保護責任者遺棄致死事件で逮捕

保護責任者遺棄致死について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県羽島郡岐南町のパチンコ店の駐車場に停めていた車の中に6か月の乳児を置いたままパチンコに行き、乳児を熱中症により死亡させたとして、岐阜県岐阜羽島警察署は、乳児の母親のAさんを保護責任者遺棄致死の容疑で逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)

保護責任者遺棄致死罪

保護責任者遺棄致死罪は、保護責任者遺棄の罪を犯し、よって人を死亡させる罪で、保護責任者遺棄罪の結果的加重犯です。
保護責任者遺棄致死罪の成立要件は、
①基本犯である保護責任者遺棄罪を犯したこと、及び、
②死の結果が生じ、遺棄又は不保護と死の結果との間に因果関係が存在すること
です。

実行行為が不作為(あえて積極的な行為をしないこと)である場合には、不作為における因果関係が問題となります。
期待された作為がなされていれば合理的な疑いを超える程度に確実に結果は発生しなかったであろうといえる場合には、因果関係が肯定されることになります。

保護責任者遺棄致死罪は、結果的加重犯であるから、主観的には、要扶養者の遺棄又は不保護の認識があれば足り、死の結果の認識までは必要とされません。

保護責任者遺棄致死罪は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断されます。
これは、刑の上限・加減それぞれ重い方で処断する、という意味です。
保護責任者遺棄致死のときは、3年以上の有期懲役に処せられることになります。

それでは、保護責任者遺棄罪について説明します。

刑法第218条は、

老年者、幼年者、身体障がい者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。

と規定しています。

◇主体◇

本罪の主体は、「老年者、幼年者、身体障がい者又は病者を保護する責任のある者」です。
ここでいう「保護する責任のある者」(=保護責任者)とは、要扶養者の生命の安全を保護すべき法律上の義務を負う者のことです。
通説・判例は、保護責任の根拠を、①法令の規定に基づく保護義務、②契約に基づく保護義務、③事務管理に基づく保護義務、④条理に基づく保護義務、に求めています。

①法令の規定に基づく保護義務
ここでいう法令は、公法でも私法でもよく、例えば、公法上の義務については、警察官職務執行法第3条による警察官の保護義務があり、私法上の義務については、民法第820条の親権者の子に対する監護義務、民法第877条の親族の扶養義務などがあります。

②契約に基づく保護義務
契約は明示のものであると、黙示のものであるとを問いません。
例えば、介護契約の場合などがあります。

③事務管理に基づく保護義務
事務管理というのは、義務なくして他人のために事務の管理を始めた場合のことをいいます。
例えば、病人を引き受ける義務のない者が、自宅に同居させた場合などがこの義務にあたります。

④条理に基づく保護義務
具体的事情に即して、法の精神から導かれる保護義務です。
例えば、ホテルの一室において13歳の少女に覚せい剤を注射して錯乱状態に陥れたが、救護措置をとらずに立ち去り、死亡させた事例において保護責任者遺棄致死罪の成立が認められた判例があります。(最決昭63・1・19)

◇客体◇

本罪の客体は、条文上は「老年者、幼年者、身体障がい者又は病者」と規定しているだけですが、扶助を要する者であることと解されています。
扶助を要する者とは、他人の力を借りなければ生命・身体の危険を回避できない者のことをいいます。
そのため、単に経済的に困窮しているだけで心神ともに健全な成人は本罪の客体となりません。

◇行為◇

本罪の実行行為は、①遺棄すること、又は、②生存に必要な保護をしないこと、です。

「遺棄」とは、要扶助者を従来の場所から声明に危険な他の場所に移転させることをいいます。
作為による移置のほか、不作為による置去りも「遺棄」に含まれます。

「不保護」とは、場所的隔離を伴わずに要扶助者の生存に必要な保護をしないことを指します。

車内に乳児を置いたまま長時間車から離れる行為は、「遺棄」に当たるでしょう。

◇故意◇

本罪の故意(罪を犯す意思)としては、被遺棄者が老年者、幼年者、身体障がい者又は病者であり、扶助を要することの認識、遺棄又は不保護を行うことの認識、及び、自ら保護責任を基礎づける事実の認識が必要となります。

以上の要件を満たし、かつ、死の結果が生じ、遺棄・不保護と死の結果の間に因果関係が存在する場合に、保護責任者遺棄致死罪が成立することになります。

本罪は刑法犯の中でも重い罪であり、初犯であっても実刑となる可能性はあります。

ご家族が保護責任者遺棄致死事件で逮捕されてしまった場合には、刑事事件に強い弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。

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