【事例】
岐阜県郡上市に住むAさんは、近所のコンビニ買い物に行きましたが、店内で商品を見ている時に財布を自宅に忘れてきたことに気付きました。
店員がレジで作業をしており、他の客がいなかったことから「このまま商品を万引きしてもばれないだろう」と万引きすることを思いついたAさんは、弁当と缶チューハイを上着に隠して店の外に出ました。
しかし、事務所で防犯カメラを見てた店員がAさんの犯行に気付いたらしく、Aさんはコンビニのすぐ近くコンビニの店員に腕を掴まれました。
Aさんは、逮捕を免れるために、この店員の顔を殴って自宅に逃げ帰りましたが、その日の夜に自宅を訪ねてきた岐阜県郡上警察署の警察官に事後強盗罪で逮捕されてしまいました。
(フィクションです。)
【事後強盗罪について】
事後強盗罪とは、窃盗の犯人が目的物を窃取した後で、一定の目的のもと暴行または脅迫を行った場合に成立する可能性のある罪です。
通常の強盗罪においては暴行・脅迫が目的物を得るための手段となっているため、行為の順序が逆転していることになります。
事後強盗罪は「強盗として論ずる」と定められており、法定刑や他の罪との関係(たとえば強盗致傷罪になりうること)が強盗罪と同様になっています。
その理由は、事後強盗罪の要件に当たる一連の行為に、通常の強盗罪と同等の危険性があると考えられるためです。
事後強盗罪の要件である一定の目的は、目的物の返還の阻止、逮捕の阻止、証拠の隠滅、の3つです。
上記事例では、Aさんが万引きをした後、暴行を加え、隙をついて逃走しています。
このような行為は目的物の窃取と暴行に当たると言え、上記目的があると認められれば事後強盗罪が成立することになるでしょう。
ちなみに、事後強盗罪の暴行・脅迫も相手方の反抗を抑圧する程度が必要とされているため、その程度に至らなければ事後強盗罪の成立は否定される余地があります。
~居直り強盗~
「居直り強盗」は、窃盗の最中に被害者に気付かれたために、その目的(窃盗の目的)を達するために被害者に暴行、脅迫を加える犯罪です。
一見すると居直り強盗は、事後強盗罪のように思われますが、居直り強盗犯は上記3つの目的で被害者に暴行、脅迫するのではなく、あくまで財物の奪取が目的ですので、事後強盗罪ではなく、刑法第236条に規定されている強盗罪が適用されます。
~「既遂」「未遂」の基準~
事後強盗罪の「既遂」「未遂」の判断は、窃盗行為が既遂に達しているかどうかで判断されます。
ですから、万引きしようとした窃盗未遂犯が、店員に捕まりそうになって、店員に暴行して逃走した場合でも、逮捕を免れるという目的は達していますが、窃盗行為が未遂なので事後強盗未遂罪となります。
ちなみに、暴行によって相手に傷害を負わせた場合は、強盗致傷罪(刑法第240条)が適用されます。
【保釈による釈放】
事後強盗罪の法定刑は、強盗罪と同様5年以上の有期懲役(上限20年)です。
有罪になれば懲役刑は免れず、なおかつ減軽されなければそれが最低でも5年に及びます。
そのため、事後強盗罪の事案は、一般的に重大な事件として釈放が実現しづらい傾向にあります。
そうしたケースでは、起訴された後で保釈請求を行い、保釈によって身柄解放を実現することが重要になります。
保釈とは、裁判所に指定された額の金銭を納付することで、一定の条件のもと身柄を解放してもらう手続のことです。
裁判所に納付した金銭は、逃亡や証拠隠滅に及ぶなど一定の事情が生じた場合に没収(没取)されるものです。
これは裁判所にとって担保となる一方で、被告人にとってはそうそう不審な行動に及ばないことを根拠づける事実にもなります。
このことから、保釈は重大事件においても比較的認められやすくなっているのです。
被疑者として勾留されている最中に起訴されると、勾留は被疑者用のものから被告人用のものへと切り替わり、勾留の期間が最低2ヶ月は延長してしまいます。
更に、その期間の経過後は1ヶ月毎に勾留が更新されることとなるため、場合によっては判決が出るまで拘束が続くという事態になりかねません。
そうした著しい不利益を阻止するうえで、保釈という手段は非常に重要になります。
一日でも早い保釈を実現するために、保釈に関する手続はぜひ弁護士に任せてください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、これまで数々の刑事事件と接してきた弁護士が、保釈の実現に向けて迅速に弁護活動を行います。
ご家族などが事後強盗罪の疑いで逮捕されたら、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
事務所での法律相談料は初回無料です。