殺人未遂事件で自首

【事例】

土木作業員のAさんは、同僚と二人で近所の居酒屋でお酒を飲んだ帰り道、この同僚と些細なことから言い争いになりました。
Aさんは、同僚から胸倉を掴まれた事に腹を立て、同僚を押し倒し、近くに落ちていいた角材で同僚の頭を何度も殴りつけたのです。
同僚がひどく出血し気を失ったことにから恐ろしくなったAさんは、そのまま現場から逃げ出しましたが、放っておいたら同僚が死んでしまうかもしれないと思い、岐阜県大垣警察署の交番にいる警察官に「頭から血を流した人が倒れている。」と申告したのです。
警察官が同僚のもとに急行したのでAさんは、名前も告げず、そのまま交番から出て自宅に向かいました。
しかし、その道中で酔いが覚めてきたAさんは、このまま逃げても、どうせ捕まってしまうだろうと思い、先ほどの交番に戻って警察官が帰ってくるのを待つことにしました。
そして、事件処理を終えて交番に戻ってきた警察官に犯行を自白したのです。
そのころ、病院に搬送途中に目の覚めた同僚が「Aさんが犯人である。」であることを捜査機関に申し出ており、すでにAさんは一斉手配されていました。
(フィクションです。)

【殺人未遂罪について】

殺人未遂罪は、人を殺害しようとしたものの、結果的に殺害には至らなかった場合に成立する可能性のある罪です。
傷害罪とは異なり、行為に人を殺害するに足りる危険性が含まれていること、および行為のときに殺意が存在していたことが必要となります。
ただ、実務上これらの区別を明確にするのは難しいことがあり、殺人未遂罪より軽い傷害罪が成立するに過ぎないと弁護士が主張することもあります。

殺人未遂罪の法定刑は、刑法にその範囲が明記されているわけではなく、殺人罪の法定刑に未遂と言う事実が加味されるかたちで決定されます。
殺人罪の法定刑は、死刑または無期もしくは5年以上の懲役となっています。
これに未遂の事実が加味されると、殺人未遂罪の刑は最も重いもので無期の懲役、最も軽いもので2年6か月の懲役となります。
ちなみに、結果的に未遂だったのではなく自らの意思で未遂にとどめた場合は、刑の減軽だけでなく免除の可能性も出てきます。

上記事例では、AさんがVさんの頭を角材で殴りつけたことで殺人未遂罪を疑われています。
殺人未遂罪に当たるかどうかの判断は、既に述べたように人の殺害に至る危険性が含まれていたかどうかによります。
そのため、凶器を用いたなどの事情から行為の危険性が認められれば、極端な話怪我が一切なくとも殺人未遂罪に当たる可能性があります。
この点は素人目線での感覚と少し違うかもしれないので、注意が必要と言えるでしょう。

【自首】

~最初の申告~
最初に交番に行って、警察官に「頭から血を流した人が倒れている。」と申告したAさんの行為については自首は成立しないでしょう。
そもそも自首とは、犯人が捜査機関に対して、自発的に自己の犯罪事実を申告し、その訴追を含む処分を求めることですので、この行為は自首に当たりません。
ここでAさんが、警察官に対して「自分が殴って怪我をさせた」ことを申告し、交番内にとどまっていれば自首が成立する可能性は非常に高いといえます。

~再び交番に戻って、帰所した警察官に犯行を自白した行為~
自首が認められる条件として
①犯罪が全く捜査機関に発覚していない場合
②犯罪事実は発覚していても、その犯人が誰であるか発覚していない場合
の何れかが必要となります。
Aさんの事件を検討すると、直ちに捜査機関の支配下に入る状態になれば自首が成立すると解されるのが一般的なので、Aさんが再び交番に戻った時点で、①の可能性は消滅しているでしょうが、②のAさんが犯人であることが捜査機関に発覚しているかどうかは明らかではありません。
もしこの時点で、Aさんが犯人であることが捜査機関に発覚していなければ自首が成立する可能性は非常に高いです。
ちなみに自首は、必ずしも警察署や交番所等の捜査機関に出頭しなければならないわけではありません。
直ちに捜査機関の支配下に入る状態であれば、電話や第三者を介する方法で申告しても、自首が認められる場合があります。

~自首が認められると~
刑法第42条に自首について規定されていますが、ここに「~その刑を減軽することができる。」と、自首が任意的な減軽事由となる旨が明記されています。

岐阜県大垣市の刑事事件でお困りの方、ご家族、ご友人が殺人未遂罪で逮捕されてしまった方、自首を考えておられる方は、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所では、自首する方に弁護士が付き添うサービスもございますので、お気軽にお問い合わせください。
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