宗教的行為による傷害致死事件
宗教的行為による傷害致死事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
【刑事事件例】
自身が組織した宗教団体の教祖であるAさんは、Vさんの母親(Bさん)に助言を頼まれて、精神疾患のあるVさんの治療のために、「線香護摩」による加持祈祷を行うようBさんに指示しました。
Aさんは、加持祈祷行為はVさんが火傷を負う可能性があると認識していました。
一方,Bさんは十年来の信者であり、Aさんに病気を治す力があると信じていました。
Bさんは,Aさんの指示にしたがって、Vさん宅(岐阜県下呂市)において、BさんはVさんに「線香護摩」による加持祈祷を行いました。
BさんはもがくVさんを無理に燃えさかる護摩壇の近くに引き据えて線香の火にあたらせ、数時間後Vさんは急性心臓麻痺によって死亡しました。
Aさんは加持祈祷行為は正当な医療行為であると信じていました。
(刑事事件例は最高裁判決昭和38年5月15日を参考に作成したフィクションです。)
【Aさんに傷害致死罪は成立するのか】
AさんはBさんを通じてVさんに危険な加持祈祷行為を行った結果、Vさんは急性心臓麻痺によって死亡しています。
Aさんは、加持祈祷行為はVさんが火傷を負う可能性があると認識したので、殺意はなかったとして殺人罪は成立しないとしても、傷害致死罪が成立する可能性があります。
しかし、AさんはBさんに「線香護摩」による加持祈祷を行うように指示したのみで、自ら直接危険な加持祈祷行為を行ったわけではありません。
このように自ら犯罪(傷害致死罪)を実行するのではなく、他人を利用して犯罪(傷害致死罪)に当たる行為を行った場合であっても、犯罪(傷害致死罪)が成立するのでしょうか。
この点、自ら犯罪(傷害致死罪)を実行しなくても、自らの犯罪(傷害致死罪)として実現する意思で、利用される者(刑事事件例ではBさん)の行為を支配して意のままに操ったといえる場合、利用した者(刑事事件例ではAさん)が犯罪(傷害致死罪)を犯したといえると考えられています。
【宗教的行為によっても犯罪となるか】
Aさんは刑事事件例のような加持祈祷行為は正当な医療行為であると信じていましたが、それでも傷害致死罪が成立するのでしょうか。
この点、Aさんは危険な加持祈祷行為を行うという事実自体は正しく認識せており、ただ加持祈祷を行うことが医療行為に当たるという評価のみを誤っています。
とすれば、一般人なら違法であると分かる事実(危険な加持祈祷行為を行うという事実)の認識があるのにもかかわらず、あえてその危険な加持祈祷行為を行ったといえます。
そのため、傷害致死罪を犯す意思(刑法38条1項)はあったと評価されます。
以上により、Aさんには傷害致死罪が成立すると考えられます。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門に取り扱う法律事務所です。
刑事弁護士は、宗教的行為による傷害致死事件のような複雑な刑事事件にも強く、またご依頼者の方には刑事事件について分かりやすく説明することが可能です。
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