交通事件:危険運転

危険運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県加茂郡坂祝町で、乗用車とトラックが衝突し、乗用車の同乗者が死亡する事故が起きました。
ドライブレコーダーの映像から、乗用車が法定速度を大幅に超えて走行しており、反対車線に進入してトラックと正面衝突したことが分かりました。
岐阜県加茂警察署は、乗用車の運転手を自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の疑いで逮捕しました。
(フィクションです。)

危険運転致死傷罪

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)が、平成25年に成立し、翌年5月20日から施行されました。
自動車運転処罰法は、その名の通り、自動車の運転によって人を死傷させる行為等に対する刑罰を定めています。

自動車運転処罰法は、その第2条及び第3条において危険運転致死傷罪について規定しています。
ここでは、2条について概観します。

危険運転致死傷罪(2条)

次の8つの行為行ったことにより、人を負傷させた者は、15年以下の懲役に、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処することを規定しています。

①アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
「正常な運転が困難な状態」は、道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることを意味します。
「困難な心身の状態」であることが必要なので、正常な運転ができないおそれ(可能性)がある状態とは異なり、泥酔状態で、前方の注視が困難になったり、ハンドルやブレーキ等の操作が思ったように行うことが現実に困難な状態にあることが必要となります。
そのため、故意についても、運転者において、正常な運転が困難であることの法定評価を認識していることまでは必要となりませんが、道路や交通の状態、自動車の性能等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態であることの認識が求められます。

②その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
「進行を制御することが困難な高速度」とは、速度が速すぎて、道路状況に応じて自動車の進行を制御し、進路に沿って進行することが困難となるような速度のことをいいます。
この罪が成立するためには、運転者において、進行を制御することが困難な高速度で走行していたという認識が必要となります。

③その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
「進行を制御する技能を有しない」とは、自動車を進路に沿って走行させるための基本的な操作を行う技量を欠くことを意味します。
進行を制御する技能を有しないとされるためには、運転免許を取得していないことが前提となりますが、免許を取得していな者=進行を制御する技能を有しないというわけではなく、事故の態様、事故前の運転状況、運転経験の有無、程度等を総合的に検討した上で、進行を制御する技能を有しないかどうかが判断されます。
運転者において、進行を制御する技能を有しないことの認識が必要となりますが、技能の未熟さを認識している事実、無免許であることや運転経験がほとんどないことの認識があれば足りるとされています。

④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
この罪は目的犯であるため、運転者において特定の相手方に対する通行を妨害する目的が必要となります。
「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは、相手方と衝突すれば大きな事故を生じさせると一般的に認められる速度、あるいはそのような大きな事故になることを回避することが困難であると一般的に認められる速度のことです。

⑤車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険を生じさせる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
④は、加害車両が「著しく接近」したときに、「重大な交通の危険を生じさせる速度」で走行していることが要件となっていますが、⑤は、被害車両が「重大な交通の危険を生じさせる速度」で走行しているときは、通行妨害目的で、被害車両の前方で停止するなどして、被害車両に著しく接近することになるような方法で自動車を運転することを対象としています。

⑥高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車を運転することにより、走行中野自動車に停止又は徐行をさせる行為
この罪は、令和2年改正処罰法により新設されました。
高速自動車国道等における固有の危険性に着目して、高速自動車国道等においての適用が前提とされています。

⑦赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
「殊更に無視」は、赤信号に従わない行為のうち、赤信号におよそ従う意思のないもので、赤信号であることを認識していること、止まろうと思えば止まれること、それでもあえて進行することがその要件とされています。

⑧通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
この罪が成立するには、他の危険運転致死傷罪と同様に、危険運転行為の故意があることが必要となります。
つまり、交通禁止道路を通行していること、そして、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転していることの認識です。

危険運転致死傷罪の成立には、上の8つの危険運転行為のうちいずれかと問題の事故との間に因果関係がなければなりません。

危険運転致死は、裁判員裁判対象事件であり、この罪で起訴されれば、通常の刑事裁判ではなく、裁判員と裁判官によって審理されることになります。
裁判員裁判では、通常の刑事裁判とは異なる手続がとられますので、裁判員裁判にも精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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