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痴漢事件②:強制わいせつ罪
痴漢行為が強制わいせつ罪に当たる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
会社員のAさんは、満員電車の中で前に立つ女性が抵抗できないことをいいことに、そのスカートの上から、女性の臀部をなでたところ、女性が抵抗しなかったことから、さらに、そのスカートの中に手を差し入れ、下着越しにその臀部をなで回していたところ、女性に手を掴まれ、次の停車駅で下ろされました。
その後、駅長室に連れて行かれ、通報を受けて駆け付けた岐阜県岐阜中警察署の警察官に引き渡されました。
(フィクションです)
前回は、痴漢行為が迷惑防止条例違反に当たる場合について解説しました。
今回は、強制わいせつ罪に当たる場合について説明します。
2.強制わいせつ罪
強制わいせつ罪は、刑法第176条に次のように規定されています。
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
◇客体◇
強制わいせつ罪の客体について、特に制限はなく、男女問わず客体となります。
◇行為◇
強制わいせつ罪の実行行為は、客体が13歳以上の者か13歳未満の者かで異なります。
(1)客体が13歳以上の者の場合:暴行・脅迫を用いてわいせつな行為
①暴行・脅迫
被害者の意思に反してわいせつ行為を行うに足りる程度の暴行・脅迫が必要です。
力の大小強弱は必ずしも問わず、被害者の意思に反したわいせつ行為を行う程度のもので足ります。
例えば、通行中の者にいきなり抱きついてキスをする行為は、被害者の油断の乗じたものであり、被害者の意思に反するわいせつ行為だと言えます。
また、暴行それ自体がわいせつ行為であっても構いません。
②わいせつ行為
わいせつな行為とは、いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するような行為といいます。
該当する行為としては、陰部を手で触れる、陰部を手指でもてあそぶ、自己の陰部を強く押し当てる、女性の乳房をもてあそぶ、女性の意思に反して強いてキスをするなどが挙げられます。
女性の臀部をなでる行為は、その態様によってわいせつに該当する場合としない場合とがあります。
(2)客体が13歳未満の場合:わいせつな行為
客体が13歳未満の者である場合は、暴行・脅迫を用いずとも、わいせつな行為をしたのであれば、例えその者の同意があったとしても強制わいせつ罪は成立することになります。
強制わいせつ罪と迷惑防止条例違反との区別は、相手方の性的自由を侵害する程度に至っているか否かにあり、その対象となる部位や態様の執拗さや程度によって判断されます。
相手方の陰部に触れる行為は、一般的に、強制わいせつに該当することとなりますが、厚手の着衣の上から触るにとどまる場合は、条例違反となる場合が多くなっています。
相手方の臀部に触れる行為については、その態様の執拗さや程度によって異なります。
厚手の着衣の上から臀部をなでる行為は、一般的には、強制わいせつ罪における「わいせつ行為」には至っていないため、迷惑防止条例違反となることが多く、下着の上から、又は直接臀部をなでる行為は、その接触の程度から「わいせつ行為」となることがあります。
スカートの上から臀部をなでる行為については、「わいせつ行為」には至っておらず、迷惑防止条例違反にとどまる可能性が高いのですが、さらに、そのスカートの中に手を差し入れ、下着越しにその臀部全体をなで回す行為については、その程度から「わいせつ行為」に当たるものとみなされ、強制わいせつ罪が成立する可能性があるでしょう。
痴漢の強制わいせつ事件における弁護活動
被害者がいる事件においては、被害者への謝罪・被害弁償の上、示談を成立させることが終局処分に大きく影響します。
強制わいせつ罪は、親告罪ではないため、告訴がなくとも起訴することは可能です。
しかし、起訴前に被害者との間で示談を成立させることができれば、不起訴処分で事件を終了させる可能性を高めることができます。
被害者との示談交渉は、当事者間ではなく、弁護士を介して行うのが一般的です。
性的被害を被った被害者は、加害者に対して嫌悪感や憎悪を抱いていることが多く、当事者間での交渉は難航する傾向にあります。
また、加害者が身体拘束を受けている場合には直接交渉は不可能ですし、捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらうことは難しいでしょう。
弁護士であれば、弁護士限りでとの条件で連絡先を教えてもよいとされる被害者も多く、感情論的ではなく冷静に話し合いをすることができます。
弁護士は、被害者に対して示談のメリット及びデメリットを丁寧に説明した上で、粘り強く交渉することが求められます。
このような活動は、刑事事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件専門の法律事務所です。
痴漢事件を起こし対応にお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881まで。
痴漢事件①:迷惑防止条例違反
痴漢行為が迷惑防止条例違反に当たる場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
会社員のAさんは、満員電車の中で前に立つ女性が抵抗できないことをいいことに、そのスカートの上から、女性の臀部をなでたところ、女性に手を掴まれ、次の停車駅で降ろされました。
その後、駅長室に連れて行かれ、通報を受けて駆け付けた岐阜県岐阜中警察署の警察官に引き渡されました。
(フィクションです)
痴漢をした場合に成立し得る罪とは
痴漢とは、一般的に、電車やバスなどの交通公共機関の車両内や路上などで、他人の体を触ったり、性器を押付けるなどの卑わいな行為またはそのような行為を行う者を指します。
現行法には痴漢罪なる罪は存在しませんが、痴漢は、その態様によって、各都道府県が定める迷惑防止条例に違反する、若しくは刑法の強制わいせつ罪に当たる可能性があります。
1.迷惑防止条例違反
各都道府県において制定される迷惑防止条例は、ダフ屋行為、粗暴行為、不当客引き行為などの他、痴漢行為や盗撮行為、つきまとい行為などを違反行為と規定し、処罰の対象としています。
痴漢行為についての規定の仕方は、各都道府県の迷惑防止条例により様々ですが、今回は、岐阜県の迷惑防止条例について概説します。
岐阜県迷惑防止条例は、その3条において卑わいな行為を禁止しており、痴漢行為は本条で以下のように禁止されています。
第3条 何人も、正当な理由がないのに、公共の場所にいる者又は公共の乗物に乗つ
ている者に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、
次の各号のいずれかに掲げる行為をしてはならない。
