無銭飲食で詐欺罪

無銭飲食詐欺罪となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県岐阜市の漫画喫茶に入店したAさんは、かつ丼やラーメンを注文し食べました。
会計時に、店員はテーブル利用料や飲食代金など約5000円をAさんに請求しましたが、Aさんは「お金がない。」と言い、支払おうとしなかったため、店員が岐阜県岐阜南警察署に通報しました。
通報を受けて駆け付けた警察官は、Aさんや店員に事情を伺い、Aさんの所持品などを調べましたが、現金は1000円ほどしか持っていませんでした。
警察官は、Aさんを詐欺の現行犯で逮捕しました。
(フィクションです)

無銭飲食で詐欺罪が成立し得る場合とは?

詐欺罪は、刑法246条に次のように規定されています。

1 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

詐欺罪の構成要件は、以下の通りです。
【1項詐欺】①人を欺いて
      ②財物を
      ③交付させたこと
【2項詐欺】①人を欺いて
      ②財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させたこと

1.1項詐欺

◇客体◇
1項詐欺の客体は、他人の財物であり、他人の占有する他人の動産および不動産です。

◇行為◇
1項詐欺の実行行為は、人を欺いて財物を交付させることです。
①欺く行為をして、②それに基づき相手方が錯誤に陥り、③その錯誤によって相手方が処分行為をし、④それによって財物の占有が移転し、⑤財産的損害が生じることが必要となります。

①欺く行為
「欺く」とは、一般人をして財物・財産上の利益を処分させるような錯誤に陥らせることをいいます。
人を欺く行為でなければならないので、機械に対して虚偽情報を入力しても詐欺罪における欺く行為には当たりません。

②錯誤
「錯誤」とは、財産的処分行為をするように動機付けられるものであればよく、法律行為の要素の錯誤であると、動機の錯誤であるとを問いません。

③処分行為
相手方の錯誤に基づく財産的処分行為により財物の占有を行為者が取得することが必要です。
この処分行為は、財産処分の意思と財産を処分する事実とが必要です。
財物を処分する意思をまったく有しない幼児や高度の精神病者などには、財産的処分行為は認められず、これらの者を欺いてその財物を奪う行為は詐欺罪ではなく窃盗罪を構成することになります。

④財物の移転
相手方の処分行為により、財物の占有が移転することが必要です。

⑤財産的損害
詐欺罪の成立には、被害者に何らかの財産的損害が生じたことが必要となります。

2.2項詐欺

◇行為◇
2項詐欺の実行行為は、人を欺いて財産上不法の利益を得ることです。
「財産上不法な利益を得る」というのは、欺く行為に基づく錯誤の結果おこなわれた財産的処分行為によって行為者または一定の第三者が、不法に財産上の利益を取得することです。

無銭飲食の場合

1.注文する時点で支払いの意思がない場合

飲食を注文した時には既に代金を支払う意思がなかった場合、注文行為が欺く行為であるため、1項詐欺が成立するものと考えられます。
支払う意思の有無は、人の心の中のことなので、注文時に所持していた現金やカードなど客観的な状況から支払う意思があったか否かが判断されます。
当然、現金をもちあわせずに注文したのであれば、支払う意思がなかったと判断される可能性はあります。
もちろん、もっていたと勘違いして注文したが、支払いの際に実は現金をもっていなかったことが分かった等の事情があれば話は別です。

2.代金支払いの時点でお金を持っていないことに気付き、支払を免れた場合

さて、代金を支払うときになり、お金を持っていないことが分かったが、支払を免れようとした場合は、代金債務を免れたものと言え2項詐欺が成立する可能性があります。
例えば、店員に、「そこのATMで現金をおろしてくるので、すぐ戻ってきます。」などと申しつけて、そのまま逃走したのであれば、店員に支払う意思があると騙し、客が戻ってくるのを待ち支払いを一時猶予したことになり、逃げた客が不法に財産上の利益(=代金債務の免除)を得たことになります。

3.店員に何も告げずに店を出た場合

次に、財布にお金が入っていると思い、料理を注文し、会計を済ませようとした際に、無一文だと気付き、店員に何も告げず店を出た場合には、どうなるのでしょうか。
支払う意思は注文時にはあったので、騙す行為はなく、詐欺罪は成立しないことになります。
そして、代金を支払わずにその場から逃げた場合には、実は何の罪も成立しないのです。
しかしながら、払うべき物を払わずに逃げるなどという行為は決して許されることではありません。

さて、上記事例において、Aさんは所持金が1000円ほどのようでした。
漫画喫茶に入店した上、かつ丼やラーメンを注文するのであれば、それ相当のお金を所持していなければなりません。
Aさんが所持していた金額を認識しつつも、飲食を注文したと認められれば1項詐欺が成立することになります。

詐欺罪で逮捕された場合、逮捕後に勾留となる可能性は高いでしょう。
ご家族が詐欺事件を起こし逮捕されてお困りであれば、今すぐ刑事事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー