覚せい剤取締法違反か麻薬取締法違反か

覚せい剤取締法違反か麻薬取締法違反か

覚せい剤取締法違反麻薬取締法違反かについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

Aさんは、SNS上で、薬物の密売人Bさんから、麻薬であるコカインを購入することを約束しました。
後日、Aさんは、Bさんと会い、代金を支払った上でパケットを受け取り、未開封のまま自宅に持ち帰りました。
しかし、Bさんは岐阜県飛騨警察署の警察官により内偵捜査を受けており、Bさんの捜査を通じて、Aさんも自宅の家宅捜索を受けました。
その際、Aさん宅からは薬物が見つかりましたが、Aさんが所持していたパケットには、麻薬であるコカインではなく、覚せい剤が入っていることが判明しました。
そして、Aさんはそのまま、岐阜県飛騨警察署に連行されていってしまいました。
Aさんはどうなってしまうのでしょうか。
刑事事件例はフィクションです。)

【Aさんには何罪が成立するのか】

覚せい剤取締法41条の2
覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者…は、10年以下の懲役に処する。

覚せい剤取締法41条の2は、「覚醒剤」を、みだりに、「所持」又は「譲り受けた」場合、覚せい剤取締法違反の罪が成立することを規定しています。

麻薬取締法66条
ジアセチルモルヒネ等以外の麻薬を、みだりに、製剤し、小分けし、譲り渡し、譲り受け、又は所持した者…は、7年以下の懲役に処する。

麻薬取締法66条は、「麻薬」を、みだりに、「譲り受け」、又は「所持」した場合、麻薬取締法違反の罪が成立することを規定しています。

刑事事件例では、Aさんは、あくまでもパケット内の薬物は麻薬(コカイン)であると認識していました。
すなわち、Aさんは、麻薬(コカイン)の譲受けと所持を認識していました。
しかし、客観的には、Aさんは、覚せい剤の譲受けと所持を行っています。

このように、被疑者の方が認識していた事実(麻薬の譲受けと所持)と、現実に発生した事実(覚せい剤の譲受けと所持)が異なる場合、何罪が成立したといえるのでしょうか。
以下、詳しく解説します。

【重い罪(覚せい剤取締法違反)が成立するか】

刑法38条2項
重い罪に当たるべき行為をしたのに、行為の時にその重い罪に当たることとなる事実を知らなかった者は、その重い罪によって処断することはできない。

刑法38条によれば、軽い犯罪事実(刑事事件例では麻薬の譲受けと所持)の認識で、重い犯罪事実(刑事事件例では覚せい剤の譲受けと所持)を起こしてしまった場合、重い犯罪(刑事事件例では覚せい剤取締法違反)は成立しません。

【軽い罪(麻薬取締法違反)が成立するか】

それでは、軽い犯罪(刑事事件例では麻薬の譲受けと所持)の認識で、重い犯罪(刑事事件例では覚せい剤の譲受けと所持)を犯してしまった場合、たとえ重い犯罪(刑事事件例では覚せい剤取締法違反)は成立しないとしても、軽い犯罪(刑事事件例では麻薬取締法違反)は成立するのでしょうか。
それとも、軽い犯罪(刑事事件例では麻薬取締法違反)は成立せずに無罪となるのでしょうか。

この点、結論としては、軽い犯罪(刑事事件例では麻薬取締法違反)が成立すると考えられています。
この理由は、以下のように説明されます。

覚せい剤の譲受け・所持(覚せい剤取締法違反)と、麻薬の譲受け・所持(麻薬取締法違反)は、犯罪行為態様も保護法益(善良な風俗)も共通しています。
そうすると、たとえ被疑者の方が認識していた事実(麻薬の譲受けと所持)と、現実に発生した事実(覚せい剤の譲受けと所持)が異なっていたとしても、2つの事実が実質的に重なり合う限度で、反対動機を形成できたといえます。
反対動機とは、平たくいえば、犯罪を止める動機のことです。

そして、2つの事実が実質的に重なり合う限度で、犯罪を止めることができたにも関わらず、あえて犯罪を犯したとして、犯罪の故意が認められると考えられています。
この2つの事実が実質的に重なり合う限度とは、軽い犯罪である麻薬取締法違反となります。

以上に理由により、先に述べた結論の通り、Aさんには、麻薬取締法違反(譲受け・所持)の罪が成立することになります。

このように、被疑者の方が認識していた事実と、現実に発生した事実が異なる場合であっても、犯罪が成立し、刑事罰が科されてしまう可能性があります。
刑事事件例のように何らかの犯罪を犯してしまった場合には、速やかに刑事弁護士を選任することをおすすめします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
覚せい剤取締法違反事件麻薬取締法違反事件を起こしてしまった場合は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所までご相談ください。

 

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