職務質問・所持品検査の適法性を争う

職務質問所持品検査適法性について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県岐阜市の繁華街で警ら中の岐阜県岐阜南警察署の警察官に職務質問を受けたAさん。
警察官は、Aさんに所持品検査に応じるよう求めましたが、Aさんは一貫して拒否しました。
すると、警察官数人はAさんを取り囲み所持品検査に応じるよう説得を続けました。
後に応援で駆け付けた警察官も加わり、5~6人の警察官に取り囲まれる形で約4時間の拘束を受け、警察官はAさんの隙をつく形でAさんの持っていたカバンの中を調べはじめました。
その結果、Aさんの持っていたカバンから乾燥大麻が見つかり、Aさんは大麻取締法違反(所持)の疑いで現行犯逮捕されました。
Aさんは、警察による職務質問所持品検査は違法ではないかと接見に来た弁護士に相談しています。
(フィクションです)

公訴の提起・追行・維持のために被疑者の身柄を確保し、証拠を収集する捜査機関による活動を「捜査」といいます。
この捜査は、任意捜査と強制捜査とに分けられます。
前者は、任意処分による捜査のことで、参考人取調べ、鑑定嘱託、実況見分等が挙げられます。
一方、強制捜査とは、強制処分による捜査のことをいいます。
例えば、逮捕、捜索・差押え、検証等があります。

捜査の端緒(きっかけ)は、「犯罪があると思慮する」に至った場合であり、捜査機関自らが犯罪を感知する場合と、捜査機関以外の者が犯罪を感知して捜査機関に申告する場合とがあります。
前者には、職務質問や検視等、後者には、告訴、告発、請求、被害届、自首等があります。

職務質問

捜査の端緒ともなる「職務質問」ですが、「何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者」等を、「停止させて質問すること」をいいます。
この職務質問は、あくまでも捜査の端緒として、犯罪が認知される前に行われる行政警察活動です。
行政警察活動というのは、警察活動のうち個人の権利や自由の保護を含む公共の安全及び秩序の維持回復を内容とする活動のことです。
行政警察活動に対するものとして、司法警察活動があり、これは司法権の作用に基づいて、犯罪事実を捜査し、犯人を逮捕し、証拠を収集することを目的とするものです。
司法警察活動は、犯罪の訴追や処罰に向けた活動が中心となるところ、行政警察活動は犯罪の予防と鎮圧が主となります。
行政警察活動においても、犯罪予防や秩序維持の目的のため有形力の行使は認められます。
けれども、行政警察活動においても、将来捜査に発展する可能性があり、市民の側が受ける不利益は、司法警察活動の場合とそう変わりないことから、適正手続の保障は求められ、有形力の行使は、必要性、緊急性、相当性の要件を満たす限度でのみ認められます。

適法とされた行為では、
職務質問中に逃亡した者を130メートル追いかけ、背後から腕に手をかけて停止させた行為。(最決昭29・7・15)
・酒気帯び運転の疑いがある者の逃走を防止するために、窓から手を入れてエンジンキーを回してスイッチを切った行為。(最決昭53・9・22)
・ホテルの宿泊客に対する職務質問を継続するために、ドアを押し開け、ドアが閉められるのを防止した行為。(最決平15・5・26)

他方、違法とされた行為では、
職務質問に続いて、現場に6時間以上留め置いた行為。(最決平6・9・16)

職務質問における実行力の行使の限界については、職務質問の必要性の高さ、対象者の対応、対象者の状況、実力行使の態様・程度、自由制限の程度などについて、個々の事案に即して、総合的に判断して、決められることになります。

職務質問に付随する所持品検査

職務質問に伴って行われる所持品検査は、職務質問の効果を上げる上で必要かつ有効である行為です。
しかし、その方法によっては、対象者の権利を害する行為となるおそれもあります。
職務質問に付随する所持品検査に関する直接の規定はありません。
所持品検査でも、所持品の外部を観察して質問する行為や、承諾を得て中身を検査する行為には問題はありません。
しかしながら、承諾なく中身を検査する行為についてはどう判断されるのでしょうか。

判例は、所持品検査職務質問に付随する行為として、強制によらず、検査の必要性、緊急性、相当性が認められる限度で許されるとしています。(最判昭53・6・20)
所持品検査は、任意手段である職務質問に付随する行為として許容されるため、原則として、所持人の承諾を得た上で、その限度において行われなければなりません。
しかしながら、所持人の承諾のない限り所持品検査を一切許可しないとするのではなく、捜索に至らない程度の行為については、強制にわたらない限り、所持品検査においても許容される場合があります。

職務質問やそれに付随する所持品検査適法性を判断する一律の基準はありませんが、個々の事案に照らし合わせて、総合的に判断されることになります。

職務質問所持品検査適法性について争いたいとお考えであれば、一度刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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