(1) 衣服その他の身に着ける物(以下「衣服等」という。)の上から、又は直接人の
身体に触れること。
(2) 通常衣服等で覆われている人の下着又は身体(以下「下着等」という。)を見るこ
と。
(3) 通常衣服等で覆われている人の下着等の映像を見、又は記録する目的で、写真
機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下「写真機等」という。)を設置
し、又は通常衣服等で覆われている人の下着等に向けること。
(4) 前3号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
2 何人も、正当な理由がないのに、学校、事務所その他の不特定若しくは多数の者
が利用し、若しくは出入りする場所にいる者又はタクシーその他の不特定若しくは
多数の者が利用する乗物に乗つている者(前項に規定する者を除く。)に対し、人
を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次の各号のいずれか
に掲げる行為をしてはならない。
(1) 拒まれたにもかかわらず、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。
(2) 通常衣服等で覆われている人の下着等を見ること。
(3) 通常衣服等で覆われている人の下着等の映像を見、又は記録する目的で、写真機
等を設置し、又は通常衣服等で覆われている人の下着等に向けること。
3 何人も、正当な理由がないのに、前2項に規定する場所にいる者又は乗物に乗つ
ている者に対し、衣服等を透かして見る方法により衣服等で覆われている人の下着
等の映像を見、又は記録する目的で、衣服等を透かして見ることができる写真機等
を設置し、又は人に向けてはならない。
4 何人も、正当な理由がないのに、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服
等の全部又は一部を着けない状態でいるような場所にいる者に対し、人を著しく羞
恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、次の各号のいずれかに掲げる行
為をしてはならない。
(1) 当該状態でいる人の姿態を見ること。
(2) 当該状態でいる人の姿態の映像を見、又は記録する目的で、写真機等を設置し、
又は当該状態でいる人に向けること。
岐阜県迷惑防止条例の規定は、行為態様を具体的に例示しています。
(1)公共の場所にいる者・公共の乗物に乗った者に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせる方法で、
①衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。
②その他の卑わいな言動をすること。
1項は、「公共の場所」及び「公共の乗物」という場所的制限が定められています。
「公共の場所」とは、不特定かつ多数が自由に利用し、又は出入りすることができる場所をいいます。
例えば、道路、公園、広場など国や地方公共団体の所有地や施設だけでなく、駅、桟橋やふ頭、デパート、飲食店、興行場等も公共の場所です。
「公共の乗物」とは、電車、バス、船舶、飛行機その他不特定多数の者が利用するための乗物をいいます。
タクシー、ハイヤー、貸切バス・列車など、不特定多数の人が利用する物ではない乗物は公共の乗物には含まれません。
行為の手段については、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせる方法」であることが規定されています。
「人を著しく羞恥させ」るとは、通常人の感覚において、「ひどい」と思われる程度に、性的なはじらいを感じさせることを指します。
また、「人に不安を覚えさせる」とは、①衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること、や②その他の卑わいな言動、によって身体に対する危険を感じさせたり、心理的圧迫を与えることをいいます。
「卑わいな言動」とは、一般人に性的道義観念に反し、他人に性的羞恥心、嫌悪を覚えさせ、又は不安を覚えさせる追うないやらしくみだらな言動や動作をいいます。
(2)学校、事務所その他の不特定若しくは多数の者が利用し、若しくは出入りする場所にいる者・タクシーその他の不特定若しくは多数の者が利用する乗物に乗っている者に対し、人
を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、拒まれたにもかかわらず、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。
2項では、「不特定多数の者が利用・出入りする場所」又は「不特定多数の者が利用する乗物」にいる者に対する行為が対象となっており、その例として学校や事務所、タクシーが規定されています。
禁止行為については、「拒まれたにもかかわらず、衣類等の上から、又は直接人の身体に触れること」となっており、相手方に「拒まれた」ことが要件となっています。
通常の痴漢、例えば、服の上から人の胸や臀部を触るものや太ももなどを直接触るものであれば、迷惑防止条例違反となるでしょう。
Aさんの場合、電車(公共の乗物)内にいる女性に対して、そのスカートの上から臀部をなでていますので、迷惑防止条例違反が成立するものと考えられます。
しかし、痴漢の態様によっては、刑法の強制わいせつ罪に当たることもあります。
強制わいせつ罪に当たるケースについては、次回のブログで解説します。
岐阜県迷惑防止条例違反の場合、法定刑は、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(常習の場合は、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金)です。
容疑を認めており、初犯であり、かつ被害者との示談が成立した場合であれば、起訴猶予で不起訴処分となる可能性が高いでしょう。
被害者との示談が成立しなかった場合は、略式起訴で罰金刑というケースが多いです。
略式起訴となり罰金刑であっても有罪判決が言い渡されたことには違いありませんので、前科が付くことになります。
前科を回避するのであれば、不起訴処分を獲得する必要があります。
被害者との示談成立の有無が最終的な処分に大きく影響するため、早期に弁護士に依頼し、示談交渉に着手することが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、痴漢事件をはじめとした刑事事件専門の法律事務所です。
痴漢事件を起こし対応にお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
銃刀法違反事件で現行犯逮捕
