通貨偽造罪

1 通貨の「偽造」の罪

通貨偽造罪とは、「行使の目的で、通用する貨幣、紙幣、又は銀行券を偽造し、又は変造」する罪です。いわゆる、偽金作りの罪になります。

現代社会において、通貨は非常に信用のある物として扱われており、その信用を害する行為は社会に大きな混乱をもたらすため、通貨偽造の罪には無期又は3年以上の懲役が科せられます。相手を怪我させていない強盗罪には無期懲役刑がないことと併せると、通貨偽造罪がいかに重いものであるか分かります。また、事の重大性から、裁判員裁判の対象事件にもなっています。
  
通貨偽造罪の「行使の目的」とは、本物のお金として使おうとすることをいい、例えば、学校で生徒にお金の授業をするために本物のお金に似た物を作る行為は通貨偽造罪にはなりません。

「偽造」とは、通貨の発行権限がない人が、本物の通貨に見えるような見た目の物を作ることを言います。「変造」とは、本物の通貨を利用して別の通貨のような見た目の物を作ることを言います。

明らかに本物ではない物、例えばノートの切れ端を破いて「千円札」とだけ書いても偽造とはいえませんが、本物の2枚のお札を切り貼りして4枚のお札が折り込まれた見た目の物を作った場合は変造にあたりえます。この場合、手に取って調べれば明らかに4枚のお札ではなく2枚のお札しかないことが分かってしまいますが、「一見して」どれも本物のお札であるように見えるため変造となります。

これらの偽金については作るのみではなく、実際に使ったり他人に渡したり、海外から輸入する行為も同様に処罰されます。使い方としては店舗などの支払いのために使う場合に限らず、自動販売機に入れたり、両替機に入れたりする行為も含みます。

偽金を使って商品を買った場合、店舗側は本物のお金と思って商品を渡しているため、詐欺罪が成立するようにも見えますが、通貨偽造罪は偽金を使うことをそもそも予定していますので通貨偽造罪のみが成立します。

通貨偽造罪と関連したものとして、「収得後知情行使等」という罪があります。これは、持っている通貨が偽金であることを知った後で偽金を使ってしまった場合について特別な刑を定めています。本物のお金だと思っていたのに偽金だったことを知った場合は、これを使ってしまったことについて強く責められないという配慮から、刑が特別軽くなっています。この罪の刑は、使ってしまった偽金の価格の3倍以下の罰金又は科料になります。

 

2 通貨偽造罪の場合の弁護活動

通貨偽造は通貨に対する社会の信用を害する罪ですので特定の被害者がいる犯罪ではありません。また、偽造した通貨を使った相手に対して、被害の弁償を行うことはできますが、一度使われてしまった偽金はその後どこへ流通していったのか分からないため、被害回復が難しい犯罪です。

そのため、十分な反省を示す方法としては認めている罪については正直に話し、手元に残っている証拠などについてはきちんと警察に提出することが必要です。また、偽金を使った相手に対してだけでもきちんと被害弁償をすることや、「贖罪寄付」を行うこともできます。
※贖罪寄付とは、自分の犯罪に対する反省として、犯罪被害者支援会や公益団体などに寄付をすることを言います。
  
犯罪が発覚した時点で、逮捕勾留されやすい犯罪でもあります。証拠隠滅の対象となるような物が多く存在しますし、最も重い刑が無期懲役と犯罪自体重大であるためです。

一方で、捜査する対象や集める証拠が明らかですので、捜査が一通りなされた段階で釈放される可能性はありますし、起訴後に保釈される見込みも十分にあります。

また、本物の通貨に似た物は作っているが、偽造ではなく「模造」であるとして争うこともできます。「模造」の場合は刑法の罪ではなく、通貨及び証券模造取締法違反として1月以上3年以下の懲役の刑となります。「模造」は一見して本物とは見えないものの、紛らわしいものを作った場合を言います。模造は本物に見えないという点から刑が大きく軽減されています。模造であると主張する場合、実際に作られたものを見て主張・立証を行うことになります。
  
罪を認めていたとしても、犯罪の性質上、犯罪の証拠が十分そろっている場合、起訴猶予処分を得られる見込みは大きくないため、起訴された場合は執行猶予付きの判決を得られるかどうかが一つのポイントとなります。

通貨偽造罪として起訴された場合には上記のとおり裁判員裁判が実施されますので早い段階から弁護士が付いて十分な準備をしなければなりません。早い段階から身柄解放のための活動を行うことも必須です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、裁判員裁判についても経験のある弁護士が弁護活動を行います。裁判員裁判は、一般の市民の方々が裁判に加わるため、弁護士も通常とは違った対応が必要になります。岐阜県の刑事事件・少年事件を専門的に取り扱う弁護士が、最善の弁護活動を行ってまいります。

 

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