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DV事件で逮捕されたら

2021-08-02

DV事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県関市のマンションで交際相手のVさんと半同棲生活を送っていたAさんですが、生活費のことで喧嘩をすることが増えていました。
ある日、また生活費のことで口論になり、VさんがAさんに向かって部屋にあった物を投げつけてきたため、カッとなったAさんは拳で数回Vさんの身体を殴りました。
Aさんは、そのまま部屋を出てました。
しばらくしてAさんがマンションに戻ると、岐阜県関警察署の警察官が部屋に来ており、Aさんは、Vさんへの傷害容疑で逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、事件の詳細が分からず心配になり、刑事事件に強い弁護士に相談の連絡を入れました。
(フィクションです)

DVで刑事事件に

ドメスティック・バイオレンス(以下、DVといいます。)は、家庭内での暴力を意味し、夫婦間の暴力行為、子供や高齢者に対する虐待など家庭内での様々な暴力行為が含まれます。
ここでは、夫婦間や交際相手間での暴力行為に焦点を当てて説明します。

DVには、様々な形態の暴力があり、身体的暴力から、精神的暴力、性的暴力、経済的暴力などがあります。
DVに関連する法律として、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(以下、DV防止法といいます。)があります。
DV防止法は、家庭内の暴力行為全般を対象とするものではなく、夫婦間の暴力行為に限定されています。
夫婦間の暴力とは、配偶者からの身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動に加え、これらの行為後に離婚したにもかかわらず、引き続きなされる元配偶者による同様の行為をいいます。
ここでいう配偶者には、婚姻届を提出した法律上の配偶者に限られず、事実上婚姻関係と同様にある内縁関係も含まれます。
このように、DV防止法は、法律上の婚姻関係又は内縁関係にある夫婦間の暴力行為、あるいは、それらの関係が解消されたあとになされる元夫婦間の暴力行為を対象としています。
DV防止法は、保護命令に違反した者に対する罰則は設けているものの、DV行為について罰則を科すものではありません。

そのため、DVの内容によって、暴行罪、傷害罪、強要罪、強制わいせつ罪、強制性交等罪、ストーカー規制法違反などといった犯罪が成立する可能性はあり、刑事事件として処置される場合があります。

DV事件で逮捕されたら

DVを受けた側からの相談を受けて、警察が捜査を開始するケースが多く見受けられます。
被害者からの被害届を受理した警察は、捜査を始めます。
DV事件においては、被害者と加害者の関係性から、加害者が被害者に接触し、被害届の取下げを要求したり、証言を変えるよう強要するおそれがあると認められる傾向があり、警察が被疑者を逮捕する可能性は高いでしょう。
また、同様の理由から、逮捕に引き続き勾留に付される可能性も高くなっています。
つまり、DV事件での身体拘束の可能性は、一般的に高いのです。

しかし、勾留となれば、逮捕から約13日もの間留置施設での身体拘束を強いられることになり、勾留延長が認められれば最大で23日間となります。
その間は、職場や学校に行くことはできませんので、事件が職場や学校に知られ、懲戒解雇や退学となるおそれが生じます。
そのような事態を回避するためにも、一刻も早く釈放されることが望まれますが、先述のように、一般的にはDV事件は身体拘束の可能性が高いため、何もせずに釈放されることは稀です。

それでは、早期に釈放されるためにはどのように対応すればよいのでしょうか。

DV事件のように被害者がいる事件では、被害者との示談を成立させることが、事件の早期解決、そして早期釈放に大きく影響する重要なポイントとなります。
ここで注意しなければならないのが、被害者との示談交渉です。
加害者が逮捕・勾留されている状態では、加害者本人が交渉することは事実上不可能です。
また、加害者が身体拘束を受けていない場合であっても、加害者が直接被害者と示談交渉する、もしくは加害者の家族が被害者と交渉することはお勧めできません。
当事者同士や家族との交渉は、感情論的になりやすくうまくまとまらないことが多いからです。
被害者との示談交渉は、弁護士に任せるのが一般的となっています。
弁護士は、事件の性質、被害状況や被害者の感情を考慮しつつ、示談をすることのメリット・デメリットを丁寧に説明し、適切な示談金額を設定した上で、当事者間で納得のいく内容での示談成立を目指します。

