薬剤師を目指す大学生の痴漢事件
薬剤師を目指す大学生が痴漢事件を起こしてしまったというケースを例にとって、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
~ケース~
薬剤師資格の取得を目指して薬学部に通うAさんは、岐阜県岐阜市内を走行する電車に乗車中、近くにいた女性Vに対してふいに劣情を催し、その臀部を触れる等の行為に及んだところ、Aさんは目撃者Wによって取り押さえられ、AさんとV、Wは次の停車駅で降車しました。
Aさんは駆けつけた鉄道警察隊により、岐阜県迷惑行為防止条例違反の疑いで逮捕され、岐阜県岐阜北警察署に連れて行かれました。
Aさんは自らの軽率さを大いに反省していますが、薬剤師資格の取得を諦めなければならなくなるのではないかと、将来への不安も感じています。
(フィクションです)
~Aさんに成立しうる罪とは~
今回のケースでは、Aさんに岐阜県迷惑行為防止条例違反の罪が成立する可能性が高いでしょう。
岐阜県迷惑行為防止条例第3条1項1号は、「何人も、正当な理由がないのに、公共の場所にいる者又は公共の乗物に乗つている者に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で」「衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から、又は直接人の身体に触れること」を禁止しています。
Aさんは、公共の乗物である電車に乗車しているVの臀部に触れる等の行為を行っています。
当該行為は、岐阜県迷惑行為防止条例違反の罪を構成する可能性が高いと考えられます。
前記行為につき有罪判決が確定すると、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金」に処せられます(岐阜県迷惑行為防止条例第13条1項1号)。
~資格取得と刑事事件の関係・注意点~
Aさんは薬剤師資格の取得を目指して薬学部に通う大学生です。
薬剤師資格の取得を諦めなければならなくなる事態を憂慮しているとのことですが、確かにケースの痴漢事件を起こしたことによって、法律上、薬剤師資格を取得できなくなる事態はありえます。
薬剤師法第5条3号は、「罰金以上の刑に処せられた者」につき、薬剤師免許を与えないことがあるとしています。
ケースのような痴漢事件の場合、初犯の被疑者が有罪判決を受ける際は、罰金刑を言い渡されることが多いようです。
Aさんが罰金刑を言い渡されたとしても、免許を与えるか否かについては薬剤師法上、厚生労働大臣の裁量が認められているため、絶対に免許が受けられない、というわけではありません。
もっとも、免許を受けられなくなるリスクは極力排除するのが望ましいことはいうまでもありませんし、前科がつくことによって、今後の就職活動にも悪影響を及ぼす可能性が考えられます。
現在在籍している大学から懲戒を受ける可能性にも注意する必要があるでしょう。
~罰金刑の回避を目指す~
もし被害者であるVに対して被害弁償を行い、示談を成立させることができれば、起訴されずに済む可能性が高まります。
起訴されなければ、裁判にかけられることはないので、前科が付くことを回避することができます。
示談書に宥恕条項(注1)なども入れてもらうことができれば、不起訴処分を獲得できる可能性がさらに高まるでしょう。
また、示談が成立したことにより、早期の身柄解放を実現できる可能性も高まります。
(注1)
被害者において、被疑者に対する寛大な処分を希望する意思表示を指します。
宥恕条項を示談書に入れてもらうことができれば、起訴・不起訴を決める検察官に対し、Aさんにとって有利な事情としてアピールすることができます。
~まずは弁護士と相談~
もっとも、前述の弁護活動は留置場や拘置所の外でなければ展開することができないものです。
示談交渉や身柄解放活動は、法律の専門家である弁護士に一任し、最もAさんにとって有利に行動してもらうことをおすすめします。
逮捕されてしまった場合には、十分な時間を事件解決に充てることができるかどうかが、事件の結果を左右するカギとなります。
痴漢の疑いで逮捕されてしまった場合には、速やかに弁護士と相談し、事件解決に向けたアドバイスを受けることをおすすめします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を中心に取り扱う法律事務所です。
ご家族が痴漢の疑いで逮捕されてしまい、お困りの方は、是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。