1 薬物の再犯について
日本においては薬物の所持や使用について取り締まる法律として覚せい剤取締法、大麻取締法、麻薬及び向精神薬取締法、薬事法などがあります。
これらは、依存性や中毒性が強く、人の心身に対して悪影響が強い作用を持つ薬物や植物について規制しているものです。いずれについても程度の違いはある物の依存性があるため、薬物犯罪、特に所持の罪や自己使用の罪については再犯率が6割強と極めて高くなっています。
家族や知人が一度薬物事件で有罪判決を受けた後、何もしないでいると再び罪を犯してしまう可能性がとても高いということです。また、逮捕されてから判決まで身体拘束が続いていた場合、その間は一度も薬物を使用していません。そのため、覚せい剤を乱用していた場合、急に薬物を強制的に断ったことで、禁断症状を呈し、釈放された後に混乱状態になってしまうこともあります。
有罪判決を受けてから社会に戻る際、多くの場合、最初に被告人と接することになるのは被告人の家族になります。この時に、薬物との関係を断ち切ることができるかどうかによって、その後の被告人の人生も大きく変わることになります。
被告人自身が薬物との関わりを絶とうという意思を持っている場合、周りの家族が支えてあげられるかどうかによって、その意思を実現できる可能性も変わってくることになります。
2 やめさせるためにできる事
有罪判決後、執行猶予付きで社会に復帰した場合、まず、被告人に保護観察が付いていた場合には保護司による監督をきちんと受けさせることが重要です。
保護司は保護観察期間中、定期的に面談を行いますし、薬物事件で有罪判決を受けたものに対しては抜き打ちの薬物検査を行ったり薬物防止のための専門的な教育を行ったりします。このような専門家の支えについて、まずは知り、家族がきちんと保護司の元へ行っているかどうかを見てあげることになります。保護観察所までの送り迎えに付き添うのも有効です。保護司ときちんと面談を行っていないということから執行猶予を取り消され、刑務所へ行かなければならない場合もあるためです。
保護観察などがない場合でも専門家の助けを借りることはできます。現在全国には約60か所(平成24年時点)にダルク(Darc)という、薬物依存からの回復のためのグループがあります。ここでは薬物依存のある方同士が助け合って再犯をしないように生活するためのカウンセリングやミーティングを行っています。苦しい思いをしているのは自分だけではないと思うことや、同じ目標を持つ仲間がいることを認識できることで、薬物への依存から抜け出すことを目的としています。
また、薬物への依存を精神障害と捉え、治療を行う医療機関も増えつつあります。そこでは臨床心理士によるカウンセリングや依存を抑えるための投薬治療などが行われています。
こうした専門機関を積極的に活用することも家族によるサポートとしては有効です。
そしてなにより、家族が日々の生活をきちんと見守ることが再犯防止のためには必要不可欠です。薬物に手を出してしまうまでには様々な問題が絡まっています。
家族と日々生活してコミュニケーションをとることによって、問題解決の糸口が見つかる場合があります。孤独感から薬物を使い始めてしまった場合には家族がついていることで同じ思いから薬物を使うのを防ぐこともできます。仕事のストレスが原因である場合には家族ができる範囲で支援をすることで「薬物に頼らないストレスへの対応」を身に着けることも可能です。
また、日々の生活について監督する人がいることにより、本人のちょっとした変化にもいち早く気づくことができます。以前の薬物仲間との関わりが再燃してしまいそうな場合には再犯の前にそれを防いだり、体調面や精神面で優れないときには薬物に手を出す前に専門の医療機関に係らせたりすることができます。
さらに、家族は本人と一緒になって薬物を断つという目標を見ることができます。「家族がいる」ということ自体が薬物に再び手を出しそうになった時の抑止力にもなるかもしれませんし、逆に、「今日一日は薬物のことを考えないで過ごすことができた」という日々の目標達成を共有することができます。
薬物依存から脱却のために即効性のある有効な治療方法がないなかでは、一日一日を薬物なしで過ごしていくということが大切です。こつこつとして努力を続けるために、家族という存在がとても大きな意味を持ってきます。
3 またやってしまった場合にできること
ご家族の支えがあっても再犯を犯してしまう場合があります。その場合でもできることはあります。
まず、裁判で情状証人として証言することができます。再犯してしまったとしても支える家族がいることを裁判所に分かってもらうことで、実刑を回避できる場合もあります。
しかし、前回の裁判でも証言していた場合には、「家族がいたとしても再犯をしてしまう」と思われてしまうため、前回の場合と今回の場合との違いをきちんと説明しなければなりません。再犯をしてしまった後でも、なお家族の支えが有効適切であると、裁判所に対して説得的に伝える必要があります。弁護士とも十分な打ち合わせをして証言に臨んだ方がよいでしょう。証言まではできないという場合でも、身元引受人となる事や、事件が終結した後は家族が再びきちんと生活の面倒を見ることの誓約書を作ることで、減刑を求める資料とすることもできます。
また、前回の裁判の後に医療機関などの専門機関を利用していなかった場合には、再犯後の裁判の準備と並行して医療機関を利用するための手続きを進めることができます。場合によっては入院も必要になるでしょう。釈放後には直ぐに入院する準備をしていると主張することで、身柄の釈放が早まることもあります。
岐阜県で、家族が薬物を繰り返してしまうことでお困りの方も弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。事件化した場合には薬物事件の豊富な経験を有する岐阜県の刑事事件専門の弁護士が最善の弁護活動を行います。