(事例紹介)ニセ電話詐欺事件でキャッシュカードをだまし取った男性が逮捕【岐阜県関市】
ニセ電話詐欺事件でキャッシュカードをだまし取った男性が逮捕された事例について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説いたします。
事例
岐阜県関市に住む80代の女性が孫などをなのる男からキャッシュカード2枚をだまし取られたニセ電話詐欺事件で、受け子の男が詐欺の疑いで逮捕されました。
男は、何者かと共謀し、被害女性の自宅に孫になりすまして「会社にお金を弁償しないといけない」などと嘘の電話をかけ、親族を装って女性の家を訪れ、キャッシュカード2枚をだまし取った疑いが持たれています。
女性の口座からは現金計70万円が引き出されていました。
警察によりますと、男は女性から直接キャッシュカードを受け取る「受け子」の役割だったということです。
(岐阜放送「孫などを装ったニセ電話詐欺事件 「受け子」の男を詐欺容疑で逮捕 岐阜県関市」(2024/3/5)を引用・参照。)
~特殊詐欺と共犯関係〜
(詐欺)
第246条 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2(略)
(共同正犯)
第60条 2人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。
刑法246条1項を見ると分かる通り、(1項)詐欺罪が成立するためには、「人を欺」くことによって「財物を交付」させることが必要です。
本件では逮捕された男(被疑者)はキャッシュカードを受け取ることにしか直接関与しておらず、単独では上記詐欺罪の要件を満たしていません。
しかし、刑法60条はいわゆる(共謀共同正犯も含む)共同正犯についての定めを置いており、犯罪の一部しか実行していない者も「共同して犯罪を実行」した場合には犯罪の全体について責任を負います。
よって、本件で逮捕された被疑者は、素性不明の架け子らと共謀し犯罪を実行したと考えられ、上記のようにキャッシュカードを受け取ることにしか関与していないとしても、架け子が行った「人を欺」く行為についても責任を負うことになるのです。
なお、本来であれば共謀は犯罪の実行以前に行われなければなりませんが、仮に受け子が「人を欺」く行為(欺罔行為)の後に犯罪に関与した場合でも共同正犯として詐欺罪の成立が認められることがあることに注意が必要です(最高裁平成29年12月11日決定参照)。
〜特殊詐欺の特色と受け子の処遇~
本件はいわゆる特殊詐欺によって(受け子が)逮捕された事例です。
特殊詐欺という言葉は、平成16年頃から警察によって使用され始め、現在ではオレオレ詐欺、還付金詐欺等にとどまらず手口の類似性などから広い対象に使われるに至っています。
特殊詐欺は、本事例でも末端の受け子が逮捕されたのみで、実際に被害者を騙した架け子は逮捕されていません。
しかも、その架け子すら詐欺グループの中枢メンバーとは限らず、中枢の首謀者やそれに近い立場の人間は複雑な役割分担を備えた高度な組織性によって検挙が困難となっているのが現状です。
つまり、受け子は特殊詐欺行為の共犯関係の中でも最も下位に位置するにすぎないことがほとんどです。
しかし、特殊詐欺の事案では、受け子のような末端の者であっても起訴されることが極めて高く裁判をも見越した弁護活動が不可欠となります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、詐欺事件を含む刑事事件を専門に取り扱っている法律事務所です。
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