1 医療事故はどんなものか
医療事故は、医療法上の定義では、医療機関に勤務する医療従事者が提供した医療に起因したと疑われるような死亡又は死産で、病院などの管理者が予期していなかったもので、次のような場合を除くとされています。
医療が提供される前に
- 死亡又は死産が予期されることを説明していた場合
- 死亡又は死産が予期されることをカルテなどに記録していた場合
- 医療を行う者や委員会などから死亡又は死産が予期されるとの意見が出されていた場合
医療事故が起きてしまった場合、病院などの管理者は医療事故調査・支援センターに対して報告する義務が課されています。
この医療事故に当たるかどうかは①医療行為と死亡との因果関係の程度、②病院の管理者において死亡や死産を予測していたのかどうか、説明をしていたのかどうか、という点から判断することとなります。
また、医療過誤、と呼ばれるものがあります。これらは医療過程において生じた人身傷害の全般を言います。例えば、外科手術の際、手元を誤って臓器を傷つけてしまい、結果として患者が死亡してしまった場合などがあります。
2 医療事故、医療過度に対する刑事的な責任
現在、医療事故の報告義務違反について医療法上の罰則は設けられていません。しかし報告をしないことで、後述するような医師法の免許取り消し事由となったり、遺族からの民事上の請求が高額となったりすることもあります。
医療過誤や医療事故に関する刑事罰は、業務上過失致死傷罪(5年以下の懲役又は100万円以下の罰金)があります。上記の例の、明らかな不注意(過失)は業務上過失致死罪となる場合もありますが、投薬や手術などの結果として患者が死亡した場合、直ちに犯罪が成立するわけではありません。
その時の医療水準に照らして、必要とされる医療について最善の注意を尽くして患者の診療を行っているかどうかによって、犯罪の成否が分かれます。2004年12月に帝王切開を受けた女性が死亡した件について、執刀医が逮捕されるということがありました。
この事件について、当時の執刀医は起訴され、裁判においては執刀医の過失の有無が争点となりましたが、裁判所は執刀医がした措置は適切であったとして無罪判決を言い渡し、そのまま確定しています(福島地方裁判所平成20年8月20日)。
業務上過失致死傷罪において医師の責任が争われた場合、標準的な医療水準について十分に立証し、医療行為は適切であったことを主張することになります。
医療事故・医療過誤でお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。岐阜県の刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う弁護士が、効果的な主張、立証のために尽力いたします。
3 医師法違反はどんな罪があるのか
医師法違反としては、まず、無免許による医療行為があり、これに対しては3年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科せられます。
また、診察をしないで処方箋を出した場合、薬を処方したのに処方箋を書いていない場合にも、医師法違反として50万円以下の罰金が科せられています。
いずれも、医療行為が患者にとって危険である可能性があるため処罰されています。
また、常務上過失致死罪と併せて医師法違反で立件される場合があります。これは、医療過誤によって死亡したとされる患者について、異常死の届出義務違反とされるものです。前記の帝王切開の執刀医も医師法違反で起訴されていますが、患者の死亡が過失のない医療行為によっても避けられない場合であったのであれば「異常」があったとはいえないとして、執刀医の届け出義務はないと判断されています。
医師法では医師の免許の取消し事由についても定められており、罰金以上の刑に処せられた場合や医師としての品位を欠く行為があった場合には免許が取り消されることがあります。免許を取り消された状態で医療行為を続けると、前記のように無免許での医療行為として罰せられることになります。
4 医療事故、医師法違反の弁護活動
医療過誤として業務上過失致死傷罪の捜査が行われた場合、在宅のまま捜査が進むこともありますが、カルテなどの改竄のおそれを疑われ、逮捕・勾留がなされることがあります。身柄拘束がなされると、最長72時間は弁護士以外とは面会ができませんし、身体拘束は最長23日になることがあります。また、医療過誤については事件の内容が複雑であり、捜査機関が十分な医学的知識を有しているとも限らないことから、長時間の取調べがなされることが多くあります。
これらの捜査に対して適切に異議を申し入れたり、取調べにおいて虚偽の自白がなされたりしないよう、弁護士によるサポートが必要です。弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では岐阜県の刑事事件を専門に扱う弁護士を、ご依頼から24時間以内に派遣する「初回接見」を行っています。逮捕直後から弁護士による助言がその後の捜査を大きく左右する場合もあります。ご家族の方がご本人に代わって弁護士を派遣することもできます。
医療過誤について患者の方や遺族の方と示談することも考えられますが、医療過誤となっている場合、被害感情が激しいことが多く、示談が大変難しいことがあります。民事上の損害賠償請求訴訟を提起されることもあります。示談に当たっては粘り強く交渉を続けるしかありません。
業務上過失致死傷について検察官が、犯罪が成立すると考えた場合、被害の程度が軽微であれば略式起訴となる事もありますが、医療過誤は事実関係が争われることが多く、また、被害自体も重篤なものであることが多いため、正式な裁判として起訴される可能性が高くあります。事実関係について争う場合、手術時の記録や立ち会った人の証言などを元に主張立証を行うことになります。
岐阜県の医療過誤、刑事事件について裁判で争う場合にも弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。医学文献等の証拠と併せて、主張・立証に尽力いたします。
また、医師法違反(無免許医療)についても逮捕、勾留がなされる場合があります。
無免許による医療行為については前科などがない場合には略式起訴がなされ罰金刑のみが言い渡される場合もありますが、危険性の高い医療行為を行っていた場合には正式裁判がなされ執行猶予つきの懲役刑が言い渡される場合もあります。
タトゥーや医師免許が必要なのか?
近年、医師免許を持たない彫り師がタトゥーを彫ったとして摘発される例が相次いでいます。平成13年に厚生労働省は「針先に色素をつけながら、皮膚の表面に墨等の色素を入れる行為」については医療行為に当たるとの見解を示していますので、タトゥーについても医師免許が必要な医療行為であると考えられています。
しかし、現在、タトゥーを彫る行為は医療に当たらないとして争っている裁判が争われており、裁判所の判断が待たれています(大阪高等裁判所では無罪が言い渡された事案もあります)。
医療事故、医師法違反についてお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に一度ご相談ください。岐阜県の刑事事件を専門に扱う弁護士が、ご依頼者様の主張を法的な主張として検察官、裁判官へ主張してまいります。