銃刀法違反事件で現行犯逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県海津警察署は、岐阜県海津市の公共施設で、刃渡り約10センチの折りたたみナイフ1本を所持したとして、市内に住むAさんを銃刀法違反の疑いで現行犯逮捕しました。
施設内でAさんが利用者の男性と口論になり、Aさんがカバンから折りたたみナイフを出したことで、目撃した他の利用者が警察署に通報したことで、事件が発覚しました。
Aさんは、「護身用に持ち歩いていただけだ。」と警察に話をしています。
警察署から逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、今後Aさんはどうなってしまうのか不安で仕方ありません。
慌てて刑事事件専門の弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです)
銃刀法違反について
銃砲刀剣類所持等取締法(以下、「銃刀法」といいます。)は、銃砲、刀剣類等の所持、使用等に関する危害予防用必要な規制について定めている法律です。
(1)刀剣類の所持
銃刀法で規制される「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり及びなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち並びに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフをいいます。
銃刀法は、一定の場合を除いて、刀剣類の所持を禁止しています。
具体的に所持の禁止となる刀剣類は、人畜を殺傷する機能を有し、社会通念上、刀・やり・なぎなた・剣・あいくち・飛び出しナイフの各類型に当てはまる類型を備え、その罪質が銅質性であり、かつ、①刃渡り15センチメートル以上の刀・やり・なぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち、45度以上に開刃する装置を有する飛び出しナイフの形式を有する刀剣類です。
これに違反して刀剣類を所持した場合の罰則は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
不法所持罪が成立するためには、銃砲刀剣類を所持したという行為についての故意が存在していなければなりません。
所持の故意というのは、一般的に、所持という行為を認識していること、つまり、その物を保管する上での自己の実力支配関係を有している事実を認識していることです。
そのため、所持の動機や目的は故意の如何を問いません。
(2)刃物の携帯
銃刀法の刀剣類に当たらない刃物についても、刃体の長さが6センチメートルを超えるものについて、業務その他正当な理由による場合を除いては、その携帯が禁止されています。
ここでいう「刃物」とは、その用法において人を殺傷する性能を有し、銅又はこれと同等程度の物質的性能を有する材質でできている片刃又は両刃の器物で刀剣類以外のものです。
人が職業その他社会生活上の地位に基づいて、継続して行う事務・事業である業務や社会通念上正当な理由が存在する場合には、刃物の携帯が認められます。
護身用として携帯する場合は、正当な理由には当てはまりません。
「携帯」とは、屋内屋外を問わず、所持者自身が手に持つ、身体に帯びるなど、現に備えている場合のことを指します。
刃物の携帯についての罰則は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金です。
銃刀法違反で逮捕されたら
銃刀法違反で逮捕された場合、他の刑事事件と同様に、警察署の留置場に身柄が拘束されます。
警察署で取調べを受け、逮捕から48時間以内に、被疑者は釈放される、若しくは、証拠や関係書類と共に検察庁に送致されます。
検察庁に送致されると、検察官は被疑者の取調べを行った上で、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放する、又は、勾留を請求します。
検察官が勾留請求した場合、今度は被疑者の身柄が裁判所に移され、裁判官との面談を行います。
裁判官は、被疑者を勾留するか否かを決定し、勾留をしないとの決定をすれば、被疑者は釈放されますが、勾留が決定すると、検察官が勾留請求した日から原則10日間被疑者の身柄が拘束されることになります。
勾留となれば、長期の身体拘束が強いられることになり、被疑者は身体的にも精神的にもますます厳しい状態に置かれるでしょう。
また、その間は会社や学校に行くことが出来ませんので、事件のことが会社や学校に知れ渡り、最悪の場合には懲戒解雇や退学といった不利益を被る可能性もあります。
そのような事態を回避するためにも、早期に弁護士に相談し、身柄解放活動を行うことが重要です。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
公然わいせつで逮捕
公然わいせつで逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県瑞浪市の路上で、帰宅中の女子学生に下半身を露出したとして、会社員のAさんが公然わいせつの容疑で岐阜県多治見警察署の警察官に現行犯逮捕されました。
目撃者である女子学生が、すぐに警察に通報し、付近を調べていた警察官が犯人の特徴によく似た人物を発見し、職務質問をしたことでAさんの犯行が発覚し逮捕に至りました。
Aさんは、「ストレスを発散させるためにやった。」と話しており、他にも数件同様の手口で犯行に及んでいるとみられています。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、Aさんの勤務先に体調不良で休むと連絡しましたが、今後はどのようにすればよいか分からず困っています。
そこで、Aさんの妻は、刑事事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
公然わいせつとは
公然わいせつ罪は、刑法第174条に次のように規定されています。
公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
このように、公然わいせつ罪は、①「公然と」②「わいせつな行為」をした場合に成立する犯罪です。
①公然性
「公然と」とは、わいせつな行為を不特定又は多数の人が認識できる状態をいいます。(最決昭32・5・22)
実際に、誰かにわいせつな行為を認識されていることまでは必要とされず、不特定多数の人が当該わいせつ行為を認識できる状態であれば「公然性」は認められます。
特定少数の者にわいせつな行為を見せた場合であっても、それが不特定多数の人を勧誘した結果であれば、「公然性」は肯定されます。(最決昭31・3・6)
②わいせつ性
