間接正犯で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県高山警察署は、酒などの商品を11歳の子供に万引きするよう指示したとして、岐阜県高山市に住むAさんを窃盗容疑で逮捕しました。
子供はAさんに取って来るよう命令されたと言っていますが、Aさんは、「子供が勝手に盗んだだけ。自分は何もしてない。」と容疑を否認しています。
(フィクションです。)
間接正犯とは
犯罪が成立するには、ある行為が、構成要件に該当し、違法で有責であると言えなければなりません。
構成要件に該当するというのは、ある行為が法律により犯罪として決められた行為類型に該当するということを意味します。
殺人罪であれば、「人を殺した」行為であることが構成要件になります。
ある行為が構成要件に該当すると認められる場合には、行為者が実行行為を自ら行い、結果を直接惹起する場合の他に、実行行為を他人に行わせ、その他人によって結果が惹起される場合とがあります。
自ら実行行為を行い結果を惹起する場合を「直接正犯」といいます。
そして、他人の行為を利用して自己の犯罪を実現する正犯を「間接正犯」といいます。
間接正犯が認められるためには、他人の行為を「自己の犯罪の実現のための道具として利用した」と言えることが必要です。(最高裁決定平成9年10月30日)
今回は、刑事未成年者などの責任能力のない者を利用して窃盗を実行した場合での間接正犯の成立について説明します。
先述したように、間接正犯は、他人を「道具」として利用し、自己の犯罪を実現しようとする行為を対象とするものであるため、利用される者は「道具」として利用されたのでなければならず、たとえ刑事未成年者であっても、是非弁別能力のある者であれば、必ずしも利用者の思い通りに行動するとは限りませんので、「道具」として利用されたとは言えないこともあります。
判例においても、刑事未成年者を利用する場合であっても、それだけで直ちに間接正犯が認められるとしておらず、被利用者の意思が抑圧された状態で犯罪を実行した場合に間接正犯を認めるとしています。
12歳の養女に窃盗を命じてこれを行わせた事件において、被告人が日ごろ養女が逆らう素振りを見せる度に顔面にたばこの火を押し付けたりドライバーで顔をこすったりするなどの暴行を加えており、養女は被告人を怖がって被告人の命令に背くことができない状況を鑑みて、養女は12歳という年齢であり是非善悪の判断能力を有する者であったとしても、被告人が、意思が抑圧されている養女を利用して窃盗を行ったとして、被告人について窃盗の間接正犯が成立することを認めた判例があります。(最高裁決定昭和58年9月21日)
10歳の少年を利用して他人のバッグを盗ませたという事件において、被告人と少年の関係性や事実関係に照らして、少年が事理弁識能力が十分とはいえない年齢の刑事未成年者であることや、被告人から直ちに大きな危害が加えられるような状態ではなかったとしても、少年の年齢を考えると、日ごろから怖いという印象を抱いていた被告人からにらみつけられ、命令に逆らえない状況にあったとして、少年がある程度是非善悪の判断能力を有していたとしても、被告人には、自己の言動に畏怖し意思を抑圧されている10歳の少年を利用して自己の犯罪行為を行ったものとして、窃盗の間接正犯が成立することを認めた判決もあります。(大阪高裁判決平成7年11月9日)
このように、刑事未成年者を媒介として犯罪が行われた場合、是非弁別能力があっても、意思の抑圧などの事情が存在する場合には、間接正犯が成立すると考えられます。
上の事例では、Aさんは子供が勝手にやったことと主張していますが、Aさんと11歳の少女の関係性や事実関係によっては、Aさんに対して窃盗の間接正犯が成立する可能性があります。
間接正犯が成立するか否かは、事案にもよりますので、刑事事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
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