嫌がらせ行為で迷惑防止条例違反となる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県多治見市にある民家の庭に尿が入った瓶が投げ込まれるという事件が起きました。
1か月で3回も同じ被害に遭ったことから、住人のVさんは岐阜県多治見警察署に相談しに行きました。
付近の防犯カメラの映像から、Aさんの犯行であることが分かり、多治見警察署はAさんを迷惑防止条例違反(嫌がらせ行為)の容疑で逮捕しました。
Aさんは行為自体は認めていますが、「Vさんとは面識がなく、Vさんを狙ったわけではない。」と供述しています。
(フィクションです。)
嫌がらせ行為と迷惑防止条例
各都道府県で制定されている迷惑防止条例は、公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、もって住民生活の平穏を保持することを目的とするものです。
迷惑防止条例は、粗暴行為、ダフ屋行為、痴漢行為、ピンクビラ配布行為、押売行為、盗撮行為、のぞき行為、客引き行為などを禁止しています。
最近では、「嫌がらせ行為」も禁止行為として定めるところも増えています。
岐阜県も、迷惑防止条例第4条において次のように嫌がらせ行為を禁止しています。
何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為(ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成12年法律第81号。第5号において「法」という。)第2条第1項に規定するつきまとい等を除き、第1号から第4号まで及び第5号(電子メールの送信等に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全、住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を執ように、又は反復して行つてはならない。
(1) つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
(2) その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
(3) 面会その他の義務のないことを行うことを要求すること。
(4) 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
(5) 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等(法第2条第2項に規定する電子メールの送信等をいう。)をすること。
(6) 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
(7) その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
(8) その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。
ストーカー規制法の「つきまとい等」と似ていますが、ストーカー規制法における「つきまとい等」は、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し」て行われる行為であるのに対して、迷惑防止条例における「嫌がらせ行為」は、そのような恋愛感情等を充足する目的で行われることを要件としていない点が大きな違いです。
Aさんは、Vさんと面識はなく、行為によって被害を被る被害者がVさんだと知らずに行っていました。
Aさんが相手方をVさんだと認識せずに行っていたとしても、特定の者に対して対象行為を繰り返し行っていたため、Aさんの行為は迷惑防止条例違反に当たることを阻害するものではありません。
迷惑防止条例違反(嫌がらせ行為)事件においては、被害を被った被害者がいます。
被害者がいる事件では、被害者への被害弁償や示談の有無が最終的な処分結果に大きく影響することになります。
迷惑防止条例違反は、親告罪ではないため、被害者との間で示談が成立したからといって必ずしも不起訴となるわけではありません。
しかし、被害者の許しが得られている場合には、不起訴(起訴猶予)で事件を処理する可能性を高めることになりますので、やはり被害者対応が重要であることに変わりはないでしょう。
迷惑防止条例違反(嫌がらせ行為)事件を起こしてしまった場合には、早期に弁護士に相談・依頼し、被害者への被害弁償や示談成立に向けた活動を行うことが事件の早期解決には欠かせません。
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