判例は、わいせつの意義について、「いたずらに性欲を興奮又は刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道着観念に反するもの」をいうと解釈しています。(最判昭26・5・10)
つまり、普通の人に性的な意味で恥ずかしい思いや不快な思いをさせる行為が「わいせつな行為」に当たると考えられるでしょう。
上の事例では、Aさんが路上で下半身を露出しており、公然わいせつ事件の典型例とも言える行為をしていますが、路上という場所は、不特定多数の人が行き来するところであり、そのような場所では、不特定多数の人がAさんの露出姿を見る可能性があります。
そのため、「公然性」は認められるでしょうし、下半身を露出させて人に見せる行為は、見せられた相手に性的に恥ずかしい気持ちや不快な気分にさせるものですので、「わいせつ性」も認められ、公然わいせつ罪が成立することになるでしょう。
公然わいせつで逮捕されたら
公然わいせつ事件を起こし、捜査機関に逮捕されると、その後どのような流れになるのでしょうか。
逮捕されると、警察署内の留置施設に収容され、警察署で取調べを受けます。
逮捕から48時間以内に、被疑者は釈放されるか、証拠や関係書類と共に被疑者の身柄を検察に送致されます。
検察に送致されると、検察官による取調べを受けます。
そして、検察官は、被疑者を釈放するか、釈放としない場合には勾留請求をします。
検察官が勾留請求をした場合、被疑者は検察庁から裁判所に行き、今度は裁判官と面談を行います。
そして、裁判官は、被疑者を釈放とするか、勾留とするかを決めます。
勾留となれば、検察官が勾留を請求した日から原則10日、延長が認められれば最大で20日もの間、身柄が拘束されることになります。
逮捕から起訴・不起訴の判断まで、最大で23日間の身体拘束を余儀なくされた場合、その間は当然、学校や会社に行くことはできませんので、最悪、退学や懲戒解雇となるおそれがあります。
そのような事態を回避するためにも、一刻も早く釈放されることが重要です。
そのため、早期の釈放となるよう弁護士に依頼し、身柄解放活動に着手するのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、公然わいせつ事件をはじめとした刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
ご家族が逮捕されてしまい対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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DV事件で逮捕
DV事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県可児警察署は、岐阜県可児郡御嵩町に住むVさんから、交際相手に暴力を振るわれたとの相談を受けました。
Vさんは被害届を出し、同署は交際相手の会社員のAさんを傷害の容疑で逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、Aさんの会社に体調不良で休みと伝えましたが、今後も身体拘束は続くのか心配しています。
Aさんの父親は、ネットで刑事事件に強い弁護士を探し、すぐに接見に行ってくれるよう頼みました。
(フィクションです。)
DV事件
配偶者や交際相手から振るわれる暴力を「ドメスティック・バイオレンス」(英語でdomestic violenceといい、略称でDVと呼ばれます)といいます。
ここで言う「暴力」には、殴る蹴るなどといった身体的暴力だけでなく、大声で怒鳴る、無視、付き合いを制限するなどの精神的暴力や、性行為の強要などの性的暴力も含まれます。
DVに関する法律に、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(以下、「DV防止法」といいます。)があります。
DV防止法における「暴力」は、身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動を指します。
DV防止法は、DVそのものを処罰する規定をもたず、保護命令に違反した者について、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金を科すとの罰則が設けられています。
DV防止法の規制対象は、「配偶者からの暴力」であり、現に法律上又は事実上夫婦関係にある場合、および離婚後又は内縁解消後に元配偶者から引き続き受ける暴力が含まれていますが、恋人関係にあるにすぎない場合には、DV防止法の規制対象とはなりません。
DVそのものについては、刑法などが適用され、刑事手続の従って処分されることになります。
例えば、DVの種類によって、以下のような罪に問われる可能性があります。
①身体的暴力
暴行、傷害、傷害致死、殺人など
②精神的暴力
傷害、強要、脅迫、侮辱など
③性的暴力
強制性交等、強制わいせつなど
DV事件は家庭内で発生するものですので、なかなか外部の者が把握することが難しいため、被害者からの被害相談、被害届の提出、告訴や、被害者又は近隣住民からの通報を受けてDV事件が発覚することが多いです。
事件について把握すると、被害の状況や加害者と被害者との関係性から、警察が加害者を逮捕する可能性は大いにあります。
DV事件で逮捕されたら
DV事件の一当事者が、罪に当たる行為を行ったであろうという疑いがある場合、刑事事件として捜査を開始し、その者を被疑者として取り調べます。
被疑者と被害者とが夫婦関係又は恋人関係といった密接な関係にあることを考慮し、被疑者が逮捕される可能性は高いでしょう。
なぜならば、そのような密接な間柄であれば、被疑者が被害者に対して暴力や脅迫をして、供述を変えさせたり、被害届や告訴を取り下げるよう迫る可能性があるからです。
逮捕の要件としては、「逮捕の理由」と「逮捕の必要性」があります。
「逮捕の理由」とは、「被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由」のことをいいます。
逮捕状は裁判官が発布します。
警察が集めた証拠を見て、裁判官が一応の疑いがあると認めるときに、逮捕の理由があるとします。
そして、「逮捕の必要性」についてですが、これは、被疑者が逃げたり、証拠を隠滅したりする危険があるということです。
被疑者に「逃亡するおそれ」や「犯罪の証拠を隠滅するおそれ」が明らかだと言えない場合、裁判官は、逮捕状を発布することはできません。
必要性の有無については、被疑者の年齢、境遇、犯罪の軽重・態様その他さまざまな事情から判断されます。
以上のような逮捕の要件を満たしている場合には、警察は裁判官に逮捕状を請求し、裁判官は逮捕状を発布することになり、警察は逮捕状を持って被疑者を逮捕します。
DV事件の場合、被害者が加害者の身体拘束までを望んでいないこともあります。
そのような場合には、被害者である一当事者が、捜査機関に対して、身体拘束を望んでいないことや被害がそれほど重くないことを伝えることにより、加害者が釈放されることもあります。