被害者との示談が成立すれば、不起訴処分となる可能性を高めることにもなり、事件終了となれば即釈放となるでしょう。

このような示談交渉は、刑事事件に強い弁護士、示談交渉に豊富な経験を有する弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件を専門とする法律事務所です。
刑事事件を起こしてお困りの方は、今すぐ弊所の刑事事件専門弁護士にご相談ください。

無料法律相談初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。

観護措置の回避

2021-07-29

観護措置回避に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県岐阜市に住む中学生のAくんは、Bくんと一緒になって、他校の学生2名に対して暴行を加え全治2週間のけがを負わせたとして、岐阜県岐阜羽島警察署に傷害の容疑で逮捕されました。
逮捕後に勾留となったAくんは、来月に迫る高校入学試験を受けることができるのか心配です。
Aくんの両親も、どうにか試験だけは受けさせてやりたいと思い、少年事件に精通する弁護士に今後の流れや釈放の可能性について聞いています。
(フィクションです。)

観護措置とは

捜査機関は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、嫌疑があると考える場合や、嫌疑があるとは言えないが、家庭裁判所の審判に付すべき事由があると考える場合には、事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
成人の被疑事件において、検察官は、例え被疑者が有罪であることを立証するだけの証拠を所持している場合であっても、被害者への被害弁償や示談が成立しているなどといった様々な事情を考慮して、起訴しないとする決定を行うことがありますが、少年の場合においては、原則としてすべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。

捜査機関から送致された事件を受理すると、家庭裁判所は、調査官による調査を行った上で、審判を開くかどうかを決定します。
ただ、捜査段階で逮捕・勾留されている少年の場合には、少年が家庭裁判所に送致された日に、調査官に調査命令を出すと同時に審判の開始決定を行います。

家庭裁判所は、事件が係属している間いつでも「観護措置」をとることができます。
観護措置とは、家庭裁判所が調査、審判を行うために、少年の心情の安定を図りながら、少年の身体を保護してその安全を図る措置のことをいいます。
この観護措置には、家庭裁判所の調査官の観護に付する在宅観護と、少年鑑別所に送致する収容観護とがありますが、実務上はほとんど後者がとられています。
観護措置の期間は、法律上は原則2週間で、更新の必要がある場合1回に限り認められるとされていますが、実際には、ほとんどの事件で更新がなされており、観護措置の期間は4週間で運営されています。

観護措置の回避に向けて

観護措置がとられれば、4週間もの間、少年鑑別所に収容されることになります。
観護措置により、落ち着いて事件や自身が抱える問題に向かい合えるというメリットもある一方で、4週間の収容により、学校や会社に行くことがでないために退学や懲戒解雇の可能性が生じるというデメリットもあります。
長期間の収容により、結果として少年の後の更生に多大なる不利益を生じさせることにもなりかねませんので、そのような可能性がある場合には、観護措置の回避に向けて動く必要があります。

観護措置の手続がとれらる流れとしては、捜査段階から身体拘束を受けているケースについてですが、少年は、送致日の朝、家庭裁判所に記録と共に送致されます。
そして、家庭裁判所に到着すると、裁判官の審問を受け、観護措置が取られるかどうかが決定されます。
観護措置の決定は、送致された日に行われるため、弁護士は、その決定がなされるまでに裁判官との面談や意見書の提出により、少年について観護措置をとる必要はないことを主張していくことになります。
観護措置をとらないように意見する際には、観護措置の要件を満たさないことを客観的な証拠に基づいて立証する必要があります。

観護措置の要件は、次の4つがあげられます。
①審判条件があること。
②少年が非行を犯したことを疑うに足りる事情があること。
③審判を行う蓋然性があること。
観護措置の必要性が認められること。

④の観護措置の必要性については、具体的には、調査、審判および決定の執行を円滑、確実に行うために少年の身体を確保する必要があること、緊急的に少年の保護が必要であること、そして、少年を収容して心身鑑別をする必要があること、のいずれかの事由がある場合に認められるとされています。

