偽計業務妨害で逮捕

偽計業務妨害で逮捕

偽計業務妨害で逮捕される場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~ケース~

岐阜県豊下呂市の温泉地で宿泊予約の無断キャンセルが相次ぐ事件が起こりました。
温泉地にある5つの旅館やホテルに10名の宿泊を同時に予約したものの、予定日には姿を見せることなく、無断キャンセルとなりました。
このような無断キャンセルは、その後も数回続きました。
無断キャンセルにより大きな損害が出た旅館やホテル側は、岐阜県下呂警察署に被害届を出しました。
後日、県外に住む男性が、偽計業務妨害の容疑で逮捕されました。
(フィクションです)

飲食店や宿泊施設における無断キャンセルは少なくないようです。
しかし、その損害額は小さくありません。
上のケースにおいて、Aさんは偽計業務妨害罪に問われています。
今回は、偽計業務妨害罪について説明しましょう。

偽計業務妨害罪とは

偽計業務妨害罪は、刑法233条に以下のように規定されます。

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

本条の前段は、信用毀損罪について規定しており、偽計業務妨害罪は後段に規定されています。

偽計業務妨害罪は、
①虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、
②業務を妨害した
場合に成立します。

①妨害の手段:虚偽の風説の流布・偽計

「虚偽の風説を流布する」とは、客観的事実に反する事実を不特定または多数の者に伝播することです。
直接少数の者に伝播した場合であっても、その者を介して多数の者に伝播するおそれがあるときには、これに当たります。

また、「偽計」とは、人を欺罔・誘惑し、あるいは人の錯誤・不知を利用することをいいます。
秘密におこなわれても、公然とおこなわれても構いません。
「偽計」に当たるとされたものとしては、
・外面からはうかがい得ない程度に、漁場の海底に障害物を沈めておき、漁業者の漁網を破損させて漁獲を不能にした事例。(大判大3・12・3)
・デパートに販売のため陳列されている寝具に縫い針を差し込んだ事例。(大阪地判昭63・7・21)
・他人名義を使って商店に対して商品の配達を依頼する旨の虚偽の電話をかけ、店員に配達させた事例。(大阪高判昭39・10・5)
・電話通話料金課金に用いる度数計器の作動を不可能にする「マジックフォン」を電話機に設置等した事例。(最決昭59・4・27)
などがあります。

②業務の妨害

妨害される「業務」とは、職業その他社会生活上の地位に基づき継続して行う事務・事業をいいます。
「業務」であるためには、社会生活上の活動であることが必要となるので、個人的な活動や家庭生活上の活動は含まれません。

この「業務」に「公務」が含まれるのかが問題となりますが、これについて現在の判例は、権力的・支配的性質の公務は業務妨害罪の業務に含まれないが、非支配的公務、特に私企業的公務は含まれ、非支配的公務に対しては、公務執行妨害罪と業務妨害罪とが競合的に成立し得るとの立場をとっています。
権力的公務であっても、偽計に対しては自力での妨害排除機能が認められないため、偽計業務妨害罪の成立を認める裁判例は多くあります。
例えば、ネットの掲示板に無差別殺人を行うとの虚偽の予告を行い、警察を警戒出動させて本来の警ら業務等を妨害した事例は、偽計業務妨害罪の成立を認めています。(東京高判平21・3・12)

さて、上のケースでは、男性は複数の旅館やホテルに10名の団体客での宿泊予約を入れていますが、予約した宿泊日には姿を現しておらず、宿泊の準備をしていた旅館やホテルは大きな損害を被っています。
嘘の宿泊予約によって、宿泊施設の業務が妨害されています。
ですので、上の①と②の要件は満たしていると考えられます。

偽計業務妨害は、故意犯ですので、最初から虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の業務を妨害しよう(もしくは、妨害してもしまうかもしれないけど、まあいいか)と思って犯行におよんだ場合でなければ成立しません。
つまり、宿泊するつもりで幾つかの宿泊施設を予約し、キャンセルするのを忘れたと客観的な証拠から立証することが可能な場合には、故意がなく偽計業務妨害罪は成立しないことになります。
しかし、Aさんの場合、複数の宿泊施設に同時に宿泊予約を入れていることから、明らかに宿泊する意思がないと考えられる可能性が高いでしょう。

偽計業務妨害事件を起こした場合、逮捕される可能性はあります。

偽計業務妨害で逮捕された場合、逮捕から48時間以内に警察は被疑者を釈放するか、検察官に送致するかを決めます。
検察官に送致されると、検察官が被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放する、若しくは、裁判官に勾留請求を行います。
検察官からの勾留請求を受けた裁判官は、被疑者を勾留するか否かを判断します。
勾留となると、検察官が勾留請求した日から原則10日間、延長されると最大で20日間の身体拘束を余儀なくされることになります。
長期間の身体拘束は、被疑者にとって堪えがたい不利益となりますので、できる限り早期に釈放されることが望まれます。

もし、あなたの家族が偽計業務妨害で逮捕されてお困りであれば、今すぐ刑事事件に精通する弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、偽計業務妨害を含めた刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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