恐喝事件~恐喝と権利行使~

恐喝権利行使について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

Aさんは、知人のVさんに現金20万円を貸していましたが、返済期日になってもVさんからの返済がなく、数度にわたって利息も含めて22万円を返済するよう催促していました。
業を煮やしたAさんは、知人男性3名を連れてVさんを取り囲み、拳を突き出すなどのそぶりを見せつつ、「利息を含めて22万円払え。払わんのやったら、痛い目みるで。」などと脅しました。
怖くなったVさんは、その場でAさんに22万円を支払いました。
後日、Aさんは、岐阜県山県警察署恐喝の疑いで逮捕されました。
Aさんは、「いつまでたっても貸した金を返さんから、返すよう言っただけや。」と供述しています。
(フィクションです。)

恐喝罪

刑法第249条は、恐喝罪について規定しています。

第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

◇犯行の対象◇

恐喝罪の対象は、「人の財物」または「財産上不法の利益」です。
「人の財物」とは、他人の占有する財物です。
「財物」には、有体物でなくとも、物理的に管理可能なものは含まれます。
「占有」とは、人が物を実力的に支配する関係を意味します。
また、「財産上の利益」とは、財物以外の全ての財産上の利益をいいます。

◇行為◇

恐喝罪の成立には、相手方を恐喝し、その結果、相手方が畏怖し、相手方の財産的処分行為により財物の交付などを受ける、といった一連の因果関係が必要です。

①恐喝
恐喝は、脅迫または暴行により人を畏怖させることです。
この暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度に至らず、相手方を畏怖させるに足りるもので構いません。
相手方の反抗を抑圧するに足りる程度に達したときは、「強盗罪」となります。

②畏怖
恐喝行為により相手方が畏怖することが必要です。
畏怖させるに至らず、単に漠然たる不安の念を生じさせるに足る程度のものは「畏怖」には当たりません。

③財産的処分行為
相手方がその意思により、財物ないし財産上の利益を処分することです。
財産的処分行為と言うためには、財産を処分する事実と処分する意思が必要となります。

◇結果◇

相手方の財産的処分行為の結果として、行為者側に財物の占有が移転すること、あるいは、財産上不法の利益の取得または第三者にこれを取得させることが必要です。

◇故意◇

恐喝行為、畏怖、財産的処分行為、財物の交付などの認識・認容が必要です。
また、「不法領得の意思」も求められます。
「不法領得の意思」というのは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用しまたは処分する意思」のことです。
条文には記載されてはいませんが、判例上認められた要件です。

脅すなどして借金を取り立てた場合~恐喝と権利行使~

他人に金銭を貸し付け、その返済が滞った場合、その返済を求める催促は、大小なりとも相手方に圧迫感を感じさせるものです。
催促の方法が行き過ぎた場合、恐喝罪の構成要件に該当してしまうことがあります。
しかし、この場合、行為者は債権者として返済を求める権利を有しているため、これが違法性にどのように影響するのかが問題となります。
つまり、恐喝罪の構成要件に該当する場合であっても、それが違法ではない(=違法性が阻却される)のであれば、犯罪は成立しないことになります。

上のケースを検討していましょう。
Aさんは、Vさんに対し、Aを含めた男性4名でVさんを取り囲んだ上、拳を突き出すなどのそぶりを見せつつ、支払わないと暴行を加える旨の告知をしており、怖がったVさんは22万円をAさんに支払っているので、恐喝罪の構成要件に該当すると考えられます。
しかし、Aさんは、Vさんに対し、貸付金の返済を求める正当な権利を行使しており、恐喝行為は、その権利行使の手段として行われています。
ここで問題となるのは、権利行使の手段として用いられている恐喝行為が、社会的に許容される行為となるのか、という点です。
権利行使の手段としての行為が、社会的に許容されるかどうかは、①権利の範囲内か、②その方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えないか、という観点から検討され、①および②を満たすときに違法性が阻却されることになります。

権利行使の手段としての行為が違法性阻却となるためには、まず、権利行使の手段としての行為が、「権利の範囲内の行為」であることが必要です。
例えば、価格1円相当の松を盗んだ者に対し、損害賠償として45円を支払わないと告訴すると話して支払わせた事案では、権利の範囲外の要求をしたとして、違法性が認められています。(大判大3・4・29)

次に、権利行使の手段としての行為が違法性阻却となるためには、「社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えていない」ことが必要です。
判例では、十数名で押しかけ、約9時間にわたって社長を取り囲んで「腕ずくでも取る」などと威迫した案件では、社会的に相当な程度を超えているとして、違法性は阻却されませんでした。(最判昭27・5・13)

以上のことを考慮して、Aさんの行為について違法性が阻却されるのかを考えてみましょう。
まず、Aさんは、利息を含めて22万円の返済を求める権利を有していたのに対し、その範囲内で支払いを要求しているので、その行為は、権利の範囲内のものと言えるでしょう。
しかし、Aは、男性3名を連れてVさんを取り囲んだ上、拳を突き出すなどのそぶりを見せ、「払わんのやったら、痛い目みるぞ。」と言って脅しています。
これは、多数人での脅迫行為であり、社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えていると言え、違法性は阻却されないと考えられます。

返済の催促であっても、その程度によっては、恐喝罪が成立する可能性があります。

ご家族が恐喝事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件・少年事件を専門とする弁護士が、無料法律相談初回接見サービスをご提供いたします。
無料法律相談初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー