痴漢事件②:強制わいせつ罪

痴漢行為が強制わいせつ罪に当たる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

会社員のAさんは、満員電車の中で前に立つ女性が抵抗できないことをいいことに、そのスカートの上から、女性の臀部をなでたところ、女性が抵抗しなかったことから、さらに、そのスカートの中に手を差し入れ、下着越しにその臀部をなで回していたところ、女性に手を掴まれ、次の停車駅で下ろされました。
その後、駅長室に連れて行かれ、通報を受けて駆け付けた岐阜県岐阜中警察署の警察官に引き渡されました。
(フィクションです)

前回は、痴漢行為が迷惑防止条例違反に当たる場合について解説しました。
今回は、強制わいせつ罪に当たる場合について説明します。

2.強制わいせつ罪

強制わいせつ罪は、刑法第176条に次のように規定されています。

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

◇客体◇

強制わいせつ罪の客体について、特に制限はなく、男女問わず客体となります。

◇行為◇

強制わいせつ罪の実行行為は、客体が13歳以上の者か13歳未満の者かで異なります。

(1)客体が13歳以上の者の場合:暴行・脅迫を用いてわいせつな行為

①暴行・脅迫
被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度の暴行・脅迫が必要です。
力の大小強弱は必ずしも問わず、被害者の意思に反したわいせつ行為を行う程度のもので足ります。
例えば、通行中の者にいきなり抱きついてキスをする行為は、被害者の油断の乗じたものであり、被害者の意思に反するわいせつ行為だと言えます。
また、暴行それ自体がわいせつ行為であっても構いません。

②わいせつ行為
わいせつな行為とは、いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するような行為といいます。
該当する行為としては、陰部を手で触れる、陰部を手指でもてあそぶ、自己の陰部を強く押し当てる、女性の乳房をもてあそぶ、女性の意思に反して強いてキスをするなどが挙げられます。
女性の臀部をなでる行為は、その態様によってわいせつに該当する場合としない場合とがあります。

(2)客体が13歳未満の場合:わいせつな行為

客体が13歳未満の者である場合は、暴行・脅迫を用いずとも、わいせつな行為をしたのであれば、例えその者の同意があったとしても強制わいせつ罪は成立することになります。

強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反との区別は、相手方の性的自由を侵害する程度に至っているか否かにあり、その対象となる部位や態様の執拗さや程度によって判断されます。
相手方の陰部に触れる行為は、一般的に、強制わいせつに該当することとなりますが、厚手の着衣の上から触るにとどまる場合は、条例違反となる場合が多くなっています。
相手方の臀部に触れる行為については、その態様の執拗さや程度によって異なります。
厚手の着衣の上から臀部をなでる行為は、一般的には、強制わいせつ罪における「わいせつ行為」には至っていないため、迷惑防止条例違反となることが多く、下着の上から、又は直接臀部をなでる行為は、その接触の程度から「わいせつ行為」となることがあります。
スカートの上から臀部をなでる行為については、「わいせつ行為」には至っておらず、迷惑防止条例違反にとどまる可能性が高いのですが、さらに、そのスカートの中に手を差し入れ、下着越しにその臀部全体をなで回す行為については、その程度から「わいせつ行為」に当たるものとみなされ、強制わいせつ罪が成立する可能性があるでしょう。

痴漢の強制わいせつ事件における弁護活動

被害者がいる事件においては、被害者への謝罪・被害弁償の上、示談を成立させることが終局処分に大きく影響します。
強制わいせつ罪は、親告罪ではないため、告訴がなくとも起訴することは可能です。
しかし、起訴前に被害者との間で示談を成立させることができれば、不起訴処分で事件を終了させる可能性を高めることができます。

被害者との示談交渉は、当事者間ではなく、弁護士を介して行うのが一般的です。
性的被害を被った被害者は、加害者に対して嫌悪感や憎悪を抱いていることが多く、当事者間での交渉は難航する傾向にあります。
また、加害者が身体拘束を受けている場合には直接交渉は不可能ですし、捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらうことは難しいでしょう。
弁護士であれば、弁護士限りでとの条件で連絡先を教えてもよいとされる被害者も多く、感情論的ではなく冷静に話し合いをすることができます。
弁護士は、被害者に対して示談のメリット及びデメリットを丁寧に説明した上で、粘り強く交渉することが求められます。

このような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
痴漢事件を起こし対応にお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。

 

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