侵入盗事件で再逮捕

再逮捕について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県揖斐郡揖斐川町の工事現場に侵入し、機材や資材を盗んだとして、岐阜県揖斐警察署は、県内に住むAさんを建造物侵入、窃盗の容疑で逮捕しました。
Aさんは他にも複数同じような手口で侵入盗を行ったと疑われており、警察からは別の侵入盗の件でも逮捕される可能性について示唆されています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、すぐに対応してくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)

ニュースで、「■■警察署は、●●容疑者を、▲▲の疑いで再逮捕しました。」と報道されているのを耳にすることがあります。
報道で使われる「再逮捕」という用語の意味と、法律上の「再逮捕」の意味は異なります。

「逮捕」というのは、被疑者に対して最初に行われる強制的な身柄拘束処分のことで、法に定められた短期間の留置という効果を伴うものです。
「逮捕」には、「通常逮捕」、「緊急逮捕」、そして「現行犯逮捕」の3種類があります。
「通常逮捕」の場合は、逮捕にあたっては逮捕状が必要となります。
「緊急逮捕」、「現行犯逮捕」の場合には令状は必要ありませんが、「緊急逮捕」では、逮捕後直ちに逮捕状を求める手続をとらなければなりません。
いずれの逮捕にせよ、逮捕後の手続は同じです。

警察は、被疑者を「逮捕」した場合、直ちに被疑者に犯罪事実の要旨、弁護人を選任することができる旨を告げた上で、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちに被疑者を釈放します。
一方、留置の必要があると思料するときは、被疑者の身体を拘束した時から48時間以内に、書類や証拠物とともに検察官に送致しなければなりません。

警察からの送致を受けた検察官は、被疑者に犯罪事実の要旨及び弁護人を選任することができる旨を告げた上で、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは直ちに被疑者を釈放します。
しかし、留置の必要があると思料するときは、被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に被疑者の勾留を請求しなければなりません。

検察官からの勾留の請求を受けた裁判官は、被疑者との面談を行った上で、勾留するか否かを判断します。
裁判官が勾留の理由がないと認めるときは、直ちに被疑者の釈放を命じます。

「勾留」というのは、被疑者・被告人の身柄を拘束する裁判とその執行のことをいいます。
「勾留」には、被疑者勾留と被告人勾留とがあり、逮捕後に続く勾留は前者を指します。
被疑者の勾留を請求するには、同一被疑事実について逮捕が先行していることが必要となります。
逮捕を経ないでいきなり勾留請求をすることはできませんし、Aという罪で逮捕したのに別のBという罪で勾留請求することもできません。

また、同一事実についての逮捕・勾留は、原則として1回のみ許されます。
これを「逮捕・勾留一回性の原則」と呼びます。
この原則によれば、同じ被疑事実について、時を異にして再び逮捕・勾留することは許されません。(「再逮捕・再勾留禁止の原則」)
ただし、重要な新証拠の発見、逃亡・罪証隠滅のおそれの新たな発生等の事情の変更により、再逮捕・再勾留の合理的な必要が生じ、逮捕・勾留の不当な蒸し返しにならない場合には、再逮捕・再勾留が例外的に許されると解されています。
そして、同一の犯罪事実について、同時に2個以上の逮捕・勾留をすることは許されません。(「一罪一逮捕一勾留の原則」)

このように、法律上は「再逮捕」は同一の被疑事実について再び逮捕することであり、それは原則禁止されています。
一方、報道で使われる「再逮捕」というのは、「前回逮捕された事件についての被疑事実とは異なる被疑事実について逮捕された」という意味で用いられています。
同じ罪名であっても、犯罪を行ったと疑われている時間や場所、客体などが異なる場合は、最初に逮捕されたAという被疑事実とは別のBという被疑事実について逮捕されたということになります。
この場合、Bという被疑事実について逮捕・勾留という手続を新たに踏むことになりますので、Aという被疑事実について逮捕・勾留されたことによって生じた身体拘束とは別に長期間(最大で逮捕から23日)の身体拘束となる可能性があります。
余罪が複数ある場合には、身体拘束期間の長期化、公判請求の可能性が高くなるため、起訴後の保釈により釈放を狙うことになるでしょう。

侵入盗事件でご家族が逮捕されてお困りの方は、刑事事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
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