不正アクセス事件で逮捕
Aさん(21歳)は、岐阜県郡上市にある大学の講義室でパソコンを使っていたところ、隣にいるVさんがメモに何か記載しているのが見えました。
その後、Vさんが席を立った隙にAさんがメモの内容を見たところ、そのメモには銀行の名前と契約者番号およびパスワードが書かれていました。
試しにAさんがその情報をインターネットバンクで入力してみたところ、Vさんのものと思しき口座にログインできました。
そこで、犯行が発覚しづらいよう、Aさんは自身の口座に小額の送金を何度か行いました。
のちにこの事実が発覚し、Aさんは不正アクセス禁止法違反および電子計算機使用詐欺罪の疑いで岐阜県郡上警察署に逮捕されました。
(フィクションです。)
【不正アクセスについて】
一般的に、不正アクセスとは、本来であればアクセスできないコンピュータにアクセスする行為を指します。
日本では「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(通称:不正アクセス禁止法)という法律が制定されています。
上記法律が定める「不正アクセス行為」とは、アクセス制御機能によるコンピュータの利用制限を解除し、本来できないような利用行為をできるようにすることです。
他人のIDとパスワードを入力する、コンピュータに不正な指令や情報を与える、といった行為が、不正アクセス行為の主な手段です。
この不正アクセス行為を行った場合、不正アクセス禁止法違反により3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるおそれがあります。
更に、上記事例のAさんは、不正アクセス行為を行ったうえで不正送金も行っています。
そうすると、他人のコンピュータに虚偽の情報を与えて財産上の利益を得たとして、電子計算機使用詐欺罪が成立する可能性もあります。
電子計算機使用詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役という重いものです。
これに不正アクセス禁止法違反が重なるとなると、刑罰は厳しいものになるおそれがあるでしょう。
【逮捕の種類とその概要】
刑事事件では、事件の重大性や被疑者の態度などを考慮して逮捕が行われることがあります。
この逮捕には、①通常逮捕、②現行犯逮捕、③緊急逮捕の3種類があります。
以下では、それぞれの逮捕の概要を説明していきます。
①通常逮捕
通常逮捕は、過去に起きた事件について、裁判官に逮捕状を請求して行う基本的な逮捕です。
たとえば、捜査機関が自宅を訪ねて逮捕する場合や、警察署で取調べをした際に逮捕する場合などが考えられます。
事前に裁判官に逮捕状を請求する必要があるとされているため、安易な通常逮捕は抑制されていると言えます。
②現行犯逮捕
現行犯逮捕は、犯罪を行っている最中またはその直後である者に対し、逮捕状を取得することなく行う逮捕です。
現行犯は誤認逮捕の可能性が低い一方、直ちに被疑者の身柄を確保する必要があるため、例外的に逮捕状なくして行うことができるものとされています。
また、捜査機関だけでなく私人でも行える点も特徴の一つです。
③緊急逮捕
緊急逮捕は、一定の重大な罪を犯した疑いが充分である者に対し、事後的に逮捕状を取得することを条件に行う逮捕です。
事前に逮捕状を取得する必要がない点で捜査機関に大きな権限があるため、対象となる罪の限定と充分な嫌疑の要求という厳しい要件となっています。
もし緊急逮捕を行った後で逮捕状の請求が却下された場合、被疑者は直ちに釈放されなければなりません。
以上のように、逮捕にはそれぞれ別個の定めがなされており、それを捜査機関が遵守したかどうかは弁護士にとって重要な事情となります。
場合によっては証拠排除による無罪や国に対する損害賠償請求に関わってくるので、違法な逮捕があったと感じたら一度弁護士に相談してみるとよいでしょう。
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