保釈制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
特殊詐欺事件に受け子として関与したとして、Aさんは岐阜県中津川警察署に逮捕されました。
Aさんは、逮捕後、勾留が決定し、長期の身体拘束を余儀なくされています。
AさんやAさんの家族は、いつ身柄が解放されるのか心配です。
(フィクションです。)
特殊詐欺事件における身体拘束
特殊詐欺事件に関与し逮捕された場合、その後勾留となり長期間の身体拘束となる可能性は非常に高いと言えるでしょう。
特殊詐欺は、組織的に行われていることが多く、捜査に時間がかかることや、共犯者との罪証隠滅を図るおそれがあると判断され易く、ほとんどの場合で、勾留、そして勾留延長が決定します。
また、関与した事件が1件のみという場合は少なく、余罪が発覚し、それについて逮捕・勾留され、身体拘束の期間が長期化する傾向にあります。
特殊詐欺事件のように長期の身体拘束が見込まれる事件であっても、保釈制度を利用して身柄解放となる可能性はあります。
保釈制度とは
保釈は、勾留されている被告人を、一定額の保釈保証金を納付することを条件に、一時的に釈放する制度です。
保釈が許可された場合、被告人はもとの生活を送りながら裁判を受けることができますので、起訴前には身柄解放が困難である事件であっても、起訴後保釈により釈放となる可能性はあります。
保釈には、(1)権利保釈、(2)裁量保釈、(3)義務的保釈、の3種類あります。
(1)権利保釈
一定の事由がある場合を除いて、被告人に「権利」として保釈が認められるものです。
一定の事由とは、次の6つです。
①死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁固に当たる罪を犯した場合。
②過去に、死刑、無期又は長期10年を超える懲役・禁固に当たる罪について有罪判決を受けたことがある場合。
③常習として、長期3年以上の懲役・禁固に当たる罪を犯した場合。
④罪証隠滅のおそれがある場合。
⑤被疑者や証人に対し、危害を加えるおそれがある場合。
⑥氏名又は住所が明らかでない場合。
特殊詐欺事件の場合、詐欺罪又は窃盗罪に当たることが多く、その法定刑は、詐欺罪で10年以下の懲役、窃盗罪で10年以下の懲役又は50万円以下の罰金で、どちらとも短期1年以上の懲役に当たる罪となり、上の①に該当することになります。
また、組織犯罪のため、④の罪証隠滅のおそれにも該当すると判断される可能性はあります。
(2)裁量保釈
権利保釈の除外事由に該当する場合であっても、裁判所の裁量によって保釈が許可されることがあります。
これが「裁量保釈」と呼ばれる保釈です。
裁判所は、「保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認める場合には、職権で保釈を許すことができる」(刑法90条)のです。
被告人には、逃亡・罪証隠滅のおそれがないこと、そして、被告人が身体拘束を受けることで被る不利益について、裁判官に納得してもらうよう主張することが重要です。
(3)義務的保釈
不当に勾留が長引いたときに、請求又は職権によって保釈されるものです。
保釈請求がなされると、裁判官は、検察官に保釈に関する意見を聞いた上で、保釈を許可するか否かを判断します。
保釈許可決定が出された場合、裁判所に保釈保証金を納めることによって、被告人が釈放されます。
保釈請求をするタイミングも重要です。
余罪が複数ある場合、1件目で起訴された直後に保釈請求し、許可されたとしても、その後別件で逮捕されてしまっては、保釈をした意味がありません。
ですので、いつ保釈を請求するのか、捜査状況を考慮して見極める必要があります。
特殊詐欺事件のように長期の身体拘束が見込まれる事件であっても、保釈を利用して釈放される可能性はあります。
ですので、特殊詐欺事件でご家族が逮捕されてお困りの方は、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、特殊詐欺事件を含む刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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