落書きで建造物損壊事件

落書きで建造物損壊事件

落書きで建造物損壊事件となるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

ある日、岐阜県岐阜市にあるビルの外壁に落書きされているのを、ビルの管理者が発見しました。
管理者からの被害届を受理した岐阜県中警察署は、捜査を開始しました。
後日、同警察署は、市内に住むAさんとBさんを建造物損壊の疑いで逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、すぐに対応してほしいと刑事事件に強い弁護士に連絡を入れました。
(フィクションです。)

落書きで建造物損壊罪が成立する場合

いたずらのつもりで、建物の壁などにスプレーなどで落書きをした場合、建造物損壊罪が成立し、刑事事件として取り扱われる可能性があります。

建造物損壊罪

建造物損壊罪は、他人の建造物または艦船を損壊した場合に成立する罪です。(刑法第260条前段)

◇客体◇
建造物損壊罪の客体は、他人の建造物または艦船です。
「建造物」とは、家屋その他これに類似する建築物のことで、屋根があり、壁や柱で支持されて土地に定着し、少なくともその内部に人が出入りすることができるものをいいます。(大判大正3・6・20)
敷居や鴨居のように建造物の一部であり、建造物を損壊しなければ取り外すことのできない物を損壊する場合は、建造物損壊罪が成立しますが、雨戸や板戸のように損壊することなく自由に取り外すことができる物を損壊する場合は、建造物損壊罪ではなく器物損壊罪が成立すると、過去の裁判例では理解されてきました。
加えて、最高裁は、建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは、当該物と建造物との接合の程度のほかに、当該物の建造物における機能上の重要性をも総合的に考慮して判断すべきとしています。(最決平19・3・20)

ビルの外壁は、ビルを損壊しないと取り外すことはできませんので、建造物に当たります。

「艦船」とは、軍艦または船舶のことをいいます。

◇行為◇
建造物損壊罪の行為である「損壊」とは、建造物または艦船を物理的に損壊することに限らず、その効用を害する一切の行為をいいます。
建造物等の使用を全く不能にするまでの必要はありません。
判例では、多数枚のビラを建造物に貼付した事件で建造物等損壊罪の成立が肯定されているもの(最決昭41・6・10)、公衆トイレへの落書きについて、「程度が酷く、外観ないし美観を著しく汚損し、原状回復に相当の困難を生じさせた」として建造物損壊罪の成立を肯定したもの(最決平18・1・17)があります。

このことから、ビルの外壁への落書き行為も、その程度や建造物の使用目的が考慮され、「損壊」に当たるとされる可能性はあります。

器物損壊罪との違い

損壊した対象が建造物または艦船ではない場合、建造物損壊罪ではなく器物損壊罪が成立する可能性があります。
器物損壊罪は、公用文書等、私用文書等、建造物等以外の他人の物を損壊または傷害した場合に成立する罪です。(刑法第261条)

◇客体◇
器物損壊罪の客体は、公用文書等、私用文書等、建造物等以外のすべての他人の物です。
動産、不動産を広く含みます。
客体の違いが、建造物損壊罪と器物損壊罪とを区別する特徴の1つです。

◇法定刑◇
器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料です。
一方、建造物損壊罪は、5年以下の懲役と、罰金や科料はありません。
これは、客体の重要性と人を死傷させる危険性を鑑み、器物損壊罪を加重した罪だからです。

◇非親告罪◇
器物損壊罪は、被害者などの告訴権者の告訴がなければ公訴を提起することができない親告罪です。
ですので、告訴権者が告訴をしない、あるいは告訴をしたけれどもそれを取り下げれば、起訴されることはありません。
他方、建造物損壊罪は非親告罪です。

いたずらでの落書きによっても、建造物損壊罪が成立する場合もあります。
建造物損壊事件でご家族が逮捕されてしまったのであれば、できるだけ早期に刑事事件に強い弁護士に相談・依頼し、身柄解放や寛大な処分に向けた活動を行うのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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