実務上では、④観護措置の必要性、特に、少年を収容して心身鑑別をする必要があるか否かが問題となることが多いです。
そのため、家庭裁判所に送致された時には、裁判官に、少年を収容して心身鑑別をする必要がないと認めてもらえるよう、捜査段階から少年の反省を深め、家族や学校、職場、交友関係など少年の周囲の環境を調整し、少年の更生に適した環境が既に整っているようにしておく必要があります。
また、必要性がないだけでなく、観護措置を避けるべき事情がある場合には、その点についても裁判官に伝え、理解してもらう必要があります。

このような活動は、少年事件に精通した弁護士に任せるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
お子様が事件を起こして対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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則竹弁護士が取材を受けコメントが東京新聞に掲載されました

2021-07-29

密漁について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所の代表弁護士則竹理宇が取材を受け、コメントが7月15日発行の東京新聞に掲載されました。

潮干狩り感覚の密漁で摘発されるケースが多発

これからの季節、海でのレジャーに出かける方も多いかと思いますが、海に生息する魚介類をむやみに採って持ち帰ると「密漁」となり、漁業法や、各都道府県が定める漁業調整規則に違反する可能性があるので注意が必要です。
中には、潮干狩り感覚で罪の意識がないままに禁止場所で貝類を採ってしまい、密漁として摘発を受けている方もいるようなので十分にお気をつけください。
また実際に各地でこういった事件の摘発が多発しており、海上保安庁等に検挙されると、管轄の検察庁に書類送検されて、刑事罰が科せられる可能性もあります
新聞記事には、こういった「密漁」に関して、漁業協同組合への取材内容や、専門家の意見を掲載し注意を呼び掛けています。

則竹弁護士のコメント

こういった密漁事件に巻き込まれないためにどうすればいいのかについて、則竹弁護士は「管轄の漁協に確認を取ってもらうのが確実だが、それが難しければ、人がいない場所では特に採取や立ち入りを禁止した看板などがないかチェックする。潮干狩り場以外では採ることを避けるのが賢明だ。」とコメントしています。

東京新聞(7月15日発行)の記事

駅員への暴行で逮捕

2021-07-26

駅員への暴行逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県大垣市の駅で泥酔してベンチで寝ていた会社員のAさんは、声を掛けた駅員に対して暴行を加えたとして、岐阜県大垣警察署に暴行の容疑で逮捕されました。
Aさんは、酔っていて事件当時のことを覚えていません。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、会社に事件のことが知られる前に釈放してほしいと思い、すぐに対応してくれる刑事事件専門弁護士に相談の連絡を入れました。
(フィクションです。)

駅員への暴行

国土交通省によると、令和元年における鉄道係員に対する暴力行為の発生件数は全国で611件と、5年連続で減少しているものの依然として高止まりしている状況だそうです。
そして、半数以上の加害者が飲酒有りの状態で犯行に及んだということです。
上の事例でも、Aさんは酒に酔った状態であり、駅員に対して突然暴行を加えたため、通報を受けて駆け付けた警察官に暴行の容疑で逮捕されています。

Aさんの暴力行為については、「暴行罪」が適用されています。

暴行罪は、刑法第208条に次のように規定されています。

暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

■犯行の対象■
暴行罪の犯行の対象は、「人」です。
行為者本人を除く「身体」を有する自然人を指します。

■行為■
暴行罪の実行行為は、「暴行」を加えることです。
ここでいう「暴行」とは、人の身体に対し、有形力を行使することをいいます。
例えば、殴る、蹴る、押す、突く、投げ飛ばすといった身体への接触を伴う物理力を行使する場合が典型例です。
暴行罪における「暴行」は、必ずしも傷害の結果を惹起すべきものであることを要しません。
また、暴行は、人の身体に向けられたものであれば足り、必ずしも人の身体に直接接触することを要しません。
例えば、通行人の数歩手前を狙って石を投げつける行為、人の乗っている自動車に石を投げつけて命中させ、ガラスを破損させる行為、狭い四畳半の室内で日本刀の抜き身を振り回す行為、自動車の幅寄せ行為について、「暴行」が認められています。
さらに、音響、光、電気、熱などのエネルギー作用も有形力の行使に含まれます。
人の近辺で太鼓などを連打し、意識朦朧とした気分を与え、脳貧血を起こさせたりする程度に至った場合や、携帯用拡張期を使用して耳元で大声を発する行為も「暴行」に当たるとされています。