しかし、被害者の処罰感情が強い場合、加害者が被害者と接触し、被害者の証言を無理やり変えさせたり、被害届を取り下げさせたりするおそれも考えられるため、逮捕に引き続き勾留となる可能性も少なくありません。
そのため、釈放された場合には、被疑者を監督する者がいること、被害者とは一切連絡をとらないこと、被害者には一切近づかないこと、身体拘束によって被る不利益が大きい事などを説得的に主張し、検察官に勾留請求しないよう、裁判官に勾留の決定をしないよう働きかける必要があります。
このような活動は、刑事事件に強い弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
DV事件で被疑者となりお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
少年事件の審判に向けた活動
少年事件の審判に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県北方警察署は、窃盗の疑いで岐阜県本巣市に住むAくん(15歳)を逮捕しました。
逮捕の連絡を受けたAくんの家族は、Aくんとの面会を求めましたが、警察からは「今は会えません。」と言われました。
ネットで少年事件について検索したところ、家庭裁判所で審判を受けることになることを知りました。
不安になったAくんの家族は、少年事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
少年事件と審判
捜査機関が少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合、および犯罪の嫌疑が認められない場合であっても家庭裁判所の審判に付すべき事由があると認めるときには、原則、すべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
少年事件では、成人の刑事事件における起訴猶予や微罪処分といった捜査機関限りで事件を終了させることは認められていません。
事件が家庭裁判所に送致されると、家庭裁判所は、調査の結果、審判を開くことが相当と認めるときには、審判開始決定をしなければなりません。
法律上、審判を開始するか否かの決定は、調査を行った上で判断されるものとなっていますが、実務上は、観護措置が取られている場合には、調査官への調査命令と同時に審判開始決定がなされています。
その後、調査を経て審判期日での審理を行い、終局決定により事件が終了します。
少年事件における審判は、一般的に、期日での裁判官による審理および判断の過程を指す言葉であると理解されています。
少年審判は、①裁判所が自ら主導的に事件の調査や審理を行う点、②裁判官が審判期日前から証拠に触れることができる点、そして、③少年審判で科される保護処分は教育的な措置である点、などといった刑事裁判とは異なる特徴を有しています。
審判の審理対象
少年審判では、「非行事実」および「要保護性」について審理されます。
「非行事実」は、刑事裁判における「公訴事実」に当たるものです。
一方、「要保護性」は、次の3つの要素から構成されるものと考えられています。
(1)犯罪的危険性
少年の性格や環境に照らし、将来再び非行に陥る危険性があること。
(2)矯正可能性
保護処分による矯正教育を施すことによって、再非行の危険性を除去できる可能性。
(3)保護相当性
保護処分による保護が最も有効かつ適切な処遇であること。
以上の要素に該当する場合、要保護性が高いと判断されます。
この要保護性が審判での審理対象となることで、非行事実が軽微であっても、要保護性が高い場合には、少年院送致のような身体拘束を伴う重い保護処分に付されてしまうこともあります。
ですので、軽微な事案であっても、要保護性の解消に向けた活動を積極的に行う必要があります。
非行事実に争いがない場合、要保護性の解消に向けた活動が、付添人である弁護士が行う活動の大きなウェイトを占めることになります。
要保護性の解消に向けた活動を「環境調整」と呼びます。
環境調整は、少年が再び非行に陥ることがないよう、少年の内側および外側の環境を整えることです。
環境調整活動は、事案によって異なりますが、概ね次のような内容となります。
①少年本人への働きかけ(内部環境調整)
少年自身の内面を調整するものです。
少年が、事件について自分の心と向き合い、自分の考えや言動について省みるよう促し、被害者に対する謝罪の気持ちを持てるよう、事件の背景にある様々な問題を見つけ出し、その問題を解決する方法を探し出せるよう支援します。
②家庭環境の調整
家庭は、少年にとって最も身近であり、かつ、最も影響力のある環境です。
事件を起こした背景には、家庭環境に問題がある場合も少なくありません。
弁護士は、少年と保護者との間を取り持ちながら、何が問題であり、どのように今後対応していくべきかを少年と保護者と一緒に考え、見つけ出すよう働きかけます。
③学校・職場・交際関係の調整
学校や職場も、少年が生活をする上で欠かせない場所です。
事件後も、少年が引き続き学校や職場に行くことができるよう、関係者と協力する必要があります。
また、少年の交際関係が、非行を犯した要因のひとつであるケースも少なくありません。
不良関係をいかに解消するかについて、弁護士は、一方的にではなく、少年と話し合いながら、その方法を模索していきます。
このような活動により、要保護性が解消されることが期待できます。
少年事件の審判に向けた活動は、少年事件に強い弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、少年事件を数多く取り扱う法律事務所です。
少年やご家族と連携して、少年の更生に適した処分となるよう尽力いたします。
お子様が事件を起こし対応にお困りであれば、弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお電話ください。
恐喝事件~恐喝と権利行使~
恐喝と権利行使について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、知人のVさんに現金20万円を貸していましたが、返済期日になってもVさんからの返済がなく、数度にわたって利息も含めて22万円を返済するよう催促していました。
業を煮やしたAさんは、知人男性3名を連れてVさんを取り囲み、拳を突き出すなどのそぶりを見せつつ、「利息を含めて22万円払え。払わんのやったら、痛い目みるで。」などと脅しました。
怖くなったVさんは、その場でAさんに22万円を支払いました。
後日、Aさんは、岐阜県山県警察署に恐喝の疑いで逮捕されました。
Aさんは、「いつまでたっても貸した金を返さんから、返すよう言っただけや。」と供述しています。
(フィクションです。)
恐喝罪
刑法第249条は、恐喝罪について規定しています。
