時効について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
平成17年9月1日の午前0時過ぎに、岐阜県多治見市の駅から帰宅していた女性が、何者かに背後から襲われ性的暴行が加えられるという事件が起きました。
被害女性は、事件後すぐに警察に通報し、岐阜県多治見警察署は強姦致傷事件として捜査を開始しました。
令和2年、別件で被疑者として取調べを受けていたAさんのDNAが、強姦事件で採取されたDNAと一致したことから、時効成立直前の令和2年8月1日に岐阜県多治見警察署は、Aさんを強姦致傷の容疑で逮捕しました。
取調べに対して、Aさんは「覚えていない。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAさんの母親は、事件の詳細について分からず困っており、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)
刑事手続における時効とは
「公訴」とは、公の立場でなされる刑事手続上の訴え(刑事訴追)のことです。
刑事訴訟法は、国家機関である検察官のみが公訴を提起することとしており、私人による起訴を認めていません。
公訴の提起は、検察官が裁判所に対して特定の刑事事件について審判を求める意思表示を内容とした訴訟行為です。
検察官は、起訴状を裁判所に提出することで、公訴を提起します。
検察官による公訴の提起がなければ、裁判所は事件の審理をすることができません。
そして、この公訴を提起する権限には時間的制約があり、犯罪が終ってから一定期間が経過すると、公訴の提起をすることができません。
この制度を「公訴時効」といいます。
公訴時効が設けられた理由については、時間の経過により刑罰を加える必要性が減少・消滅したことや、証拠の散逸による誤判の危険を防止することにあると言われています。
公訴時効について、平成22年の法改正により、殺人等の凶悪・重大犯罪の公訴時効について、人を死亡させた罪のうち、死刑に当たるものについては、時の経過により一律に公訴権を消滅させることは適当でないとして、公訴時効の対象から除外しました。
刑事訴訟法第250条
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
二 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
三 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
2 時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑に当たる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
五 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
六 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
七 拘留又は科料に当たる罪については一年
上の事例において、Aさんは強姦致傷の罪に問われています。
強姦致傷罪は、平成29年の法改正により、現行法では強制性交等致傷罪に当たりますが、犯行時は法改正前であったため、犯行時に規定されていた強姦致傷罪が適用されます。
強姦致傷罪の法定刑は、無期又は5年以上の懲役です。
平成22年の法改正で変更があったのは、人を死亡させた罪についてであり、強姦致傷罪については改正前と変わりなく、公訴時効は15年です。
Aさんが強姦致傷事件を起こしたとされるのは、平成17年9月1日午前0時過ぎです。
時効は、犯罪行為が終った時から進行するため、平成17年9月1日から15年後の令和2年9月1日に成立することになります。
事例のように、犯行時から相当の時間が経過してから突然逮捕されるケースは少なくありません。
強姦致傷罪は、有罪となれば、無期又は5年以上の懲役の範囲で刑罰が科されることになりますので、決して軽い罪とは言えません。
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