保護責任者遺棄で逮捕

保護責任者遺棄について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

岐阜県土岐市に住むAさんは、生後8か月の娘が衰弱した状態であることを知りながら放置したとして、岐阜県多治見警察署保護責任者遺棄の疑いで逮捕されました。
外出さきから帰宅したAさんは、娘が全く動かないことに気が付き、119番通報をしました。
娘は救急車で緊急搬送されましたが、搬送先で死亡が確認されました。
現場に駆け付けた岐阜県多治見警察署の署員は、Aさんから話を聞き、Aさんを署まで連行し、後に逮捕したということです。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、あまりのショックでしばらく頭が真っ白になっていましたが、その後、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探し、Aさんとの接見を依頼しました。
(フィクションです)

保護責任者遺棄罪とは

刑法218条は、保護責任者遺棄罪について次のように規定しています。

老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。

つまり、保護責任者遺棄罪の構成要件は、以下のようになります。
(前段)①保護責任者が
    ②老年者、幼年者、身体障害者又は病者を
    ③遺棄したこと
(後段)①保護責任者が
    ②老年者、幼年者、身体障害者又は病者を
    ③生存に必要な保護をしなかったこと

◇主体◇
本罪の主体は、「老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者」です。
保護する責任があるか否かは、法令の規定に基づく保護義務、契約に基づく保護義務、事務管理に基づく保護義務、条理に基づく保護義務が存在するか否かによります。
事例において、Aさんは生後8か月の娘の母親ですので、民法820条の親権者の子に対する監護義務が存在していますので、本罪の主体となり得ます。

◇客体◇
本罪の客体は、「老年者、幼年者、身体障害者又は病者」であり、老人、幼児、身体器官の不完全な者、身体上の病気のほか精神病にかかっている者、その他広く身体上、精神上の疾患をもつ者です。

◇行為◇
本罪の実行行為は、客体を「遺棄」すること、または、「生存に必要な保護」をしないことです。

「遺棄」とは、客体を従来の場所から生命に危険な他の場所に移転させることをいいます。
移転させられた場所が生命に危険な場所であることが必要です。

「生存に必要な保護」については、客体が生存するめに必要な行為をしないことであり、子供に食事を与えなかったり、病気の人や怪我をした人に必要な治療を受けさせなかったりするなどが該当します。
上の事例では、Aさんが生後8か月の娘が衰弱した状態であることを知りながら放置したというものですが、Aさんは娘を病院に連れて行くでもなく、そのままにしておいたのであり、生存に必要な保護をしていません。

また、本罪の成立には、行為者が、要保護者をその従来の場所から生命に危険な場所に移転すること、または、生存に必要な保護をしないことを認識しており、かつ、自己の要保護者との間に保護責任を基礎づける事実の存在することを認識していることが必要となります。

保護責任者遺棄罪の法定刑は、3月以上5年以下の懲役であり、罰金刑はありません。
また、その結果、人と死傷させてしまった場合には、傷害の罪と比較して重い刑により処断されます。
保護責任者遺棄致傷のときは、3月以上15年以下の懲役に処せられますが、致死のときは、3月以上の有期懲役となります。

保護責任者遺棄逮捕された場合、逮捕後に勾留される可能性が高いでしょう。
「勾留」というのは、被疑者・被告人を刑事施設や代用刑事施設に拘禁する旨の裁判官または裁判所の裁判およぼ執行のことです。
裁判官または裁判所は、勾留の要件を満たしているか否かを検討し、勾留を判断します。

被疑者の勾留の要件は、①勾留の理由、および②勾留の必要性である。

①勾留の理由

勾留の理由は、(ア)被疑者が「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」、(イ)住居不定、罪証隠滅・逃亡のおそれのいずれかがあることをいいます。

②勾留の必要性

勾留の必要性とは、事案の軽重、捜査の進展の程度、被疑者の年齢や身体の状況等から判断した勾留の相当性のことをいいます。

勾留の要件を満たしていると判断されれば、勾留が決定し、被疑者は検察官が勾留請求をした日から原則10日間の身体拘束を余儀なくされます。

保護責任者遺棄事件では、勾留されるケースが多いのですが、勾留を回避する事由がある場合には、勾留を回避するよう身柄解放活動を弁護士に依頼されるのもよいでしょう。
また、保護責任者遺棄罪の法定刑は罰金がなく、起訴されれば公開の裁判が開かれることになりますので、早期に弁護士に弁護を依頼することをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が逮捕されてお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。

 

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