■故意■
暴行罪は故意犯ですので、罪を犯す意思がなければ罪は成立しません。
暴行罪の故意は、人の身体に対し有形力を行使することの認識・認容です。

「傷害するに至らなかったときは」とあり、暴行を加えた結果、人を負傷させてしまった場合には、暴行罪ではなく、傷害罪に問われることになります。

酔っぱらって駅員に暴力を振るったようなケースでは、被疑者が事件について記憶がない、あるいは曖昧である場合が少なくありません。
記憶がないから罪は成立しない、という訳ではありません。
駅には防犯カメラが設置してありますので、防犯カメラに事件の一部始終が記録されており、その映像により暴行の事実が客観的に立証されていることがほとんどです。

他方、防犯カメラの映像に事件当時の様子が収められており、物証が捜査機関に提出されている場合には、その後に被疑者が証拠を隠滅しようとしても不可能であるため、罪証隠滅のおそれがないと判断され、逮捕後に釈放される可能性はあります。
上の事例のように、駅員への暴行で逮捕されたケースであっても、早期に弁護士に相談・依頼し、勾留の要件を充たしていないことを客観的な証拠に基づいて検察官や裁判官に主張し、勾留をしないよう働きかけることにより、釈放の可能性を高めることが重要です。

また、被害者である駅員や事件対応に追われ通常業務に支障をきたしてしまった鉄道会社に対して謝罪や被害弁償、示談を成立することができれば、不起訴となる可能性もありますので、早期に弁護士に相談し、対応することをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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強制わいせつ事件で不起訴

2021-07-22

強制わいせつ事件で不起訴を目指す活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県内に住むBさんは、「強制わいせつ事件の容疑者として息子さんを本日逮捕しました。」との連絡を岐阜県加茂警察署から連絡を受けました。
警察からは事件について詳しいことを教えてもらえなかったため、Bさんはどう対応すればよいか分からず、ネットで刑事事件専門弁護士を探し出し、相談の電話を入れました。
Bさんは、どうにか不起訴にならないかと弁護士に相談しています。
(フィクションです。)

強制わいせつ罪とは

強制わいせつ罪は、刑法第176条において、次のように規定されています。

13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

■客体■

強制わいせつ罪の客体は、男女問わず「者」です。

■行為■

強制わいせつ罪の行為は、①13歳以上の者に対して、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をすること、または、②13歳未満の者に対して、わいせつな行為をすること、です。

①暴行・脅迫
強制わいせつ罪が成立するためには、相手方が13歳以上の場合には、暴行・脅迫を用いてわいせつな行為を行うことが必要となります。
ここでいう「暴行・脅迫」は、被害者の反抗を著しく困難にする程度のものであることが必要です。
暴行については、殴打や体を押さえつけることのほか、衣服を引き剥ぎ、裸の写真を撮る行為などがあり、暴行そのものがわいせつ行為である場合でもよいとされています。

②わいせつ行為
被害者に対して行われる「わいせつ行為」とは、いたずらに性欲を興奮または刺激さしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為であるとされています。
具体的には、指を陰部に挿入する行為、被害者の意思に反して乳房や尻などに触れる行為、無理やりキスする行為、少年の肛門に異物を挿入する行為などが過去の裁判でわいせつな行為として認められています。
通常迷惑防止条例違反に当たるような痴漢行為も、下着の中に手を入れて身体に触るなどの行為をした場合には強制わいせつ罪に当たる可能性もあります。