第二百四十九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
◇犯行の対象◇
恐喝罪の対象は、「人の財物」または「財産上不法の利益」です。
「人の財物」とは、他人の占有する財物です。
「財物」には、有体物でなくとも、物理的に管理可能なものは含まれます。
「占有」とは、人が物を実力的に支配する関係を意味します。
また、「財産上の利益」とは、財物以外の全ての財産上の利益をいいます。
◇行為◇
恐喝罪の成立には、相手方を恐喝し、その結果、相手方が畏怖し、相手方の財産的処分行為により財物の交付などを受ける、といった一連の因果関係が必要です。
①恐喝
恐喝は、脅迫または暴行により人を畏怖させることです。
この暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧するに足りる程度に至らず、相手方を畏怖させるに足りるもので構いません。
相手方の反抗を抑圧するに足りる程度に達したときは、「強盗罪」となります。
②畏怖
恐喝行為により相手方が畏怖することが必要です。
畏怖させるに至らず、単に漠然たる不安の念を生じさせるに足る程度のものは「畏怖」には当たりません。
③財産的処分行為
相手方がその意思により、財物ないし財産上の利益を処分することです。
財産的処分行為と言うためには、財産を処分する事実と処分する意思が必要となります。
◇結果◇
相手方の財産的処分行為の結果として、行為者側に財物の占有が移転すること、あるいは、財産上不法の利益の取得または第三者にこれを取得させることが必要です。
◇故意◇
恐喝行為、畏怖、財産的処分行為、財物の交付などの認識・認容が必要です。
また、「不法領得の意思」も求められます。
「不法領得の意思」というのは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用しまたは処分する意思」のことです。
条文には記載されてはいませんが、判例上認められた要件です。
脅すなどして借金を取り立てた場合~恐喝と権利行使~
他人に金銭を貸し付け、その返済が滞った場合、その返済を求める催促は、大小なりとも相手方に圧迫感を感じさせるものです。
催促の方法が行き過ぎた場合、恐喝罪の構成要件に該当してしまうことがあります。
しかし、この場合、行為者は債権者として返済を求める権利を有しているため、これが違法性にどのように影響するのかが問題となります。
つまり、恐喝罪の構成要件に該当する場合であっても、それが違法ではない(=違法性が阻却される)のであれば、犯罪は成立しないことになります。
上のケースを検討していましょう。
Aさんは、Vさんに対し、Aを含めた男性4名でVさんを取り囲んだ上、拳を突き出すなどのそぶりを見せつつ、支払わないと暴行を加える旨の告知をしており、怖がったVさんは22万円をAさんに支払っているので、恐喝罪の構成要件に該当すると考えられます。
しかし、Aさんは、Vさんに対し、貸付金の返済を求める正当な権利を行使しており、恐喝行為は、その権利行使の手段として行われています。
ここで問題となるのは、権利行使の手段として用いられている恐喝行為が、社会的に許容される行為となるのか、という点です。
権利行使の手段としての行為が、社会的に許容されるかどうかは、①権利の範囲内か、②その方法が社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えないか、という観点から検討され、①および②を満たすときに違法性が阻却されることになります。
権利行使の手段としての行為が違法性阻却となるためには、まず、権利行使の手段としての行為が、「権利の範囲内の行為」であることが必要です。
例えば、価格1円相当の松を盗んだ者に対し、損害賠償として45円を支払わないと告訴すると話して支払わせた事案では、権利の範囲外の要求をしたとして、違法性が認められています。(大判大3・4・29)
次に、権利行使の手段としての行為が違法性阻却となるためには、「社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えていない」ことが必要です。
判例では、十数名で押しかけ、約9時間にわたって社長を取り囲んで「腕ずくでも取る」などと威迫した案件では、社会的に相当な程度を超えているとして、違法性は阻却されませんでした。(最判昭27・5・13)
以上のことを考慮して、Aさんの行為について違法性が阻却されるのかを考えてみましょう。
まず、Aさんは、利息を含めて22万円の返済を求める権利を有していたのに対し、その範囲内で支払いを要求しているので、その行為は、権利の範囲内のものと言えるでしょう。
しかし、Aは、男性3名を連れてVさんを取り囲んだ上、拳を突き出すなどのそぶりを見せ、「払わんのやったら、痛い目みるぞ。」と言って脅しています。
これは、多数人での脅迫行為であり、社会通念上一般に忍容すべきものと認められる程度を超えていると言え、違法性は阻却されないと考えられます。
返済の催促であっても、その程度によっては、恐喝罪が成立する可能性があります。
ご家族が恐喝事件で逮捕されてお困りであれば、今すぐ弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
刑事事件・少年事件を専門とする弁護士が、無料法律相談・初回接見サービスをご提供いたします。
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保釈で身柄解放
保釈制度について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
特殊詐欺事件に受け子として関与したとして、Aさんは岐阜県中津川警察署に逮捕されました。
Aさんは、逮捕後、勾留が決定し、長期の身体拘束を余儀なくされています。
AさんやAさんの家族は、いつ身柄が解放されるのか心配です。
(フィクションです。)
特殊詐欺事件における身体拘束
特殊詐欺事件に関与し逮捕された場合、その後勾留となり長期間の身体拘束となる可能性は非常に高いと言えるでしょう。
特殊詐欺は、組織的に行われていることが多く、捜査に時間がかかることや、共犯者との罪証隠滅を図るおそれがあると判断され易く、ほとんどの場合で、勾留、そして勾留延長が決定します。
また、関与した事件が1件のみという場合は少なく、余罪が発覚し、それについて逮捕・勾留され、身体拘束の期間が長期化する傾向にあります。
特殊詐欺事件のように長期の身体拘束が見込まれる事件であっても、保釈制度を利用して身柄解放となる可能性はあります。
保釈制度とは
保釈は、勾留されている被告人を、一定額の保釈保証金を納付することを条件に、一時的に釈放する制度です。
保釈が許可された場合、被告人はもとの生活を送りながら裁判を受けることができますので、起訴前には身柄解放が困難である事件であっても、起訴後保釈により釈放となる可能性はあります。
