無理心中で殺人罪

無理心中殺人罪となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
病気を患っている娘の育児と生活の不安から、幼い娘と共に岐阜県瑞穂市にある湖で入水自殺を図ろうと、娘を抱いたまま湖に入水したAさん。
たまたま現場付近にいた目撃者に救出されたことで、Aさんは一命を取り留めましたが、Aさんの娘は搬送先の病院で死亡が確認されました。
岐阜県北方警察署は、Aさんの体調の回復を待ち、Aさんを殺人の容疑で逮捕するとしています。
事件の連絡を受けたAさんの両親は、今後どのような流れになるのか全く分からず刑事事件専門の弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)

無理心中

「心中」というのは、一般的に、2人ないし数人の親しい関係にある者たちが、合意の上で一緒に自ら命を絶つことをいいます。
これに対して、相手の合意なく無理やり行われる心中のことを「無理心中」といいます。
無理心中の典型例としては、恋愛のもつれから恋人を殺害して自殺する場合や、自分が自殺した場合に残された家族の生活を不憫に思い、家族を殺して自らも命を絶つ場合などがあります。
最近では、インターネットを通じて、自殺願望のある見ず知らずの人たちが集い、一緒に自殺するといったケースも度々見受けられるようになりました。

無理心中を行った者に対しては、通常、殺人罪が適用されます。

刑法第199条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の有期懲役に処する。

■犯行の対象■
殺人罪の客体は、「人」です。
ここでいう「人」とは、出生から死亡までの生存する自然人のことを指します。
生命のある自然人であればよく、瀕死の病人、生育の見込みのない早産児、仮死状態で生まれた嬰児、失踪宣告を受けた者も対象となります。
そのため、仮に、A さんの娘が余命半年の状態であったとしても、行為時に生きているのであれば、殺人罪の犯行の対象となります。

■行為■
殺人罪の実行行為は、人を「殺す」ことです。
「殺す」とは、自然の死期に先立って他人の生命を断絶することで、その方法は問いません。
湖に入水し溺死させる場合も、人を「殺す」行為に当たります。
「殺す」行為には、作為だけでなく不作為も含まれます。

実行の着手は、行為者が殺意をもって他人の生命に対する現実的危険性のある行為を開始した時に認められ、実行行為により人を死亡させた時点で既遂となります。
殺人罪の成立には、殺人の実行行為と人の死亡との間に因果関係がなければなりません。
この因果関係については、実行行為がなければ人が死亡しなかったという条件関係があれば肯定できるものと理解されています。

■故意■
殺人罪が成立するためには、行為時に殺意がなければなりません。
殺意とは、人を殺す意思であって、これは確定的なものだけでなく、未必的でも条件付きでも構いません。
無理心中の場合は、相手方を殺して自分も死ぬこと(若しくは同時に死ぬこと)を意図して行為に及んでいるため、故意は認められるでしょう。

Aさんは一命を取り留めていますが、仮に、Aさんも死んでしまった場合は、どうなるのでしょうか。
Aさんが死んでしまった場合であっても、Aさんが無理心中の末に娘を死亡させたと疑うに足る相当な理由があると考えられる場合には、被疑者死亡のまま捜査が行われ、警察から検察へと事件が送られます。
そして、検察官は事件を起訴するか否かを決めるわけですが、被疑者が既に亡くなっているため裁判することはできませんので、被疑者死亡を理由として不起訴処分とします。

Aさんは生き残っているため、通常の刑事事件の手続に付され、Aさんの体調を考慮しつつ捜査は継続されます。
捜査の結果、Aさんを殺人罪で有罪にするだけの証拠がそろっている場合には、検察官はAさんを起訴します。
殺人は裁判員裁判対象事件ですので、起訴されれば、裁判員裁判となります。
罪を認める場合には、行為に至った経緯や背後にある問題、事件後の様子など、できるだけ刑が軽くなるような弁護をすることになります。
他方、無理心中のようなケースでは、被疑者・被告人が精神疾患を患っていた場合が少なくないため、犯行時の責任能力の有無について争われることがあります。
そのような場合には、被疑者・被告人の精神鑑定を行い、犯行時にどのような精神状態であり、病気がどの程度犯行に影響を及ぼしていたのかを検討していかなければなりません。

刑事事件への対応は、刑事事件に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

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