【事例】
Aさんは、インターネットの動画投稿サイトにオリジナル動画投稿し、再生回数に応じて支払われる広告収入で生計を立てています。
先日Aさんは、覚せい剤に似せた白色粉末を入れた袋を岐阜県羽島警察署管轄の交番前に立っている警察官の前に落とし、そこから逃走するというドッキリ動画を撮影し、その動画をサイトに投稿しました。
再生回数は、これまでの3倍以上に増えましたが、悪質な悪戯だと事態を重く見た岐阜羽島警察署が捜査を開始し、Aさんは偽計業務妨害罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
【偽計業務妨害罪~刑法第233条~】
偽計を用いて人の業務を妨害した場合には,偽計業務妨害罪が成立します。
「偽計」とは,人をだましたり,あるいは人の無知・錯誤を利用したりなどすることをいい,例えば虚偽の通報をすることが「偽計」に当たります。
Aさんの行為は,覚せい剤に見せかけた白色粉末白入りの袋を落とし,警察官をだまそうとしているため,「偽計」を用いているといえるでしょう。
では,警察官の捜査やパトロールなどといった公務は,偽計業務妨害罪のいう「業務」に当たるでしょうか。
公務への妨害行為については公務執行妨害罪が規定されており,公務執行妨害罪は公務への「偽計」を禁止していないことから問題になります。
判例は,強制力を排除する権力的公務か否かを基準としており,これに当たらない場合に公務が「業務」に当たるとしています。
そして,虚偽通報のような妨害行為に対しては警察官が強制力を行使しうる段階にないとして,公務が「業務」に含まれると判断しました。
そうすると,Aさんの行為は「業務」に対して「偽計」を用いたといえるでしょう。
なお,偽計業務妨害罪の条文には「妨害した」とありますが,これは現実に妨害が発生している必要はなく,業務を妨害しうるような行為がなされていれば「妨害した」といえます。
このような点を考慮すれば、Aさんには偽計業務妨害罪が成立する可能性が高いです。
ちなみに偽計業務妨害罪の法定刑は,3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
偽計業務妨害罪等の刑事事件で逮捕された場合には,刑事事件に強い弁護士に早めに初回接見を依頼することをお勧めします。
【不起訴を目指して】
偽計業務妨害罪の疑いで捜査が開始されると、その後警察署および検察庁での取調べなどを経て検察官が事件の取り扱いを決めることになります。
具体的には、①起訴して正式裁判を行う、②略式手続で罰金の支払いにより事件を終了する、③不起訴として事件を終了する、のいずれかです。
ただし、②は正式裁判より簡易な手続で罰金刑が科されるに過ぎず、その本質は①の起訴とそう変わりません。
また、被疑者が逮捕・勾留により身体拘束を受けている事件では、一度処分を保留して釈放することもあります。
上記①から③のうち、最もよいのは当然ながら③不起訴です。
もし不起訴となれば、裁判が行われない、刑罰が科されない、前科が残らない、といったメリットがあるからです。
不起訴の理由は様々ですが、罪を犯したという事実が争いにくいのであれば、狙うべきは起訴猶予による不起訴です。
起訴猶予とは、被害者の態度、犯罪の内容、犯罪後の対応などの様々な事情を考慮し、敢えて起訴を見送るというものです。
罪を犯したことを認めたうえで不起訴を目指せるため、被疑者としては無理やり無罪を狙わなくてもよい点で有益と言うことができます。
実務上起訴猶予による不起訴は少なからず見られますが、その決定打となる事情は被害者との示談の締結だと考えられます。
示談というのは、謝罪や被害弁償などを行うことで、当事者間で事件が解決したことを示すものです。
これにより、捜査機関としては積極的に刑罰を科す必要性が薄れ、結果的に不起訴というかたちで終わるのでしょう。
この不起訴を狙うのであれば、きちんと示談できるようにぜひ弁護士に事件を依頼してください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、刑事事件のプロである弁護士が、不起訴にしてほしいという依頼者様の希望に真摯に耳を傾けます。
偽計業務妨害罪を疑われたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
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