保釈には、(1)権利保釈、(2)裁量保釈、(3)義務的保釈、の3種類あります。
(1)権利保釈
一定の事由がある場合を除いて、被告人に「権利」として保釈が認められるものです。
一定の事由とは、次の6つです。
①死刑、無期又は短期1年以上の懲役・禁固に当たる罪を犯した場合。
②過去に、死刑、無期又は長期10年を超える懲役・禁固に当たる罪について有罪判決を受けたことがある場合。
③常習として、長期3年以上の懲役・禁固に当たる罪を犯した場合。
④罪証隠滅のおそれがある場合。
⑤被疑者や証人に対し、危害を加えるおそれがある場合。
⑥氏名又は住所が明らかでない場合。
特殊詐欺事件の場合、詐欺罪又は窃盗罪に当たることが多く、その法定刑は、詐欺罪で10年以下の懲役、窃盗罪で10年以下の懲役又は50万円以下の罰金で、どちらとも短期1年以上の懲役に当たる罪となり、上の①に該当することになります。
また、組織犯罪のため、④の罪証隠滅のおそれにも該当すると判断される可能性はあります。
(2)裁量保釈
権利保釈の除外事由に該当する場合であっても、裁判所の裁量によって保釈が許可されることがあります。
これが「裁量保釈」と呼ばれる保釈です。
裁判所は、「保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情を考慮し、適当と認める場合には、職権で保釈を許すことができる」(刑法90条)のです。
被告人には、逃亡・罪証隠滅のおそれがないこと、そして、被告人が身体拘束を受けることで被る不利益について、裁判官に納得してもらうよう主張することが重要です。
(3)義務的保釈
不当に勾留が長引いたときに、請求又は職権によって保釈されるものです。
保釈請求がなされると、裁判官は、検察官に保釈に関する意見を聞いた上で、保釈を許可するか否かを判断します。
保釈許可決定が出された場合、裁判所に保釈保証金を納めることによって、被告人が釈放されます。
保釈請求をするタイミングも重要です。
余罪が複数ある場合、1件目で起訴された直後に保釈請求し、許可されたとしても、その後別件で逮捕されてしまっては、保釈をした意味がありません。
ですので、いつ保釈を請求するのか、捜査状況を考慮して見極める必要があります。
特殊詐欺事件のように長期の身体拘束が見込まれる事件であっても、保釈を利用して釈放される可能性はあります。
ですので、特殊詐欺事件でご家族が逮捕されてお困りの方は、刑事事件に強い弁護士にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、特殊詐欺事件を含む刑事事件・少年事件専門の法律事務所です。
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銃刀法違反と軽犯罪法違反
銃刀法違反と軽犯罪法違反について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県瑞穂市の公園のベンチに座っていたAさんは、巡回中の岐阜県北方警察署の警察官に職務質問を受けました。
所持品検査を受けた際、持っていたカバンから刃物が見つかりました。
警察官は、Aさんに警察署に同行するよう求めました。
(フィクションです。)
刃物を携帯する行為~銃刀法違反と軽犯罪法違反~
ナイフをカバンや車のデッシュボートに入れて外に出た際、たまたま警察官からの職務質問にあい、持っていたナイフが見つかり、取調べを受けることになった…、という話はそう少なくありません。
なかでも、キャンプのために持って行ったナイフをそのまま車に置いておいたケースが多いようです。
ナイフなどの刃物を携帯していた場合、刃物の種類によっては、銃刀法違反、もしくは軽犯罪法違反に当たる可能性があります。
(1)銃刀法違反となる場合
銃刀法は、「銃砲刀剣類所持等取締法」の略称で、銃砲・刀剣類の取り締まりを目的として法律です。
銃刀法は、法令に基づき職務のための所持する場合などを除き、原則として銃砲・刀剣類の所持を禁止しています。
「刀剣類」というのは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やり、なぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくち、そして、45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフのことをいいます。
このような「刀剣類」を「所持」することが禁じられており、違反した場合には、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科される可能性があります。
「所持」とは、人が物を補完する実力的支配関係を内容とする行為であり、事実上、管理、支配する行為を意味します。
銃刀法は、「刀剣類」の「所持」を禁止しているだけでなく、「刃物」の「携帯」についても規制の対象としています。
対象となる「刃物」は、その用法において人を殺傷する性能を有し、銅又はこれと同程度の物理的性能を有する材質でできている片刃又は両刃の器物で刀剣類以外のものをいい、刃体の長さが6センチメートルを超えるものです。
ただし、刃体の長さが6センチメートルを超えるものであっても、銃刀法の規制から除外されるものがあります。
はさみ:刃体の長さが8センチメートル以下で、刃体の先端が著しく鋭くなく、刃が鋭利でない。
折り畳み式ナイフ:刃体の長さが8センチメートル以下で、刃体の幅が1.5センチメートル以下、刃体の厚みが0.25センチメートル以下、開刃した刃物をさやに固定させる装置を有しない。
くだものナイフ:刃体の長さが8センチメートル以下、刃体の厚みが0.15センチメートル以下、刃体の先端部が丸みを帯びている。
切出し:刃体の長さが7センチメートル以下、刃体の幅が2センチメートル以下、刃体の厚みが0.2センチメートル以下。
規制対象の刃物を「携帯」する行為が禁止され、それに違反した場合には、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される可能性があります。
「携帯」とは、日常生活を営む自宅ないし居室以外の場所において、身体に帯びるか直ちに使用し得る状態で自己の身辺に置き、その状態をある程度の時間継続することをいいます。
業務その他正当な理由による場合には、違反となりませんが、護身用として携帯する場合は正当な理由には当たりません。
軽犯罪法違反
銃刀法の規制対象外の刃物を所持していた場合でも、軽犯罪法に触れる可能性があります。
軽犯罪法第1条2号は、「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、又は人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」に拘留又は科料を科すとしています。
