殺人未遂と殺意の認定について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県岐阜市で、乗用車がボンネットに男性を乗せたまま走行して振り落とし逃走するという事件が起きました。
男性は、乗用車を運転していた男と口論になり、男性が乗用車のボンネットに飛び乗ったところ、乗用車はそのまま走行し、ボンネットに乗っていた男性は振り落とされ、ひざなどに軽いけがを負いました。
岐阜県岐阜南警察署は、付近の防犯カメラの映像から運転していた男を特定し、男を殺人未遂の疑いで逮捕しました。
調べに対し、男は、「相手を殺すつもりはなかった。」と殺意を否定しています。
(フィクションです。)
殺人未遂罪について
「殺人未遂罪」というのは、「殺人」という犯罪の実行行為に着手したものの、犯罪を実現することができなかった場合に成立します。
まずは、「殺人罪」という罪についてですが、これは「人を殺した」ことにより成立するものです。
殺人罪の客体である「人」については、行為者を除いた自然人である必要があります。
実行行為である「殺す」とは、自然の死期以前に人の生命を断絶する行為のことをいい、手段や方法の如何を問いません。
そして、殺人罪は故意犯ですので、故意がなければ罪は成立しません。
殺人罪の故意、つまり、罪を犯す意思は、人を殺す意思(=殺意)です。
客体の認識については、単に、「人」であることの認識で足り、行為の認識については、殺人の手段となる行為により、死の結果が発生可能であることを認識していればよいとされています。
故意については、確定的なものだけでなく、未必的なものでも、条件付きのものでも構いません。
ですので、「もしかしたら、相手が死んでしまうかもしれない。」と思って実行行為を行った結果、相手が死んでしまった場合には、故意が認められ、殺人罪が成立することになります。
殺意をもって行為に及んだものの、相手の死という結果が発生しなかった場合には、殺人未遂罪が成立することになります。
刑法第43条は、未遂罪が成立する場合には、刑を減軽することができると定めています。
行為者が自分の意思で犯罪を中止した場合には、刑の減軽または免除がなされます。
殺意の認定について
先述のように、殺人罪あるいは殺人未遂罪の成立には、行為時に殺意があったことが認められなければなりません。
しかしながら、殺意とは、人の心の中のことですので、被疑者・被告人本人が認めているならばまだしも、認めていない場合にどのような基準で判断するかが問題となります。
被疑者・被告人が殺意を否認する場合、客観的な証拠関係等からその殺意を推認し、殺意が認定されることになります。
殺意の認定にあたっては、まず、行為態様の観点から検討されます。
具体的には、被害者の身体のどの部分に、どの程度の損傷を、どのような凶器を用いて、どのような方法で負わせたのか、ということを明らかにして、その事実から殺意を推認することができるかどうかが検討されます。
その他にも、犯行に及ぶ動機の有無、犯行に至る経緯の中での言動、犯行時の言動、犯行後の言動なども考慮し、そこからみられる事実から被疑者・被告人の殺意を推認させるものがあるかどうかも検討されます。
人をボンネットに乗せたまま車を走行させる行為については、走行速度、走行時間、運転態様、被害者の態勢等に照らして、被害者がボンネット上から転落して相当の衝撃を受けることや、運転していた車両や後続車両、対向車両にひかれる可能性があることを用意に予想することができたと認められる場合には、殺意が認定されることになるでしょう。
殺人未遂罪は、裁判員裁判の対象となりますので、殺人未遂罪で起訴された場合には、通常の刑事裁判ではなく、裁判員裁判で審理されることになります。
裁判員裁判では通常の刑事裁判とは異なる手続がとられますので、早期に刑事事件に強い弁護士に相談するのがよいでしょう。
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