落書きと器物損壊罪

落書きと器物損壊罪

落書きと器物損壊罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部が解説します。

【事案の概要(*8月30日配信の名古屋テレビニュースを参考にしたフィクションです。)】

岐阜県羽島市に住むAさんは、近頃世間を騒がせている某宗教団体に対して不満を抱いていました。
そこで某日、同市内にある某宗教団体の施設の表札や外壁にスプレー式塗料を用いて、複数の落書きをしました。
落書きに気付いた施設管理者が岐阜県警察岐阜羽島警察署に通報し、防犯カメラの映像からAさんの犯行であることが発覚したため、Aさんは器物損壊の疑いで逮捕されました。

【Aさんの行為は器物損壊罪にあたる】

器物損壊罪は、他人の物を損壊し、又は傷害した場合に成立する犯罪で、罰則規定として「三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料」が定められています(刑法第261条)。
なお、器物損壊罪は親告罪であるため、公訴提起には告訴が必要です(刑法第264条)

刑法
(器物損壊等)
第二百六十一条 前三条に規定するもののほか、他人の物を損壊し、又は傷害した者は、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金若しくは科料に処する。
(親告罪)
第二百六十四条 第二百五十九条、第二百六十一条及び前条の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

「損壊」とは、物の効用を害する一切の行為を指し、物を壊して本来の使用が出来なくなった場合はもちろんのこと、過去の裁判例によれば、食器に放尿する行為といった、心理的に使用できない状態にする行為も、「損壊」に該当すると判断されています。
今回のケースでは、Aさんの落書き行為によって、表札や外壁の効用が害されているといえるため、器物損壊罪に該当すると考えられます。

【場合によっては建造物損壊罪に?】

なお、施設の外壁への落書き行為は、場合によっては、より重い建造物損壊罪(刑法第260条)に該当するおそれがあります。

(建造物等損壊及び同致死傷)
第二百六十条 他人の建造物又は艦船を損壊した者は、五年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。

建造物損壊罪は、他人の建造物等を損壊した場合に成立する犯罪ですが、建造物の扉やドア、外壁についても、それらと建造物との接合の程度や機能上の重要性から総合考慮して、建造物にあたるかを判断するとされています。
外壁については、取り外しが困難であり接合性が強いものの、落書き行為だけでは外壁の重要な機能である雨風からの保護を害することにはなりにくいため、器物損壊罪の成立にとどまるとされることが多いです。
一方で、外壁が雨風からの保護にとどまらず、周囲の景観に合わせて外観、美観に工夫が凝らされており、それら外壁に落書き行為をしたという事案においては、最高裁は「建物の外観ないし美観を著しく汚損し、原状回復に相当の困難を生じさせたものであって、その効用を減損させたものというべき」として建造物損壊罪にあたると判断しています(最判平成18年1月17日参照)。

建造物損壊罪は器物損壊罪より罰則が重く、罰金刑が規定されていないため、起訴されれば必ず正式な裁判となります。
さらに、建造物損壊罪は器物損壊罪と異なり、非親告罪なので、被害者による告訴がなくとも公訴提起されることになります。

【お困りの場合は弁護士に相談を】

器物損壊罪・建造物損壊罪で少しでも刑事処分を軽くしたいと考えている場合、被害弁償や被害者との示談交渉が重要となります。
器物損壊罪は親告罪ですので、示談交渉によって告訴を取り下げてもらうことができれば、事件化を回避すること(不送致処分)が可能です。
建造物損壊罪は非親告罪ですが、被害者の方との示談締結が出来れば、不起訴処分の獲得や仮に起訴された場合の執行猶予の獲得の可能性が高まります。

もしお困りでしたら、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部は、年間多数の刑事事件への対応をしてきた刑事事件専門の法律事務所です。
是非、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所名古屋本部にご相談ください。

 

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