業務上横領事件で事件化阻止

【事件】

Aさんは、岐阜県揖斐郡にある会社で経理を担当していました。
Aさんの業務は、営業などの社員が持ってきた領収書を受け取り、帳簿に記載した上、自分の管理する小口からその金額払い出し、現金を社員に手渡すといったものでした。
Aさんの会社はそれほど規模が大きくないものの、営業が活発に動いていたため、かなりの数の領収書があり、Aさんの上司である課長からは、1万円以内の領収書であれば、上司である課長の許可なく払い戻しても構わないが、1万円を超える領収書については必ず課長の許可をとるようにと言われていました。
ある日Aさんは、自分が私用で食べた1万円以下の飲食費について、営業の社員が接待で使ったかのように装い、会社の小口から払い戻すという不正を行いました。
この不正がばれないかったことから、Aさんは定期的に同様の行為を行い、1万円以下の領収書が出るたびに同じようなことをしていました。
しかし、あるとき、課長があまりにも飲食費が多くなっていたことに気づき、営業の社員に訪ねて回ったところ、Aさんの行為が発覚してしましました。

【横領について】

まず、Aさんの行為にはどのような罪が成立するのでしょうか。
Aさんは、自己の職務の一環として、小口現金を管理しています。また、1万円以下の領収書については、課長など上司の許可なく、自らの権限で払い戻しをすることができるような状態でした。しかし、もちろんですが、Aさんが私用で食べた飲食費を会社小口から出すことは許されていません。
このように、業務上、自身が占有(管理)している現金を、許されていないような場合に払い戻すと、業務上横領罪が成立する可能性が十分にあります。業務上横領罪に該当する場合には、10年以下の懲役が法定刑として定められており(刑法253条)、非常に重い罪となっています。

【業務上横領の刑事罰】

業務上横領罪は窃盗罪と異なり、罰金刑の定めがありません。窃盗罪など罰金刑のある罪の場合には、起訴されてしまう場合にも、公開法廷ではなく、書類だけ裁判所に送られるという略式手続というものがあり、負担が少ない方法が選択される場合もあります。これに対し、業務上横領罪で起訴されてしまうときには、必ず公判請求、つまりテレビで普段目にするような法廷での裁判となります。
そのため、業務上横領罪では、窃盗罪以上に不起訴を目指す必要性が高くなります。

【業務上横領罪の量刑相場】

業務上横領罪で起訴された場合で、初犯(前科がない場合)である場合には、横領の方法や、本人の反省の程度などにもよりますが、概ね横領額(正確には、その段階で弁済できていない被害金額)が100万円を上回ると、実刑判決の可能性がでてきます。
そのため、仮に起訴されてしまうような場合でも、1円でも多く弁済することが必要となります。

【事件化阻止に至るには】

刑事事件は犯罪の発生が不可欠の要素となっており、警察などの捜査機関が介入する点で民事事件(単なるお金の請求など)とは区別されます。
ただ、捜査機関が全ての刑事事件を把握しているということは当然ながらなく、特に被害者がいる事件の殆どは被害届などの受理により認知することになります。
逆に言えば、被害届が出る前の段階で揉め事が解決すれば、事件化阻止が実現し様々な負担を免れることができるということになります。

事件化阻止によるメリットは様々なものがあります。

まず、捜査機関の捜査が及ぶことがなくなるため、取調べなどに時間を割かずに済みます。
事件の捜査は取調べだけでも複数回に渡るのが通常なので、それを全く受ける必要がないというのは大きいです。

また、捜査の進行状況などに縛られることなく、直ちに事件を終了させることができます。
逮捕を伴う事件は別ですが、逮捕を伴わない事件は終了までに数か月を要することもよくあります。
これに対し、事件化阻止による終了は、終了までに要求される捜査を受けることがない結果、速やかに事件から解放されます。

更に、捜査機関から被疑者として扱われないので、犯罪を疑われて捜査を受けたという前歴が残りません。
前歴は有罪となった場合につく前科とは異なりますが、のちに罪を犯した際に不利益に作用することがありえます。
ですので、事件化阻止はそうした不利益を回避することにもつながります。

以上のように、事件化阻止は不起訴や執行猶予よりも綺麗に事件を終えることができる点で優れています。
ただ、事件化阻止を実現するには、捜査機関が事件を了知する前に被害者と示談などを行う必要があります。
その際には円滑かつ適切な示談交渉が最重要となるので、少しでも不安であればぜひ弁護士に相談してください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件に詳しい弁護士が、事件化阻止に向けて示談交渉などに真摯に取り組みます。
業務上横領罪を犯してしまったら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
事務所での法律相談料は初回無料です。

 

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