不同意堕胎罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
交際相手の女性に中絶薬を飲ませて流産させようとしたとして、岐阜県大垣警察署は、Aさんを不同意堕胎未遂の容疑で逮捕しました。
Aさんは容疑を認めており、被害女性から妊娠したことを聞いたが、責任と取りたくないと思い、ネットで外国製の中絶薬を購入し、その薬を被害女性に飲ませました。
逮捕の連絡を聞いたAさんの両親は、事件の詳細も分からず不安になり、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)
不同意堕胎罪とは
刑法第29章は、堕胎の罪について規定しており、「堕胎罪」(第212条)、「同意堕胎及び同致死傷」(第213条)、業務上堕胎及び同致死傷(第214条)、そして、「不同意堕胎」(第215条)、「不同意堕胎致死傷」(第216条)が定められています。
今回は、上の事例で問題となっている「不同意堕胎罪」について説明します。
第215条
1 女子の嘱託を受けないで、又はその承諾を得ないで堕胎させた者は、6月以上7年以下の懲役に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。
不同意堕胎罪は、妊婦の嘱託や同意がなく行われた堕胎を処罰するもので、妊婦の意思に反して妊婦の身体を危険にさらした分、同意堕胎罪などの他の堕胎の罪よりも違法性が高い行為であることから、堕胎の罪の中でも最も重い法定刑が規定されています。
不同意堕胎罪の成立には、妊婦の依頼を受けずに、あるいは妊婦の承諾なしに、堕胎させることが必要となりますが、欺罔による錯誤に基づいて同意が得られた場合には、同委の有効性が争われます。
裁判例には、被告人の欺罔により、堕胎しなければ離別されるが、子供をおろせば必ず入籍してもらえると信じた妊婦がした堕胎の承諾は、任意かつ真摯に出たものではないとして、不同意堕胎罪の成立を認めた例があります。(仙台高判昭36・10・24)
条文は、「堕胎させた」という表現であり、妊婦に対して自ら堕胎措置を実施する場合を意味します。
「堕胎」とは、自然の分娩期に先立って人為的に胎児を母体から分離・排出することをいい、胎児が死亡したか否かは問いません。(大判明44・12・8)
また、母胎内で胎児を殺すことも「堕胎」に当たります。
不同意堕胎罪は、未遂も処罰されます。
そのため、堕胎行為に着手したけれども、堕胎させるに至らなかった場合や、堕胎行為と流産との因果関係が認められない場合には、不同意堕胎未遂罪が成立する可能性があります。
不同意堕胎罪は、法定刑も懲役刑のみと刑法犯の中でも重い罪と言えるでしょう。
母親の同意を得ないままに、胎児の命を奪う上に、母親の身体をも危険にさらす大変悪質な行為であり、初犯であっても、起訴される可能性は高いでしょう。
しかしながら、被害女性への謝罪・被害弁償、示談成立など、被告人に有利な事情を収集・提示するなどして、執行猶予付き判決が言い渡される可能性もあります。
実刑と執行猶予とでは、その後の被告人の生活も大きく変わってきますので、できる限り早期に弁護士に相談・依頼されることをお勧めします。
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