痴漢

「痴漢」は、電車や駅構内での痴漢などとしてよくニュースや新聞などでも登場する言葉です。

痴漢は一般的に、人に対してわいせつな言動や卑猥な言動をすることによって人に不快感を与えたり、不安感を与えたりすることを言います。

この「痴漢」という言葉は法律で用いられている言葉ではありません。痴漢に対してはどのような罪が成立するのでしょう。

 

1 「痴漢」の罪

痴漢行為としての数が多い、電車の中で服の上から女性の胸や腰回りを触るという行為は、各都道府県で定められている迷惑行為防止条例に違反します(各都道府県によって名称は異なります)。

岐阜県の場合は、「岐阜県公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」3条1項1号の卑猥な行為にあたり、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金の刑が科されます。
   
これに対して、衣服や下着の中に手を差し入れて直接体を触った場合や下着の上から臀部(お尻から太ももにかけての部分)を触る行為は、条例違反ではなく,不同意わいせつ罪(旧 強制わいせつ罪)という刑法に定められた罪となる場合があります。不同意わいせつ罪の場合、刑は拘禁刑(懲役)しかなく、罰金の定めはありません。

(問題となる条文)

【不同意わいせつ罪(刑法176条)】令和5年刑法改正

「1号から8号までに掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により」「同意しない意思を形成し、表明若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて」「わいせつな行為をした」場合、6月以上10年以下の拘禁刑(懲役)となると規定され、1号から8号については、①暴行又は脅迫を用いたこと,②心身の障害を生じさせたこと、③アルコール又は薬物を摂取させること、④睡眠など意識が明瞭でない状態にさせること、⑤同意するいとまがないこと、⑥予想と異なる事態に直面させて恐怖若しくは驚愕させること、⑦虐待に起因する心理的反応を生じさせること、⑧地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させることなどが挙げられています。また、行為がわいせつなものではないと誤信をさせ、若しくは行為をする者について人違いをさせ、又はそれらの誤信若しくは人違いをしていることに乗じて、わいせつな行為をした者も同様とするとされました。そのほか、不同意わいせつ罪の成立要件は、被害者の年齢によって異なり、被害者が16歳未満の場合(但し、当該16歳未満の者が13歳以上である場合、5歳以上年長者に限る。)、仮に同意があっても不同意わいせつ罪が成立します。

痴漢の容疑がかかった場合、これまでは迷惑防止条例違反で立件されることが多かったように思われます。

しかし、これまでの強制わいせつ罪では、「暴行又は脅迫を用い」た上で、わいせつな行為、つまり衣服や下着の中に手を入れて体を触る等の行為をしたことが必要でしたが、令和5年の改正により、痴漢行為により「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがない」「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること」に該当する可能性が生じることから、不同意わいせつ罪が成立する可能性がこれまでより高くなることが考えられ、この点、注意が必要です。

  
岐阜県の痴漢事件でお悩みの方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

 

2 痴漢事件の手続きの流れ

電車や駅の中で痴漢をして被害者の方が声を挙げて加害者を名指しした場合、多くの場合は被害者の方と駅員室や直接駅付近の交番へ行くことになります。

痴漢をしたことを認める場合、警察官や駅係員が証拠保存のために、被害者を触った手にビニール袋や粘着テープを付けるなどしたり、その場で調書を作ったりすることがあります。

調書を作る際に、警察から身分証などの提示を求められ、勤め先や自宅の連絡先などを聞かれたり、被害者のどこをどのように、どうして触ったのかについて詳しく聞かれたりします。また、被害者の方がその場で声を上げた場合、現行犯となりますので、警察で逮捕される可能性があります。逮捕された場合、最大で72時間弁護士以外と連絡を取ることができなくなります。逮捕されてしまった場合にはすぐさま弁護士に連絡を取るよう警察に求めてください。

逮捕された後、事件は検察庁に送られ、逮捕から72時間以内に、検察官が身体拘束期間を10日間延長するかどうかの判断をします。勾留する必要がないと判断された場合にはその場で釈放されます。

条例違反、不同意わいせつ罪の場合でも身元引受人がきちんといる場合や痴漢の態様が悪質であるとは言えない場合には、逮捕後必要な取調べを終えたのち釈放される場合があります。しかし、早期の釈放を目指すためにも弁護士による働きかけは重要です。逮捕されている間は家族であっても面会することができませんで、弁護士なしで行える活動は非常に限られてしまいます。

岐阜県で家族が痴漢で逮捕されてしまってお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。早期の身柄解放と、身体拘束による不利益を最小限に抑える弁護活動を行います。

