ストーカー規制法違反事件で示談を締結した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県北方警察署は、県内に住むAさんをストーカー規制法違反の疑いで逮捕しました。
Aさんは、元交際相手の女性Vさんに復縁を迫る電話やメールを執拗に送り、住居や職場で待ち伏せするなどしており、怖くなったVさんは岐阜県北方警察署に相談しました。
警察署は、Aさんに対し、Vさんに近づかないよう警告を行いましたが、Aさんはその後も同様の行為を繰り返していたため、Vさんは両親とともに再度警察に被害申告をしに行きました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、Vさんに謝罪したいと警察に申出ましたが、「今のところ、Aさんの家族と連絡をとりたくない。」と断られました。
Aさんの家族は、今後どのように対処すべきか分からず、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
ストーカー規制法違反事件
Aさんは、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下、「ストーカー規制法」といいます。)で禁止されている「ストーカー行為」を行ったとして、ストーカー規制法違反で逮捕されました。
ストーカー規制法で禁止される「ストーカー行為」というのは、「同一の者に対し、つきまとい等に掲げる行為を反復してすること」とされています。(ストーカー規制法第2条3項)
ここでいう「つきまとい等」とは、「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。」と規定されています。(ストーカー規制法第2条1項)
その「つきまとい等」の対象行為には、つきまといや待ち伏せ、拒まれたにもかかわらずしつこく電話やメールを送る行為が含まれます。
「つきまとい等」は、恋愛感情等を満たす目的で行われる必要があり、単なる嫌がらせ目的で行われた場合には、ストーカー規制法違反には当たりません。
同じ人に「つきまとい等」を繰り返して行えば、「ストーカー行為」となり、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。
通常、被害者が警察に相談し、被害者からの申し出がある場合で、相手方によるつきまとい等があり、かつ、今後も繰り返し行われる可能性があると認めるときには、警察は相手方に対してストーカー行為をやめるよう「警告」を行います。
また、公安委員会は、つきまとい等をして、相手方に身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせる行為があり、かつ、更に反復してつきまとい等を行うおそれがあると認めるときには、更に反復してつきまとい等をしてはならないと命令することができます。
この禁止命令に反してストーカー行為をした場合には、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科される可能性があります。
Aさんのように、いきなり逮捕されるのではなく、最初は警察からの警告にとどまることが多く、警告に反してつきまとい等を繰り返した場合にストーカー規制法違反で逮捕されることが多くなっています。
ストーカー規制法違反事件における示談の効果
ストーカー規制法違反事件では、加害者のストーカー行為により身体的・精神的被害を被った相手方(=被害者)が存在します。
被害者のいる事件において示談が成立しているかどうかは、検察官による終局処分や量刑に大きく影響し得る事情のひとつとなります。
被疑者を起訴するか否かを判断するのは、検察官です。
検察官は、捜査の結果に基づいて、その事件を起訴するか否かを決めます。
検察官は、被疑者が罪を犯したとの疑いがない、若しくは疑いが十分ではないと判断するときは、起訴しない決定(不起訴処分)をします。
また、被疑者が罪を犯したとの疑いが十分であっても、起訴しない場合があります。
それは、犯人の性格、年齢や境遇、犯罪の軽重や情状、犯罪後の情況などの諸事情を考慮して、起訴する必要がないと考える場合(起訴猶予)です。
被害者との示談成立は、犯罪後の情況として考慮されます。
ストーカー規制法違反(ストーカー行為)は、2016年の改正前は、親告罪でしたが、改正後は非親告罪となりました。
そのため、検察官は、被害者の告訴がなくても事件を起訴することができます。
しかし、被害者との間で示談が成立している場合には、あえて起訴することはせず、不起訴で事件を終了させます。
そのため、ストーカー規制法違反事件において、事件を穏便に解決するためには被害者との示談交渉が重要となります。
しかしながら、加害者側が直接被害者と交渉することはあまり推奨されません。
というのも、被害者が加害者に対して嫌悪感や恐怖心を抱いているため、直接加害者やその家族と連絡することを拒む傾向にあるからです。
また、加害者側が直接被害者に連絡をとることによって、加害者が被害者に自分に有利なように働きかけている、と捜査機関に判断されてしまう可能性は大いにあります。
そのような事情からも、示談交渉は弁護士を介して行うのが一般的となっています。
弁護士限りであれば連絡先を教えてもいいとおっしゃる被害者も多く、当人同士にありがちな、やったやっていないの水掛け論になることもなく冷静な話し合いをもつことができます。
また、合意内容をきちんと書面にし、後から争いが蒸し返すことのないようにすることも重要です。
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