贈収賄事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県羽島郡笠松町の係長のAさんは、道路工事を巡り、業者側に便宜を図った見返りに現金100万円を受け取ったとして、岐阜県羽島警察署に収賄の疑いで逮捕されました。
Aさんの妻は、すぐに刑事事件に強い弁護士に接見を依頼しました。
(フィクションです)
刑法は、賄賂の罪として、「単純収賄罪」、「受託収賄罪」、「事前収賄罪」、「第三者供賄罪」、「加重収賄罪」、「事後収賄罪」、「あっせん収賄罪」の7つの罪を規定しています。
賄賂の罪の保護法益については、様々な学説がありますが、判例は、「公務員の職務の公正とこれに対する社会一般の信頼」であるとする立場をとっています。(最大判平7・2・22)
賄賂の罪は、公務員が職務に関する対価として不法な利益を収受等することを内容とする犯罪です。
「賄賂」とは、職務に関する行為の対価としての不法な利益をいいます。
ここでいう「職務に関する」とは、職務行為そのものに対する場合の他にも、職務と密接に関連する行為に対する場合も含みます。
「職務」は、公務員がその地位にともない公務として取り扱うべき一切の執務をいい、公務員の一般的職務権限に属するものであれば足り、具体的に担当している職務であることまで必要とされません。
(1)単純収賄罪
刑法第197条 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
◇主体◇
本罪の主体は、「公務員」です。
「公務員」は、「国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう」と定義されています。(刑法第7条)
◇行為◇
本罪の実行行為は、「賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束を」することです。
「収受」とは、賄賂を取得することをいいます。
収受の時期は、職務の執行の前後を問いません。
「要求」とは、賄賂の供与を要求することをいいます。
相手方がこれに応じなくても、要求を行った時点で既遂となります。
「約束」とは、贈賄者と収賄者との間で、将来賄賂を授受すべきことについて合意することをいいます。
約束がなされれば既遂となり、要求を撤回したり、約束を解除しても犯罪は成立することとなります。
(2)受託収賄罪
刑法第197条 (1項前段略)この場合において、請託を受けたときは、七年以下の懲役に処する。
本罪は請託を受けたことによって単純収賄よりも重く罰するものです。
「請託」とは、公務員に対し、職務に関し一定の職務行為を依頼することをいいます。
その依頼が不正な職務行為の依頼であるか、正当な依頼であるかを問いません。
請託を「受けた」というのは、職務に関する事項につき依頼を受けて承諾することです。
(3)事前収賄罪
刑法第197条
2 公務員になろうとする者が、その担当すべき職務に関し、請託を受けて、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、公務員となった場合において、五年以下の懲役に処する。
◇主体◇
本罪の主体は、「公務員になろうとする者」であり、本罪は、公務員になった場合に担当すべき職務に関して、請託を受けて、賄賂を収受等する行為を処罰するものです。
公務員にならなかった場合には、処罰されません。
(4)第3者供賄罪
第197条の2 公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
本罪は、第三者を介して間接的に職務に関連して利益を得る脱法的行為を取り締まる規定です。
ここでいう「第三者」とは、当該公務員以外の者をいい、本罪を教唆・幇助した者を含みます。
「供与」とは、利益を受け取らせることをいいます。
(5)加重収賄罪
第197条の3 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期懲役に処する。
2 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。
本条は、収賄行為とともに、それに関連して職務違反の行為が行われたことを理由に、これを重く処罰するものです。
◇主体◇
「公務員」及び「公務員になろうとする者」が、本罪の主体となります。
◇行為◇
収賄行為の後に職務違反の行為が行われる場合は、単純収賄罪・受託収賄罪・事前収賄罪・第三者供賄罪を犯し、よって不正な行為をし、または相当な行為をしないこと、職務違反の行為の後に収賄行為が行われる場合には、職務上不正な行為をし、または相当な行為をしなかったことに関し、賄賂を収受・要求・約束し、または第三者にこれを供与させ、その供与を要求・約束することが、本罪の実行行為となります。
「不正な行為をし、又は相当の行為をしないこと」というのは、職務に反する一切の行為、不作為をいうと解されます。(大判大6・10・23)
(6)事後収賄罪
刑法第197条の3
3 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
◇主体◇
過去に「公務員であった者」です。
◇行為◇
在職中、請託を受けて職務違反行為をし、退職後これに関して賄賂の収受・要求・約束をすることです。
(7)あっせん収賄罪
第197条の4 公務員が請託を受け、他の公務員に職務上不正な行為をさせるように、又は相当の行為をさせないようにあっせんをすること又はしたことの報酬として、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の懲役に処する。
「あっせん」とは、一定の時効について両当事者の間に入って仲介することをいいます。
他の公務員の職務について違法な行為の働きかけがあった場合だけでなく、他の公務員の裁量判断に不当な影響を及ぼした場合も本罪は成立します。
本罪は、公務員が自己の職務行為の対価として賄賂を収受するものではなく、あっせんの「報酬として賄賂」を収受する等の行為を処罰するものです。
もし、あなたやご家族に収賄の疑いがかけられているのであれば、今すぐ刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
刑事事件に強い弁護士から、取調べで不利な供述が取られないよう、取調べ対応についての適切なアドバイスを受けることが重要です。
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