身に覚えのない、痴漢冤罪の場合、警察に対して疑いを否定し続けていると、身体拘束期間が長期間に及ぶ場合があります。警察官からは連日の取調べが行われ、中には「本当はやったんじゃないか」「被害者はあなたに触られたと言っている」「ほかの乗客も見ていた」などと問い詰める警察官もいます。

また、携帯電話やパソコンなどが差し押さえられデータを解析されるなど、犯罪ではないものの、あまり人には知られたくないプライバシーを詳らかにされる場合もあります。

身に覚えのない嫌疑で捕まった場合も、すぐさま弁護士に相談し、弁護士と話ができるまでは何も話さないことが重要です。警察官と事件以外の雑談をしているうちに、自分に不利になる事を話してしまいそれが調書に残ってしまうこともあります。弁護士と一度会ってから今後の方針や取調べで話すことを決めるのが後の不利益を避けるうえでも重要です。  

…痴漢と言われても逃げたほうがいいの?

本当に痴漢をしていた時もしていなかったときも、被害者の方に声を挙げられた場合は何も言わないでその場から逃げたほうがよいと巷で噂される時もあります。

しかし、身に覚えがないとしてもその場から逃げていることをもって逮捕、勾留の理由とされてしまい、後に長期間の身体拘束を受ける場合もあります。

…会社に痴漢したことを知られたくない

痴漢したことを認めて正直に話す場合、警察官から勤め先の会社についても聞かれます。ですが、捜査に特別な必要がない限り、警察から会社に対して直接連絡が行くことはあまりありません。身体拘束が短く済めば、逮捕されたとしても会社には知られないで事件を終わらせられる可能性もあります。

報道や他の人を伝って会社に痴漢のことを知られる場合はあります。多くの会社では就業規則等で、「法令に触れる行為をした場合には懲戒処分をする」と定められていることもありますので、注意しなければなりません。

 

3 痴漢事件での弁護活動

罪を認める場合の弁護活動

痴漢事件の場合、被害者の被害届を受けて捜査が進むということが大半であるため、被害者の方と示談することが重要です。しかし、上記のとおり痴漢事件については冤罪である場合も多く、すぐさま示談するべきかどうかは弁護士とよく相談しなければなりません。

実際に示談する際には、弁護士を通じて示談するべきです。痴漢に限らず、性犯罪については被害者やその家族の方が加害者に対して様々な感情を抱いており、当事者が直接会ってしまうと、更なる紛争を招いてしまったり、被害者が更に処罰感情を強めてしまったりする倍があります。

示談をするにあたってお困りの方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。岐阜県の刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う弁護士が円滑な示談が実現するよう、交渉を行います。

  
また、身体拘束への対応も必要です。逮捕された場合、身元引受人がいることを主張したり、電車内での痴漢の場合には釈放後に被害者と加害者が同じ電車に乗ることがないように調整したりします。長期間に及ぶ身体拘束に対しては警察や検察に対して抗議を行うとともに、裁判所に対しても働きかけを行います。
  
捜査が終了すると、検察官は起訴するかどうかの判断をすることになります。痴漢事件について加害者自身が十分な反省をしていて前科もないような事件であれば、起訴猶予処分の見込みはありますが、不同意わいせつ罪のように「悪質」と見られるような場合については、起訴される可能性は高くなります。不同意わいせつ罪は罰金刑がないため、まずは起訴を避ける活動が必要となり、起訴されてしまった場合には執行猶予付きの判決を得るための活動が必要になります。

条例違反の場合は罰金刑の可能性もありますので、起訴されるとしても略式起訴とするよう検察官に対して意見することになります。
 

痴漢冤罪の場合の弁護活動

冤罪、つまり無罪の主張をする場合には特に事件の早い段階から弁護人が付いて活動することが重要です。

痴漢事件では自白が証拠として重要となる事案が多く、冤罪事件では嘘の自白調書を作られてしまうかどうかで、判決が大きく変わってきます。嘘の自白をしないためには黙秘権を適切に行使しなければなりません。

しかし、日常生活では、何か聞かれて何も答えないという場面は少なく、何かしらの返事をしてしまう癖がついてしまっている方が大半です。日常とは違う、警察での取調べという特殊な空間で黙秘するというのは並大抵な事ではありません。きちんと黙秘を続けるためにも、弁護士が何度も接見してアドバイスをしたり励ましたりすることが必要です。

ご家族、知り合いが逮捕されてしまったことでお困りの岐阜県の方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。ご依頼から最短即日で弁護士が接見に赴く、「初回接見」も実施しています。

岐阜県の刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う弁護士が、取調べでのアドバイス、特に黙秘権の内容について丁寧にご説明します。

 

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