職務質問から刑事事件に発展①

職務質問から刑事事件に発展①

職務質問から刑事事件に発展したケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

岐阜県多治見市に住むAさんは、岐阜県多治見市内の歩道において、Vさんが所有していたバッグが忘れられているのを見つけ、バッグを無断で持ち去りました。
後日、Aさんが深夜、Vさんのバッグを持ち去ったのと同じ歩道付近を歩いていると、周辺をパトロールしていた岐阜県多治見警察署の警察官に声を掛けられました。
Aさんは、警察官から「この付近で発生した遺失物横領事件の犯人に似ている」と言われました。
Aさんは「職務質問は任意でしょう、任意なら応じません」と言いましたが、警察官も食い下がり、2時間にわたり職務質問を受けました。
その結果、Aさんは歩道に置いてあったバッグを持ち去った遺失物横領事件の犯人であることを認めました。
Aさんは、遺失物横領罪の容疑者として話を聞かれることとなったのですが、自分の受けた職務質問が違法なものなのではないかと疑問に感じ、弁護士に相談しようと考えています。
(2020年12月3日に岐阜新聞に掲載された記事を参考に作成したフィクションです。)

【警察官職務執行法と職務質問】

この記事を読んでいる方の中にも、警察官から職務質問を受けたことがあるという方がいらっしゃるかもしれません。
今回の事例のAさんは、職務質問をきっかけに刑事事件の容疑者として捜査されるに至っています。

このいわゆる職務質問については、警察官職務執行法という法律に定められています。
警察官職務執行法2条は、職務質問について規定していますが、詳しく確認してみましょう。

警察官職務執行法2条1項
警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者を停止させて質問することができる。

警察官職務執行法2条1項は、警察官が一定の場合に職務質問ができることを規定しています。

警察官職務執行法2条2項
その場で前項の質問をすることが本人の対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問するため、その者に附近の警察署、派出所又は駐在所に同行することを求めることができる。

そして、続く警察官職務執行法2条2項は、職務質問の際、警察官が一定の場合に任意同行を求めることができることを規定しています。

警察官職務執行法2条3項
前2条に規定する者は、刑事訴訟に関する法律の規定によらない限り、身体を拘束され、又はその意に反して警察署、派出所若しくは駐在所に連行され、若しくは答弁を強要されることはない。

さらに、警察官職務執行法2条3項では、職務質問が任意に行われることを規定しています。

【職務質問の「停止」とは】

警察の活動は大きく分けて行政警察活動、司法警察活動の2つに分類されます。

行政警察活動とは、犯罪の予防・鎮圧を目的とする活動をいいます。
司法警察活動とは、特定の犯罪の発生を前提とする活動をいいます。

今回問題となっている職務質問は、犯罪の予防・鎮圧を目的として開始され、その後特定の犯罪の嫌疑が生じた後もその嫌疑について続けられることがあります。
この場合、当初の職務質問は行政警察活動、嫌疑が生じた後の職務質問は司法警察活動に分類されます。

ここで、刑事訴訟法197条は、「捜査については、その目的を達するために必要な取調べをすることができる。但し、強制の処分は、この法律に特別の定のある場合でなければ、これをすることができない。」(任意捜査の原則、捜査比例の原則)と規定しています。

この「捜査」(刑事訴訟法197条)は、「犯罪があると思料するとき」になされます(刑事訴訟法189条2項参照)。
すなわち、「捜査」(刑事訴訟法197条)は、特定の犯罪の発生を前提としてなされる司法警察活動であるといえます。

このとき、司法警察活動としての職務質問は、「捜査」(刑事訴訟法197条)には該当し、刑事訴訟法197条の規制を受けます。

以上を前提に警察官職務執行法2条に定められている職務質問を見てみると、職務質問では一定の者を「停止させて質問することができる」とされてますが、司法警察活動としての職務質問の「停止」とは、任意の停止を意味すると考えられます(刑事訴訟法197条の任意捜査の原則より)。
また、司法警察活動としての職務質問の「停止」は、その必要があるときに、相当と認められる限度でなされなければならないと考えられます(刑事訴訟法197条の捜査比例の原則より)。

ただし、任意といっても、犯罪の予防・鎮圧という目的を達成するため、純粋に任意という意味ではなく、ある程度の有形力の行使や説得行為も許されると考えられます。

職務質問に際に警察官により暴力を振るわれるなど、職務質問の任意性が疑われるときには、刑事事件に強い弁護士に相談し、警察官の職務質問の違法性を争うこともできると考えられます。
まずは具体的な状況と照らし合わせて検討することが必要ですから、職務質問について疑問がある場合には、早めに弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を中心に取り扱う法律事務所です。
職務質問をきっかけに刑事事件の容疑者となってしまった、刑事事件の手続や見通しが不安だという方は、お気軽にご相談ください。

 

無料相談ご予約・お問い合わせ

 

ページの上部へ戻る

トップへ戻る

電話番号リンク 問い合わせバナー