器物損壊罪で示談

【事件】

AさんはJR中津川駅周辺で、月極駐車場やコインパーキングを管理、運営しています。
Aさんの管理する駐車場に自転車を無断駐輪する駅の利用客が絶えず、これまで張り紙をするなどの対策をとってきましたが、一向に無断駐輪の自転車はなくなりません。
そこでAさんは、事前に、駐車場の目立つ部分に「駐車場内に無断駐輪している自転車を施錠します。施錠の解除には10,000円を徴収いたします。」という張り紙をして、実際に、駐車場内に無断駐輪している自転車のタイヤに通した鎖をフェンスに固定し自転車を動かせないように固定したのです。
その結果、それ以降は無断駐輪する自転車が激減しましたが、先日、岐阜県中津川警察署から、この件で話を聞きたいと電話がかかってきました。
Aさんが中津川警察署に出頭したところ、警察官から、Aさんの行為は器物損壊罪に当たると言われました。
自転車を壊したわけでもないのに、自分の行為が器物損壊罪に当たることに納得ができないAさんは、弁護士に相談することにしました。
(フィクションです)

【器物損壊罪~刑法第261条~】

他人の物を壊せば器物損壊罪となります。
器物損壊罪でいう「損壊」とは、「毀棄」と同義で、物質的に物そのものの形を変更させたり滅失させる場合だけでなく、広くその物の効用を害する一切の行為が損壊に当たります。
これまで効用滅失行為として器物損壊罪が適用された例としては
・看板を取り外して数百メートル先に放棄した事件
・他人の物置場所を勝手に変更した事件
・食器へ放尿し、食器を再び本来の目的に供することのできない状態にした事件
等があります。
今回の事件でAさんは、自転車その物を壊したわけではありませんが、自転車のタイヤに通した鎖をフェンスに固定していることによって、自転車の所有者が、鎖を破壊しなければ自転車を使用できない状態にしています。
この行為は、自由に運行の用に供するという自転車本来の効用を事実上失わせた行為であるから、器物損壊罪にいう損壊に当たると解されて、Aさんの行為が器物損壊罪に当たる可能性は十分に考えられます。

【親告罪】

親告罪とは、告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪です。
Aさんの行為に適用されるであろう器物損壊罪をはじめ、名誉毀損罪、侮辱罪、秘密漏示罪、過失傷害罪、私用文書等毀棄罪、略取誘拐罪や親族間の窃盗罪等がこれに当たります。
ちなみに平成29年の刑法改正までは、強制わいせつ罪や強姦罪(現在の強制性交等罪)等も親告罪とされていましたが、現在は非親告罪となっています。

親告罪には、告訴不可分の原則があります。
これは、共犯の1人または数人に対してした告訴または告訴の取消しは、他の共犯に対してもその効力を生じることです。
これを告訴の主観的不可分と言います。
また犯罪事実の一部に対してした告訴または告訴の取消しは、その全部について効力が生じます。
これを告訴の客観的不可分と言います。

【親告罪の刑事弁護活動】

示談」と聞くと、刑事事件をお金で解決するというマイナスのイメージを持たれる方が多いかもしれません。
ですが、実際の示談は、金銭の支払い以外にも様々な合意を結びます。
示談というのは当事者間において事件が解決したことを示すものであり、中身もそれに値する内容でなければならないためです。
中心となるのは謝罪被害弁償ですが、その他に接近禁止や転居などが合意されることもあります。

器物損壊罪は個人の財産を害する罪であり、その違法性は結局のところ個人に害を加えたことを根拠とします。
ですので、その個人である被害者が犯人を許しているのであれば、そこまで積極的に刑罰を科す必要がないと考えられます。
示談が処分の決定に大きな影響を及ぼす理由は、正にその点にあります。
当事者間で事件が解決されたことが確認されれば、いったん刑罰を科すのは考え直すべきだとして不起訴執行猶予になるというわけです。

以上のように、示談が刑事事件において持つ効果は非常に大きいと言えます。
それだけに、被害者にとって納得のいく解決がなされなければ、たとえ示談書や念書が交わされたとしてもその効力を最大限に発揮するのは難しいでしょう。
きちんと中身のある示談を締結するなら、やはりトラブル解決のプロである弁護士に依頼するのが得策です。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、示談の経験豊富な弁護士が、事件の円満な終了に向けて全力を尽くします。
器物損壊罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
事務所での法律相談料は初回無料です。

 

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