■主観的要件■

強制わいせつ罪は故意犯ですので、罪を犯す意思がなければなりません。
強制わいせつ罪の故意は、①13歳以上の者に対して、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をすること、または、②13歳未満の者に対して、わいせつな行為をすること、についての認識です。
被害者の年齢の認識については、①については、被害者が13歳以上であることの認識は不要とされますが、②については、13歳未満であることの認識が必要とされます。
そのため、13歳以上であると誤信して同意を得てわいせつな行為を行った場合は、事実の錯誤として故意を阻却し、犯罪は成立しません。

強制わいせつ事件で不起訴を目指す

刑事事件について捜査が終了したときに、被疑者を起訴するかどうかを決めるのは検察官です。
検察官は、裁判で有罪を立証するために十分な証拠が揃っていたとしても、犯行態様、犯行動機、犯行の結果などの犯罪自体に関する情状(これを「犯情」といいます。)、および、被疑者の年齢・性格・境遇、被疑者の反省の有無、被害弁償・示談の有無、前科前歴の有無などといった犯情以外の情状(「一般情状」といいます。)を考慮して、今回の事件については起訴しないとする決定をすることがあります。
強制わいせつ罪は、被害者等の告訴がなければ起訴することができない親告罪と呼ばれる犯罪ではないので、理論上、被害者との示談が成立したからといって検察官が起訴することはあります。
しかしながら、被害者との間で示談が成立しており、被害者の許しが得られている場合には、検察官が起訴猶予で不起訴とする可能性は高いでしょう。
そのため、強制わいせつ事件においては、早期に被害者と示談交渉を開始し、示談を成立させることによって不起訴で事件を終了させることを目指すことになります。

通常、示談交渉は弁護士を介して行います。
被害者との接触を防ぐために、捜査機関は被疑者やその家族に被害者の連絡先を教えることはありませんし、被害者の多くは被疑者らと直接連絡をとることを拒むため、被害者やその家族が直接被害者と示談交渉することは容易ではありません。
その点、弁護士であれば、捜査機関を通じて、弁護士限りでの話し合いという形で、被害者から連絡先を教えてもらえることが多く、示談交渉を円滑に行うことが期待できます。

示談が成立し、不起訴となれば、前科が付くことを回避することができます。
強制わいせつ事件でご家族が逮捕されて対応にお困りであれば、早期に刑事事件に精通する弁護士に相談・依頼されるのがよいでしょう。

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住居侵入で逮捕

2021-07-19

住居侵入逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県瑞浪市の住宅に、正当な理由なく侵入したとして、岐阜県多治見警察署は、Aさんを住居侵入の容疑で逮捕しました。
「家に知らない人がいる。」との通報を受けた同警察署の警察官が現場に駆け付け、家内に居たところを現行犯逮捕したということです。
翌日、県外に住むAさんの両親のもとに警察から逮捕の連絡がいきました。
事件を知った両親はすぐに対応してくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)

住居侵入とは

刑法第130条 
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

この条文の前段は「住居侵入罪」について、後段は「不退去罪」について規定しています。

■客体■

住居侵入の客体は、「人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」です。
「人の住居」について、「人の」とあるように、犯人自身がその住居において単独で、あるいは、他の者と共同で生活を営んでいるものではない住居を指します。
共同生活を営んでいた者であっても、それから離脱した場合には、当該住居は「人の」住居となります。
そのため、家出中の子供が父の家に強盗の目的で深夜に侵入する行為は、「人の住居」への侵入と言え、住居侵入罪を構成することになります。(最判昭23・11・25)
「住居」とは、人の起臥寝食に使用される場所のことをいいます。

また、「人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船」について、「人の看守する」というのは、人が事実上管理、支配していることを意味します。
「邸宅」は、人の住居の用に供せられる家屋に附属し、主として住居者の利用に供されるために区画された場所のことで、「建造物」とは、住居や邸宅以外の建造物およびこれに附属する囲繞地のことをいいます。
「艦船」は、軍艦その他の船舶のことです。

