振り込め詐欺の受け子

1 振り込み詐欺の受け子・・・?

振り込め詐欺とは、2004年に警察庁が、被害が増加していた「オレオレ詐欺」と、手口が似た犯罪の総称として命名したもので、電話やメールを通して「還付金が発生している」などと告げたうえで相手に金銭を振り込ませたり、郵便や手渡しで現金を送らせたりするなどの方法で行う詐欺の一種です。

現在の振り込め詐欺では寸劇のような役割分担がなされていることもあり、「受け子」とは、詐欺でだまし取った金銭を回収する役のことを言います。このほかにも、振り込まれた現金をATMなどから引き出す「出し子」や、直接被害者に対して金銭を送るよう電話を掛ける「架け子」、詐欺グループの組織を指揮しまとめる「番頭」「店長」などと呼ばれるものもいます。

番頭や店長は、反社会的組織とのつながりを持っていることもあります。一方「受け子」や「出し子」は10代や20代の若者であることが多く、「荷物を受け取るだけのアルバイト」として雇われている場合もあります。

振り込め詐欺で直接被害者に電話を掛ける「架け子」には詐欺が認められますが、単にお金を受け取るだけの「出し子」「受け子」にはどのような犯罪が成立するのでしょうか。

 

2 「受け子」「出し子」も詐欺罪になる

直接電話などで相手を騙していない、「出し子」「受け子」であっても、振り込め詐欺の一翼を担っている存在として、詐欺罪の「共犯」が認められます。

共犯とは複数の者がある犯罪に関与することをいい、関与の形態は3つに分けられています。

一つは「共同正犯」といって、複数の者が自分の犯罪として犯罪に関与するものです。振り込め詐欺の「番頭」や「店長」などは実際に騙す行為をしていなくても詐欺グループ全体をまとめている人物ですから、共同正犯が認められやすくなっています。

二つ目は「教唆」といって、他人に犯罪をするように、そそのかすことを言います。

三つ目は「幇助」と言って、あくまで他人の犯罪を手伝う事をいいます。

共同正犯と教唆は実際に犯罪をした人(正犯)と同じ刑になりますが、幇助の場合は正犯の刑の半分になります。そのため、振り込め詐欺の共同正犯と教唆犯は詐欺罪として「10年以下の懲役」の刑を受けますが、振り込め詐欺の幇助犯の場合は「5年以下の懲役」となり刑が軽くなります。

「受け子」の場合は共同正犯に当たる場合と、幇助に当たる場合があります。

どちらに当たるのかは事案によっても異なりますが、多くの「受け子」は犯罪の全貌については理解していないことがあり、詐欺グループの中でも末端でもあるため、他の役割よりも幇助であると主張しやすい場合があります。

組織の末端にすぎないのであればそのことをきちんと主張しなければなりませんし、取調べに対しても適切に対応できるよう直ちに弁護士と連絡を取って対策をたてなければなりません。「受け子」であっても逮捕・勾留の上で連日の取調べがなされることもあり、弁護士のサポートを受けることが必須です。

この場合、犯罪には積極的には関与していないと主張することになりますので、検察官が犯行を「共同正犯」であると考えていた場合には「否認」することになり、勾留期間が長くなってしまう可能性もあります。また、実際に「幇助」であったと認められる場合は多くなく、裁判所も、共同正犯と判断した上で軽い刑にするなど考慮する場合もあります。ですので、どのような方針で取調べに対して臨むかは弁護士とよく相談しなければなりません。

「受け子」として詐欺の共犯にあったことを認める場合には被害者の方と示談することが重要です。しかし、他の共犯者もいますので、示談についても弁護士とよく相談して行わなければなりません。

振り込め詐欺のような組織的な犯罪については、組織犯罪処罰法違反として「1年以上の懲役」が科されることになります。前科がなかったとしても実刑判決を受ける恐れが大きい罪名です。

また、組織ぐるみの詐欺の場合は、主犯格の人物について取調べを受ける場合があります。分かる範囲内で捜査に協力することが反省を示すことにつながり、後の有利な処分につながる場合もあります。分からないことについては分からないときちんと答えるべきですが、殊更に嘘を言って捜査を犯人隠匿罪に問われてしまう可能性もあります。そして詐欺グループとの関わりをきちんと断つことができるのかという点もその後の処分を決めるうえで重要な要素になります。

一方、「受け子」であったとしても、本当に荷物を受け取るだけのバイトだと思っていた場合には詐欺罪の幇助すら成立しないことになります。その場合は、本当に「受け子」が詐欺の片棒を担いでしまっていることに気づいていないのかどうかが問題となります。簡単な割には妙に時給が高い、荷物を受け取る際にいつも相手が宅配業者ではなく一般の人である等、薄々振り込め詐欺ではないかと疑わしいままで続けてしまうと、振り込め詐欺だとは知らなかったという主張が難しくなります。後に振り込め詐欺だったと気づいた場合でも、まずは弁護士に対応を相談した方がいいでしょう。
  
振り込め詐欺をはじめとした特殊詐欺の年々被害額は増加しており、平成28年1月から11月までの被害額の合計は368億円にも上っています。振り込め詐欺に対して社会から厳しい目が向けられるにつれて、刑も重くなってきています。「受け子」「出し子」になっていないか心配である、「受け子」「出し子」だと気が付いたがどうしたらいいのかわからないという方も、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。詐欺事件についても数多く取り扱った経験と知識を持つ、岐阜県の刑事事件・少年事件に強い弁護士が、最善の事件解決のために弁護活動を行います。

 

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