(事案紹介)岐阜県岐阜市で頭部に接着剤様の液体をかけて逮捕された暴行・傷害事件について検討
岐阜市にて被害者の頭部に接着剤様の液体をかけたことで男性が暴行事件で逮捕されたという事案について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が検討致します。
事案
女性の頭部に接着剤のようなものをかけたとして、岐阜県警岐阜中署、岐阜北署、各務原署は、岐阜市、会社員の男を暴行容疑で逮捕した。
県内では女性の頭部に接着剤らしきものがかけられる被害が多発しており、3署が合同捜査を進めていた。
発表によると、男は岐阜市神田町のビルのエスカレーターで、出勤途中のアルバイト女性の頭部に接着剤のようなものをかけた疑い。
その約10時間後、女性の親族を通じて「髪に異物がついた」と110番があった。
(読売新聞「エスカレーターで女性の頭に接着剤?かけた疑い、28歳男を逮捕…岐阜県で同様の被害多発」(2023/10/24)を引用・参照。)
~傷害罪に問われない理由~
(傷害)
第204条 人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
(暴行)
第208条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金又は拘留又は科料に処する。
本事案の被疑者は、被害者の髪(頭部)に接着剤らしきものをかけたとして逮捕されています。
では、逮捕された罪名が傷害罪ではなく暴行罪なのはなぜでしょうか。
これは傷害罪(刑法204条)にいう「傷害」の解釈に関わってくる問題です。有力説はこの「傷害」を人の身体の完全性を侵害することであると解釈します。
この説によると、例えば被害者の髪を切ってしまうことも人の身体の外形における完全性を侵害するものとして傷害罪が成立することになります。
しかし、判例・通説はこの説を採用しておらず、「傷害」を人の生理的機能を侵害することであると解しています。
そうすると、被害者の髪を切ることや接着剤のようなものをかけることも人の生理的機能を侵害するとまではいえず、傷害罪は成立せず暴行罪(刑法208条)が成立するにとどまることになるのです。
もっとも、単に髪を切ることとは異なり、接着剤のようなものをかけた結果として頭部に炎症等が生じる可能性はあり、その場合には判例・通説の見解によっても傷害罪が成立する余地があると言えるでしょう。
~余罪等に関する弁護活動~
報道によると、岐阜県内ではこれまでにも女性に対して同様の被害が多発していたようです。
犯行の特殊性からしても、同様の被害も被疑者による犯行ではないかとの疑いをもとに余罪の追及が行われることは間違いないでしょう。
逮捕され警察署に留置された被疑者が取調べを受けるのは、密室の取調室です。
そのような状況下でプロの取調官と対峙することは、特に初めて逮捕等された方にはあまりにも非対称(アンバランス)と言わざるを得ません。
したがって、逮捕中にも接見する権利(刑訴法39条1項)を特別に有する弁護士による面会が、ほとんど唯一の専門家からアドバイスを受ける機会となります。
余罪対応を含め、弁護士によるアドバイスを早期に受けることの重要性は強調してもし過ぎることはないのです。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、暴行事件を含む刑事事件のみを専門的に取り扱っている弁護士の所属する法律事務所です。
暴行事件を起こしてしまった方やそのご家族は、24時間/365日受付のフリーダイヤル(通話料無料:0120-631-881)までまずはお電話ください。