大麻の共同所持で逮捕され不起訴を狙う場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
会社員のAさんは、岐阜県下呂市のマンションで交際相手のBさんと同棲していました。
ある日、岐阜県下呂警察署が自宅に訪れ、Bさんに対する大麻所持の件で家宅捜索が行われました。
部屋から大麻が見つかったため、Aさんも大麻の共同所持の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、Bさんが以前外出先で大麻を使用していたことは知っていますが、大麻を家に置いていたことは知りませんでした。
Aさんの逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)
捜査機関が、薬物乱用者や薬物密売人の住居を家宅捜索し、薬物が発見した場合、そこに同居している配偶者や交際相手なども発見した薬物についての共同所持の疑いで逮捕されるケースは少なくありません。
大麻の所持について
まずは、大麻所持罪とはどのような罪であるのか、について説明します。
大麻取締法は、「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。」(同法第3条1項)とし、「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。」(同法第24条の2第1項)とし、「営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。」(同条第2項)の罰則が設けられています。
罰則の対象となる大麻の「所持」とは、「人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為」のことをいい、所有権又は処分権を有していることまでも必要とされません。
所持の形態は、自ら保管・携帯している場合だけでなく、他人に保管させる場合、他人に依頼されて保管する場合、運搬する場合、隠匿する場合など、社会通念上実力支配関係にあると認められるすべての場合が「所持」に当たるとされています。
大麻所持罪は、故意犯ですので、「大麻を所持する」ことの認識・認容がなければ大麻所持罪は成立しません。
「大麻」についての認識は、その物が依存性のある薬理作用をもつ有害な薬物であることを未必的にであれ認識していればよいとされています。
つまり、ある者を「これは大麻である。」と確信している場合のみならず、「これは何らかの規制薬物かもしれない。」と思っていた場合であっても、大麻であることの認識・認容はあったと判断されます。
覚せい剤の所持罪についてではありますが、所持の故意について、
「覚せい剤取締法14条にいわゆる所持とは、人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為をいう(昭和30年(あ)2311号同年12月21日大法廷判決、集9巻14号2946頁)というのは必ずしも覚せい剤を物理的に把持することは必要でなく、その存在を認識してこれを管理しうる状態にあるをもつて足りると解すべきである。」(最判昭31・5・25)
との判例があります。
つまり、薬物の所持とは、①その存在を認識していること、②管理し処分し得る状態にあること、が同時に満たされる場合に成り立つとされています。
生活の場を共有している夫婦やカップルの場合であっても、2人ともが薬物の存在を認識しており、かつ、2人ともが薬物を管理し処分し得る状態にあったことが認められる場合にのみ共同所持が成立するのであって、1人は薬物の存在を認識していなかった、あるいは、認識していても薬物を管理し処分し得る状態にはなかったであれば、その者については薬物の所持は成立しないことになります。
Aさんのように、大麻が自宅に置いてあったこと自体を知らなかった場合には、大麻の共同所持を争い、取調官の誘導に乗り自己に不利な供述がとられないように留意しながら取調べに対応する必要があります。
そのため、取調べでどのように対応すべきかについて、弁護士から適切なアドバイスを受けることは重要です。
大麻の共同所持が疑われており、犯罪事実を否定する場合には、できる限り早期に弁護士に相談し、不起訴を目指すのがよいでしょう。
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