年齢切迫少年と逆送について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県各務原市に住むAくん(19歳)は、アルバイト先のコンビニのトイレにカメラを設置し盗撮したとして、岐阜県各務原警察署に迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、すぐに少年事件に強い弁護士に相談の連絡を入れました。
Aくんの家族は、Aくんは翌月20歳の誕生日を迎えるため、逆送される可能性があることを弁護士から聞きました。
(フィクションです)
年齢切迫少年
少年事件の審判の対象となる少年は、20歳に満たない者です。。
少年法は、少年を以下の3種類に分けています。
①犯罪少年
犯罪を犯した少年。
②触法少年
14歳に満たないで刑罰法令に触れる行為をした少年。
③虞犯少年
虞犯事由があって、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれのある少年。
いずれに該当する場合でも、家庭裁判所の審判の対象となる少年は、少年審判を受ける時点で20歳未満でなければなりません。
捜査段階でも審判段階でも、20歳の誕生日を迎えた場合は「成人」となり、少年事件の手続に付されることはなくなります。
少年審判を受ける時点で20歳を超えることになる可能性がある少年、つまり、家庭裁判所送致時にまもなく20歳を向かえる少年のことを「年齢切迫少年」といいます。
少年が審判前に20歳に達すれば、成人として刑事手続にのせられることになり、家庭裁判所は年齢超過として検察官に送致しなければなりません。
また、20歳になるまでに審判をすることが可能であるとしても、家庭裁判所送致後20歳の誕生日が間近に迫っており、実質的に調査を行う時間がない場合や、年齢に加えて、事案から起訴が相当であると裁判官が判断した場合には、成人に達する前に逆送されることもあります。
逆送(検察官送致)
家庭裁判所が行う決定には、終局決定と中間決定とがあります。
中間決定とは、終局決定前の中間的な措置としてなされる決定であり、試験観察決定などがあります。
一方、終局決定は、少年の最終的な処分を決する決定のことで、(1)審判不開始、(2)不処分、(3)保護処分(保護観察、少年院送致、児童自立支援施設・児童養護施設送致)、(4)検察官送致(逆送)、(5)都道府県知事又は児童相談所長送致、とがあります。
家庭裁判所は、
①調査あるいは審判の結果、本人が20歳以上であることが判明した時(年齢超過)、および、
②死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分相当を認める時
は、事件を検察官に送致する決定をしなければなりません。
この終局決定を「検察官送致」(「逆送」)決定といいます。
先述のように、年齢切迫少年事件において問題となるのは、①年齢超過による逆送です。
審判時に少年が20歳以上に達している場合、少年法の適用対象ではなくなるので、家庭裁判所は審判をすることも保護処分をすることもできません。
そのため、この場合には、家庭裁判所は事件を検察官に送致しなければなりません。
この場合の逆送を「年齢超過逆送」といいます。
逆送のデメリットとしては、刑事手続に付され、起訴されると、成人と同様に刑事裁判を受けることになり、有罪となれば前科が付くことになることに加え、保護処分を受けられないため、少年が教育的な処遇を受ける機会を得られなくなってしまう点です。
例えば、少年審判では保護観察処分が言い渡される可能性が高いが、刑事手続であれば略式罰金で事件が終了することが見込まれる事件では、短期的に見れば、刑事手続の方が、前科は付くものの、早期に事件を終了させることができるという点にメリットがあるように思えます。
しかし、少年手続に付され、保護観察処分を受けることによって、保護観察期間中に、保護観察官や保護司との面談等を通して、教育的処遇を受ける機会を得ることができ、結果的に、少年の更生に資することになるという側面があります。
どちらが少年にとって良いのかは、事件内容や少年自身の持つ問題や周囲の環境等によっても異なります。
年齢切迫で逆送が見込まれそうな場合には、少年事件に精通する弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こし対応にお困りの方は、弊所の弁護士にご相談ください。