告げたり、無言で通話を切るなどして、警察官の業務を妨害した偽計業務妨害の疑いが持たれています。
(CBCテレビ「2週間で46回の110番通報 岐阜市の62歳男を逮捕」(2023/8/19)」を引用・参照。)
~偽計業務妨害罪について~
(信用毀損及び業務妨害)
第233条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
第234条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
刑法233条は、偽計等を手段として人の業務活動の自由を害する行為を犯罪として罰する趣旨の規定です。
同法234条は、人の意思を制圧にするに足りる勢力を示す「威力」による業務の妨害を保護する規定を置いていますが、暴力的な手段が用いられている点で233条とは異なっています。
本事案では、警察の業務を妨害したにも関わらず、公務執行妨害罪(95条1項)ではなく偽計業務妨害罪が問題とされている点に疑問を持たれた方もいるかもしれません。
まず、公務執行妨害罪 が成立するには、公務員に対する「暴行又は脅迫」が要件となるためこれらの手段が用いられていない場合には同罪は成立しません。
このような帰結から、公務は「暴行又は脅迫」のようなより強力な手段が採られた場合にのみ処罰されるのであって、業務妨害罪の「業務」に公務は含まれないのではないかという問題があります。
判例・通説は、公務を権力的公務と非権力的公務に分けた上で、後者のみ業務妨害罪の「業務」としても保護されるという立場を採用しているといわれています。
そうすると、この立場からは警察の公務は権力的公務である以上、業務妨害罪は成立しないとの結論が導かれそうにも思えます。
この点に関し、本事案のような(虚偽も含む)犯罪予告によって妨害される本来の警察業務には非権力的な公務も含まれるはずであり、かかる公務が妨害されたことをもって「業務」の妨害があったとして業務妨害罪の成立が認められると考えることが可能です。
したがって、本事案でも偽計業務妨害罪が成立すると考えることができるでしょう。
~警察に対する業務妨害事件における弁護活動~
本事案では偽計業務妨害の疑いで被疑者Aは逮捕されるに至っています。
被疑者が逮捕されたケースにおいては、逮捕後勾留されるかどうか、勾留後起訴されるかどうかが弁護上大きなポイントとなってくると思われます。
後者において不起訴を含めた処分を軽くするために重要になってくるのが被害者との示談の締結です。
しかし、本事案のように被害者が警察(警察官)である場合、被害者との示談は困難と考えざるを得ません。
したがって、典型的な私人が被害者である場合とは弁護活動の内容が異なってくるのであり、被害者の特殊性に配慮した弁護活動が必須であるといえます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、業務妨害事件を含む刑事事件全般を専門として扱っている法律事務所です。
偽計業務妨害事件で逮捕された方のご家族等は、24時間対応可のフリーダイヤル(0120-631-881)までまずはお問い合わせください。