他人のカード情報を盗みネットで買い物

他人カード情報盗みネット買い物した場合に問われ得る罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
衣料品店で販売のアルバイトをしていたAさん(18歳)が、岐阜県北警察署に電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されました。
Aさんは、アルバイト先で客が使用したクレジットカード情報を売上票から入手し、ネットで新幹線のチケットやホテルの宿泊代を支払う際に入手したクレジットカード情報を使用していました。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、すぐに対応してくれる弁護士を探しています。
(フィクションです)

電子計算機使用詐欺罪とは

他人のクレジットカード情報を不正に入手し、その情報を使ってオンラインショップなどで商品を購入した場合、パソコンに入力したクレジットカード情報の持ち主になりすまして商品を購入しているので、騙して物を入手したと言えます。
一見すると、刑法246条の詐欺罪に当たるように思われますが、詐欺罪の対象となるのは「人」を欺く行為であるため、コンピュータに対する詐欺的行為を行った場合、詐欺罪には当たりません。
しかし、刑法246条の2が昭和62年に新設され、コンピュータに対する詐欺的行為の処罰が可能となりました。

第246条の2 前条に規定するもののほか、人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り、又は財産権の得喪若しくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者は、十年以下の懲役に処する。

◇客体◇

電子計算機使用詐欺罪の客体は、「財産上の利益」です。
「財産上の利益」とは、財物以外の財産上の利益の一切をいいます。
債権や担保権の取得、労役・サービスを提供させること等の他、債務免除や支払猶予を得ること等を含みます。
上の事例では、新幹線やホテルの利用権が財産上の利益となります。

◇行為◇

電子計算機使用詐欺罪の行為は、以下の2つです。

①「虚偽の情報若しくは不正の指令」による「不実の電磁的記録」の作出
246条の2前段は、「人が事務処理に使用する電子計算機」に「虚偽の情報若しくは不正の指令を与えて」、「不実の電磁的記録」を作る行為について規定しています。

(a)「人の事務処理に使用する電子計算機」
他人がその事務を処理するために使用する電子計算機(=コンピュータ)のことです。

(b)「虚偽」
電子計算機を使用する当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反するものを意味します。

(c)「虚偽の情報を与える」
「虚偽の情報若しくは不正な指令を与え」るというのは、当該事務処理システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反する情報を入力させることをいいます。

(d)「不正な指令を与える」
「不正な指令を与え」るとは、その電子計算機の使用過程において本来与えられるべきでない指令を与えることをいいます。

(e)「財産権の得喪若しくは変更に係る電磁的記録」
財産権の得喪・変更があったという事実や財産権の得喪・変更を生じさせるべき事実を記録した電磁的記録のことで、取引の場においてそれが作出されることによって、その財産権の得喪・変更が行われるものを指します。

(f)「不実の電磁的記録を作る」
「不実の電磁的記録を作」るとは、人の事務処理の用に供されている電磁的記録に虚偽のデータを入力して真実に反する内容の電磁的記録を作出することをいいます。
判例は、不正に入手したクレジットカードの名義人氏名等を冒用して、これらをクレジットカード決済代行業者の使用する電子計算機に入力送信して電子マネーの利用権を取得した行為について、「被告人は、本件クレジットカードの名義人による電子マネーの購入の申し込みがないにもかかわらず、本件電子計算機に同カードに係る番号等を入力送信して名義人本人が電子マネーの購入を申し込んだとする虚偽の情報を与え、名義人本人がこれを購入したとする財産権の得喪に係る不実の電磁的記録を作り、電子マネーの利用権を取得して財産上不法の利益を得たものというべきである」として、電子計算機使用詐欺罪の成立を認めました。(最決平18・2・14)

②「虚偽の電磁的記録」の供用
246条の2後段は、「虚偽の電磁的記録」を供用する行為を規定しています。

(a)「供用」
「虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供」するとは、行為者が所持する内容虚偽である電磁的記録を、他人の事務処理用の電子計算機に差し入れて使用することをいいます。

上記事例の場合、Aさんは客が使用したクレジットカード情報を入手しています。
Aさんは、オンラインショップなどで新幹線のチケットやホテルの予約をする際、不正に入手したクレジットカードの名義人であるかのように装い、そのクレジットカード情報を入力し、新幹線のチケットやホテル代金をクレジットカードの名義人が支払ったかのような不実の電磁的記録を作り出し、Aさんは新幹線やホテルの利用権を取得しているため、電子計算機使用詐欺罪が成立するものと考えられます。

電子計算機使用詐欺罪は、法定刑が10年以下の懲役となっており、刑法犯の中でも重い罪となります。
被疑者が少年の場合、犯した罪の軽重のみが最終的な処分に影響を及ぼすのではなく、少年の要保護性、つまり、少年の資質や環境等に照らして、当該少年が再び非行をする危険性があるかという点も大きく影響します。
ですので、お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、すぐに少年事件に強い弁護士にご相談だくさい。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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