銃刀法における「刀剣類」や「刃体の長さが6センチメートルを超える刃物」に当たらないものも、軽犯罪法で規制される器具に該当することがあります。
そのような器具を「隠して携帯」することが禁止されています。
「隠して携帯」するというのは、普通では人目に触れにくいような状態、例えば、ポケット、着衣、カバン、バッグに入れるなどして携帯することです。
このように、刃物を携帯することで銃刀法あるいは軽犯罪法に違反することもあるのです。
銃刀法違反または軽犯罪法違反で取調べを受けて対応にお困りであれば、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するお問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までお気軽にお電話ください。
少年事件における弁護士の役割
少年事件における弁護士の役割について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県羽島市に住む高校1年生のAくんは、市内の公園にあるトイレで女子児童にわいせつな行為をしたとして、強制わいせつ容疑で岐阜県羽島警察署に逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAくんの母親は、今後どのような処分を受けることになるのか、被害者への対応をどのようにすべきか分からず困っています。
Aくんの父親が急いでインターネットで少年事件に強い弁護士を探し、相談の電話を入れました。
(フィクションです。)
少年事件の流れ
20歳未満の者(以下、「少年」といいます。)が刑罰法令に触れる行為を行った場合、捜査段階では、基本的に刑事訴訟法が適用されることになります。
そのため、少年であっても、成人の刑事事件と同様に、捜査段階で身体が拘束される可能性はあります。
ただし、少年が14歳未満の場合、刑事責任が問われませんので犯罪は成立せず、被疑者として逮捕されることはありません。
身体拘束が少年に与える影響の大きさから、少年の身体拘束については、成人とは異なる手続がとられます。
①検察官は、勾留に代わる観護措置をとることができます。(少年法43条1項)
②検察官は、やむを得ない場合でなければ、勾留を請求することができません。(少年法43条3項)
③勾留状は、やむを得ない場合でなければ発することができません。(少年法48条1項)
④少年鑑別所を勾留場所とすることができます。(少年法48条2項)
⑤少年を警察留置施設に勾留する場合であっても、少年を成人と分離して収容しなければなりません。(少年法49条3項)
少年事件については、捜査機関が捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑があると判断した場合、すべての事件を家庭裁判所に送致することとなっています。(少年法41、42条)
少年事件では、成人の刑事事件のように起訴猶予に相当する処分はありません。
また、犯罪の嫌疑がなくとも、その性格又は環境に照らして、将来、罪を犯し、又は刑罰法令に触れる行為をするおそれがある場合には、「ぐ犯事件」として送致されることがあります。
家庭裁判所に事件が送致されると、家庭裁判所の調査官による調査、少年審判を経て最終的な処分が言い渡されます。
送致後、家庭裁判所はいつでも「観護措置」を決定することができます。
観護措置は、家庭裁判所が調査・審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、少年の身体を保護してその安全を図る措置です。
調査官は、審判の前に、少年事件の調査を行います。
調査官は、少年や保護者と面会したり、学校や被害者に文書等で照会を行うなどして調査を行い、調査の結果とそれに基づく処遇意見をまとめた少年調査票を作成し、裁判官に提出します。
審判は、非公開で行われ、非行事実と要保護性について審理されます。
そして、審判において、裁判官は少年に対して処分を言い渡します。
弁護士の役割
弁護士は、捜査段階では弁護人として、家庭裁判所送致後は付添人として、少年の権利や利益を保護しつつ、少年が更生できるよう支援します。
(1)身柄解放活動
先述したように、少年であっても、捜査段階で逮捕・勾留(又は勾留に代わる観護措置)され、その身柄が拘束される可能性があります。
また、家庭裁判所に送致された後は、観護措置がとられ、1か月ほど少年鑑別所に収容されることもあります。
このように、少年が長期間の身体拘束を受ける可能性がありますが、それによって少年が被る不利益は小さくありません。
そこで、長期の身体拘束を避けるべく、弁護士は身柄解放活動を行います。
逮捕された場合には、勾留の要件を満たしていないことや勾留を回避すべき事情があることを意見書を通して主張し、検察官に勾留請求しないよう、裁判官に対しては勾留を決定しないよう働きかけます。
家庭裁判所に送致された際にも、観護措置の要件を満たしていないことや、観護措置を回避すべき事情があることを裁判官や調査官に伝え、観護措置をとらないよう働きかけます。
このような働きかけにも関わらず勾留や観護措置がとられた場合には、勾留に対する準抗告申立や観護措置決定に対し異議申立を行います。
(2)弁護活動
少年は、成人以上に法的知識に乏しく、取調べおいては捜査機関の誘導に乗りやすいといった傾向があります。
そのため、弁護士は、少年にも理解できるように、丁寧に分かりやすい言葉や表現で手続や少年に保障されている諸権利について説明し、取調べでの対応についてのアドバイスします。
そうすることで、誘導による誤った内容の調書が作成されたり、不適切な取調べや調査が行われたりしないように努めます。
特に、身体拘束を受けている少年は、精神的に不安定になることが多いため、弁護士は頻繁に接見をし、法的支援だけでなく、少年の心身の安定を図るよう精神的な支援も行います。
(3)環境調整
少年が再び犯罪や非行を犯すことがないよう、少年の環境を整えることも弁護士の担う重要な役割のひとつです。
少年自身が、事件と向き合い、事件を起こした原因や自分の抱える問題、そして解決策を見つけることができるよう支援します。
また、被害者がいる場合には、謝罪や被害弁償等を行い、被害者に対応することを通じて、少年が真摯に反省するよう手助けします。
そして、少年の家族や学校、職場などと協力し、少年が更生できる環境を整えていきます。
このような環境調整は、審判の審理対象である要保護性の解消にもつながるため非常に大切な活動です。
以上、弁護士は少年事件において様々な役割を担っており、少年の更生を考える上ではキーパーソンとなり得る存在と言えるでしょう。
お子様が事件を起こし、対応にお困りの方は、少年事件を専門に扱う弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所に今すぐご相談ください。
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