傷害致死罪で逮捕
岐阜県各務原市に住むAさんは、夫のVさんが定職に就かず外を遊び歩いていることを日頃から疎ましく思っていました。
ある日、AさんはVさんに交際費名目でお金を要求されたことから、ついに我慢の限界に達してVさんに不満をぶつけました。
それがきっかけでVさんから暴力を振るわれたため、Aさんは強い怒りを覚えてVさんを自宅の階段から突き落としました。
後にこの行為が原因でVさんが死亡したことが発覚し、Aさんは傷害致死罪の疑いで岐阜県各務原警察署に逮捕されました。
Aさんと接見した弁護士は、弁護活動をどう進めていくか検討することにしました。
(フィクションです。)
【傷害致死罪について】
傷害致死罪は、他人に対して傷害を負わせ、それが原因でその他人が死亡した場合に成立する可能性のある罪です。
人を死亡させる点では殺人罪と共通ですが、人を殺害する意思(殺意)がない場合は傷害致死罪に当たります。
傷害致死罪の成立を肯定するには、①傷害の存在、②死亡の発生、③①と②との因果関係が必要です。
つまり、傷害とは無関係に死亡が生じた場合には、死亡の事実まで責任を負わせられないとして傷害罪が成立するにとどまることになります。
ただし、場合によっては、死亡の原因が傷害による受傷以外であっても傷害致死罪に当たることがあります。
裁判例には、激しい暴行を受け暴行の現場から逃走した被害者が、高速道路に進入して事故により死亡した事件で、傷害致死罪の成立を肯定したものがあります。
この事件では、暴行が直接の死因ではないものの、激しい暴行と高速道路への侵入に一定以上の結びつきがあるとして因果関係の存在が肯定されました。
傷害致死罪の法定刑は、3年以上の有期懲役(上限20年)となっています。
関連する罪の法定刑を見てみると、傷害罪が15年以下の懲役または50万円以下の罰金、殺人罪が死刑または無期もしくは5年以上の有期懲役です。
このように、法定刑に大きな違いが見られるため、事案の内容次第では後述のように弁護活動を尽くす必要があるでしょう。
【傷害致死事件の弁護活動】
先ほど触れたように、傷害致死罪は殺人罪と傷害罪のそれぞれに共通点を見出すことができます。
こうした複数の罪の成否が問題となる事件では、より軽い罪の成立を目指して弁護活動を行うべきです。
ただ、そうした主張を行ううえで、深い法律の知識が必要となる点は否定しがたいところです。
法律の専門家である弁護士への依頼は不可欠と言っても過言ではないでしょう。
具体的な弁護活動について見ていきます。
まず、想定されるケースとしては、殺意がなかったにもかかわらず殺人罪を疑われるというものが考えられます。
殺意というのは人の内面であるため、究極的には本人以外誰も知ることができません。
そこで、裁判においては、あらゆる客観的な事情から殺意の有無が推認されることになります。
たとえば、刃渡りの長い包丁で心臓付近を何度も突いた形跡があれば、殺意が存在したと評価されることが予想されます。
ですが、実際の事件では、客観的な事情を考慮しても殺意があったか微妙なケースがあります。
そうしたケースでは、弁護活動により傷害致死罪が成立するにとどまると主張することが大切になります。
また別のケースとして、一見傷害致死罪のように思えるものの、傷害行為と死亡との間に因果関係があったか疑わしいというものが考えられます。
たとえば、被害者が突発的な死亡を引き起こす持病を持っており、偶然にも傷害と時を同じくしてその症状が出た可能性がある場合です。
この場合には、因果関係の存在を否定して傷害罪が成立するに過ぎないと主張することも考えられるでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、数多くの刑事事件を経験している弁護士が、よりよい弁護活動を目指して日々奔走しています。
ご家族などが傷害致死罪の疑いで逮捕されたら、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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