強制わいせつ事件で執行猶予

強制わいせつ事件での執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
昨年の夏、夜中に岐阜県中津川市を歩いていた女性を背後から襲い、無理やり女性の服の中に手を入れ胸を鷲掴みにするという事件が起こりました。
岐阜県中津川警察署は、被害女性からの申告を受け、強制わいせつ事件として捜査を開始しました。
その後、同警察署は、市内に住むAさんを強制わいせつ事件の被疑者として逮捕しました。
警察署は、Aさんが他にも同様の手口で女性に暴行を加えた疑いがあるとみています。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、すぐに弁護士に接見を依頼しました。
弁護士から被疑事実を聞いたAさんの両親は、ショックを隠せませんが、Aさんが刑務所に入ることになるのか心配でなりません。
(フィクションです)

執行猶予について

検察官が、裁判所に対して、特定の犯罪事実について特定の被告人に対する実体的審理及び有罪の判決を求める意思表示(「公判請求」といいます。)をすると、裁判所は、被告人が起訴状に書かれている罪を犯したことが間違いがないと判断できるかどうかを、裁判所に提出された証拠に基づいて審理します。
裁判官は、有罪あるいは無罪のどちらかを選択します。
裁判官が、「被告人が起訴状にある罪を犯したかもしれないが、そうじゃないかもしれない。」と、白とも黒とも言い切れない場合には、無罪を言い渡します。
他方、証拠から、被告人が起訴状記載の罪を犯したことが、合理的な疑いを超えて証明されたと判断する場合には、裁判官は被告人を有罪とし、どのような刑にするかを決めます。

刑罰には、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収があります。
上の事例において、Aさんが問われている強制わいせつ罪の法定刑は、「6月以上10年以下の懲役」となっており、強制わいせつ罪で有罪となれば、この範囲内(6月~10年)の懲役刑が科されることになります。
ただし、強制わいせつ罪で有罪判決を受けた全ての場合について、実際に刑務所に入るわけではありません。

刑の言い渡しを受けた場合であっても、刑を言い渡すにあたって、犯情により一定期間その執行を猶予し、猶予期間を無事に経過したときは、刑罰権の消滅を認める制度があります。
これを「刑の執行猶予」といい、刑の全部の執行猶予と刑の一部執行猶予とがあります。
ここでは、刑の全部の執行猶予について解説します。

刑の全部の執行猶予は、すべての有罪判決に付くわけではありません。
次の要件を充たす場合のみ適用することができます。

刑法25条1項は、
①前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者、あるいは、②前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終えた日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者、であって、
3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金の言い渡しを受けたとき、
情状により、
裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間で、
その刑の全部を猶予することができる。
と規定しています。

つまり、裁判官が、執行猶予とするには、
①(a)これまでに禁錮以上の刑に処せられたことがないこと、または、
 (b)これまで禁錮以上の刑に処せられたことがあるが、その執行を終わった日またはその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがないこと。
②3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金の言い渡しをする場合であること。
③執行猶予を相当とするにたりる情状があること。
を充たしている場合に限られます。
これらは、初度の場合であり、再度の場合については、
①前に禁錮以上の刑に処せられ、その執行の猶予中であること。
②1年以下の懲役・禁錮の言い渡しをする場合であること。
③情状が特に酌量すべきものであること。
が要件となります。
再度の場合は、初度の場合に比べ、厳しい要件が設けられています。

上の事例について考えてみたとき、仮にAさんが初犯であったのであれば、刑の全部の執行猶予(初度の場合)の1つ目の要件を充たしていることになります。
また、強制わいせつ罪で有罪となった場合には、裁判官は、6月以上10年以下の範囲での懲役刑を科すことになりますので、6月~3年の範囲で懲役刑を言い渡すことも可能ですので、上の2つ目の要件も充たす可能性はあります。
最後の「執行猶予を相当とするにたりる情状」ですが、強制わいせつ事件では、被害者との示談が成立しているかどうかが大きなポイントとなるでしょう。
その他、家族の監督や専門的治療を受けるなど再犯防止策がしっかりと講じられている等も、被告人に有利な事情として考慮されるでしょう。

このように、執行猶予を獲得するためには、被害者との示談交渉をはじめ、早期に対応すべき事柄も多く、専門的知識や経験が必要となります。
そのため、これらの活動は、早い段階から刑事事件に精通する弁護士に相談することをおすすめします。

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