業務上横領罪と窃盗罪の違いとは?

業務上横領罪と窃盗罪の違いとは?

業務上横領罪窃盗罪の違いについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

【刑事事件例】

岐阜県岐阜市茜部菱野にある大手スーパーVの店員Aさんは、店員歴30年というキャリアを持ち、役職はないものの、商品の販売をするかたわら商品の保管管理を任されていました。
ある日、商品の仕分け作業中、Aさんはつい出来心でその商品を横領しました。
Aさんは数日後Vの店長Xさんに呼び出され、「君が商品を横領した様子が防犯カメラに写っていた。近日中に岐阜県南警察署に被害届を出しに行く。」と言われました。
Aさんは、大変なことをしてしまったと思い、刑事事件を取り扱っている弁護士に、今後について相談に行きました。
そこでAさんは、自分の行為が該当し得る犯罪として、業務上横領罪窃盗罪を挙げられ、そのうち業務上横領罪が成立するであろうという話をされました。
(フィクションです)

【業務上横領罪】

業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する。(刑法第253条)

①意義
業務上横領罪は、業務上自己が占有している他人の物を横領することによって成立する犯罪です。

②主体
業務上横領罪の主体は業務上の占有者であり、業務とは人が社会生活上の地位に基づき継続的に従事する事務(仕事)のことで、経理担当者や集金人の金銭の保管占有、倉庫営業者の荷物の保管占有などがあります。
業務上の占有とは、自己の生活維持のための本来の仕事である必要はなく、業務に付随する他人の物の保管・占有のことです。

③性格として
業務上横領罪では、業務上ではない横領罪に比べて背任性が強いので、単純な横領罪に刑を加重しています。
さらに、業務上横領罪の成立には委託信任関係を必要としており、業務者・占有者という二重の身分が必要である身分犯です。

また、その身分がない共犯も共犯者となりますが、この場合の共犯者には単純横領罪を適用します。

【窃盗罪】

他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役に処する。(刑法第235条)

①意義
窃盗罪は、他人の占有する財物を不法に領得する意思を持って占有者の意思によらないで、摂取することで成立する財産犯です。

②客体
窃盗罪の客体は他人の占有する財物で、占有とは支配意思をもって財物を事実上自己の支配下におく状態といいます。
また財物とは物理的に管理の可能なものとしており、無体物(電気など)でも特定の人が管理している限りは財物とみなし、金銭的交換価値のみならず、主観的使用価値のあるものも保護に値します。
例えば会社の機密資料や、死亡した親族の写真などです。

そして、禁制品(所持が禁止されているもの)であっても窃盗罪の客体である「財物」とみなされます。

③行為
窃取すること、他人の占有する財物をその占有者の意思によらないで奪取することで、すなわち、他人の占有を侵害し、事実上自己または第三者の占有に移すことが窃盗罪の実行行為に当たる行為です。
着手時期は他人の占有を侵害する行為の開始や、それに密接に関連する行為を開始した時点とされています。
既遂時期は目的物を自己または第三者の支配に移した時点です。

不法領得の意志とは、権利者を排除して他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従って、これを利用または処分する意思のことです。
窃盗罪が成立するためには不法領得の意志が必要で、単に捨てる、若しくは隠すという意思で占有権を移した場合には窃盗罪は成立しません。

【刑事事件例について】

窃盗罪横領罪の違いについては、客体が自己の占有か他人の占有であるかによります。
事件例の場合は、商品の保管を委託された者(Aさん)がその処理過程において管理する商品を領得した場合、それが窃盗罪になるか横領罪になるかについては、その商品の占有が権が委託者と受任者のいずれかによって判断されます。
占有とは上記のとおり、支配意思をもって財物を事実上自己の支配下におく状態をいうものですが、Aさんは商品を自己の支配下に置き保管管理しているのですから所有権は受任者のAさんにあると思われます。

また、商品の保管管理が業務にあたるかどうかについてはAさんはVさんから商品の保管管理も任されていることから、商品の保管管理は業務上の占有となりAさんには業務上横領罪が成立するのです。

【Aさんに対する弁護活動】

Aさんは商品を実際に横領しており、またその様子も防犯カメラに写っていました。
よって、弁護士を通じてVさんへの被害弁償と示談交渉を行うのが良いと思われます。
Vさんは被害届を出すと言っていますが、その前にVさんに対して被害を弁償して示談を成立することができれば、被害届をださないかもしれません。
そうなれば警察が介入することなく、事件を解決することができます。

また、被害届をだされたとしても、被害金額が大きくなく、前科が無ければ被害の弁償と示談の成立により起訴猶予による不起訴処分を目指すことができます。
ですので、一刻も早く刑事事件に強い弁護士に事件解決を依頼するのが良いでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、年間多数の示談交渉を行ってきた刑事事件専門の法律事務所です。
ご自身やご家族が業務上横領罪に問われてお困りの方、示談交渉をご希望の方は弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。

 

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