強制性交等未遂で逮捕

強制性交等未遂で逮捕

強制性交等未遂について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~

岐阜県関市で、Aさんは性的暴行を加える目的でターゲットを物色していました。
そして、帰宅途中のVさんを見つけ、人気のない道に入った瞬間、AさんはVさんを背後から襲い、押し倒しました。
Aさんは、性交する目的で、Vさんの陰部に指を入れましたが、指に血が付着していたことに驚き、性交することなく、その場を去りました。
後日、岐阜県関警察署は、強制性交等未遂の容疑でAさんを逮捕しました。
(フィクションです。)

未遂

犯罪は、犯行のために準備をし、実際に実行行為を行い、結果が発生する、という経過をたどることが多いです。
実行行為に基づき結果が発生した場合は、既遂罪として処罰されます。
しかし、実行行為を行ったが、結果が発生しなかった場合や、結果は発生したが、実行行為と結果との間に因果関係がない場合についても、法律で未遂罪の処罰規定がある場合のみ処罰されます。

刑法第43条は、未遂犯について規定しています。

犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。

未遂には、「障害未遂」と「中止未遂」の2種類があります。
「中止未遂」は、実行行為に着手したものの、自己の意思によりやめた場合をいい、「障害未遂」は、それ以外の理由により未遂に終わった場合をいいます。
中止未遂が成立した場合、必要的に刑が減軽または免除されますが、障害未遂は、任意的に刑が減軽できるにとどまることから、具体的な刑を決める上では大きな違いがあると言えます。

刑の減軽については、刑法第68条に規定されています。
・死刑⇒無期懲役または10年以下の懲役・禁固となる。
・無期懲役・禁固⇒7年以上の有期懲役・禁固となる。
・有期懲役・禁固⇒その長期および短期を2分の1とする。
・罰金⇒その多額および寡額を2分の1とする。
・拘留⇒その長期の2分の1とする。
・科料⇒その多額を2分の1とする。

中止未遂の成立要件

中止未遂であれば、必要的に刑が軽減または免除されることになりますが、中止未遂が成立するには満たさなければならない要件があります。

中止未遂が成立するためには、
①犯罪の実行に着手したこと、
②自己の意思によって、
③犯罪を中止したこと
が必要となります。

障害未遂との区別の関係では、②自己の意思によって、③犯罪を中止したか否かが問題となります。

②「自己の意思によって」中止したか否かは、(a)実行行為者の意思とは関係のない事実によって、結果が発生しなかった場合には、「自己の意思によって」中止したとは言えません。
他方、(b)実行行為の途中で、何ら外部的な要因がないのに、悔悟の気持ちなどから、実行行為をやめた場合は、「自己の意思によって」中止したと言えます。
問題は、一定の外部的な要因があり、これを動機として実行行為を中止した場合です。
これについては、国民の規範意識に則り、通常、結果の妨害となる性質となるものにより中止したか否か、つまり、一般人を基準に、その事情があれば犯行をやめるかどうか、という基準に従って判断されます。
この点、判例では、次のケースで自己の意思により中止したものと認めています。
・強盗目的で、被害者を脅迫したが、被害者から、「これしか金がない」と言われ、涙を流されたことから哀れに思い、その後の強取行為に至らなかった場合。(福岡高判昭35・7・20)
・殺害目的で被害者に睡眠薬を飲ませた後、大変なことをしたと思い、さらに睡眠薬を飲ませなかった場合。(東京地判昭37・3・17)
一方、強制性交目的で、被害者の陰部に指を挿入したところ、指が血に染まったのに驚き、その後の強制性交行為に及ぼなかったという事件において、一般的にはその精神的ショック(指に付着した血液を見驚き)などから犯行を中止する可能性が高いと判断され、自己の意思により中止したものと認められないとした判例があります。(最判昭24・7・9)

③の「中止」したか否かについては、「着手未遂」と「実行未遂」に分けて考える必要があります。
実行行為に着手したが、実行行為が終了する前に、中止する「着手未遂」は、その後の実行行為を継続しないことが「中止」となります。
他方、「実行未遂」は、実行行為に着手し、実行行為が終了したが、結果が発生しなかった場合をいいます。
実行未遂の場合、実行行為は終了しており、実行行為を継続しないことはありえず、結果発生防止のための真摯な努力がないと「中止」したとは言えません。
例えば、殺意をもって、被害者の首をしめたところ、被害者がぐったりしたので、それ以上特にしなかった場合(福岡高判平11・9・7)や、放火したが、火が燃え上がるのを見て怖くなり、所有者に火災を知らせたのみで、自ら消火活動はしなかった場合(大阪地判昭42・11・9)などです。

中止未遂と障害未遂とでは、成立要件は異なり、また、科され得る刑も違ってきます。
未遂事件でも、中止未遂に該当するか否かはケースによって異なりますので、刑事事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。

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