■行為■

住居侵入の実行行為は、「正当な理由なく侵入する」ことです。
ここでいう「侵入」とは、居住者や看守者の意思に反して立ち入ることをいいます。
「正当な理由がないのに」というのは、「違法に」という意味であり、正当な理由のある侵入とは、法令により捜索等のため居住者・看守者の意思に反して立ち入る場合のようなことを言うのであって、居住者等の意思に反した侵入を正当視するためには極めて強い理由があることが求められます。
他方、居住者等の同意がある場合は、住居侵入は成立しません。
ただ、同意があっても、それが錯誤に基づく場合には、住居侵入の成立を妨げるものとはなりません。
また、不特定多数の人が出入りするような施設については、通常予想される目的の立ち入りである限りは、居住者等の包括的同意があると考えられ、住居侵入における「侵入」には当たりません。

 

住居侵入で逮捕された場合

住居侵入逮捕された場合、その後に勾留される可能性は高いでしょう。
犯罪の性質上、被害者の居住地等を把握しているため、釈放すれば、被疑者が被害者と接触し、被害届の取下げや供述を変えるよう迫るおそれがあると判断されるからです。
また、住居侵入は手段として行われることが多く、目的が窃盗や性犯罪などであると疑われ、被疑者の身柄を確保して捜査を継続することが必要だと考えらてしまうことも勾留となる可能性が高い一因です。
住居侵入逮捕されると、逮捕後に引き続き勾留となる可能性は高く、そうなれば、逮捕から約13日、勾留の延長が認められれば最大で約23日もの間身柄が拘束されることになります。
身柄拘束の期間が長引けば長引くほど、被疑者が通常の生活に戻る時期は遅れ、懲戒解雇や退学といった不利益を被るおそれは高まります。
ですので、できる限り早期に釈放となるよう動く必要があるのですが、住居侵入事件においては、被害者との示談を成立させることで事件を穏便に解決し早期に釈放となることを目指します。
被害者との示談交渉は、弁護士を介して行うのが一般的です。
罪証隠滅のおそれから、捜査機関が被疑者やその家族に被疑者の連絡先を教えることはないですし、被害者も被疑者から直接連絡を受けることに対して抵抗する傾向にありますので、当事者間での交渉は事実上難しいのです。
そのため、弁護士限りで被害者と連絡をとり、示談交渉を行います。
弁護士は、被害者の気持ちに配慮した上で、冷静な話し合いを行い、示談のメリット・デメリットを伝え、当事者間で納得のいく内容での示談締結を目指します。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
所属弁護士は、数多くの刑事事件・少年事件を取り扱ってきており、被害者との示談交渉にも豊富な経験を有しています。
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刑事事件に強い私選弁護人を選任

2021-07-15

私選弁護人について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県羽島郡笠松町の路上で、見知らぬ女性に対して痴漢をしたとして、会社員のAさんが岐阜県岐阜羽島警察署に逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、事件の詳しいことは分からず不安ですし、会社にも何日ほど休むことになるのかと心配です。
Aさんの妻は、すぐに身柄解放に動いてくれる弁護士を探すことにしました。
(フィクションです。)

弁護人の役割

すべての被疑者・被告人は、判決で有罪と認定されるまでは無罪と推定され、また適正な手続によらなければ刑罰に処せられないことは、刑事手続における大原則です。
被疑者・被告人の権利・利益を実質的に保障するために、弁護人選任権が定められています。
それは、被疑者・被告人は、刑罰権を行使する国家権力と比べると極めて弱い立場にあるため、彼らの権利・利益を保護する専門家が必要だからです。

弁護人は、その選任方法によって、2つに分類されます。

1.国選弁護人

貧困その他の事情により弁護人選任することができない場合に、国の費用で弁護料を支払い、弁護人を裁判所または裁判官が選任する制度を「国選弁護制度」といいます。
この制度により選任された弁護人を「国選弁護人」と呼びます。

(1)被疑者国選弁護制度

刑事事件の被疑者が、貧困等の理由で自ら弁護人選任することができない場合に、被疑者本人の請求または法律の規定により、裁判所、裁判長または裁判官が弁護人選任する制度が「被疑者国選弁護制度」です。

死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件で、勾留状が発せられ、かつ弁護人がいない場合において、精神上の障害その他の事由により弁護人を必要とするかどうかを判断することが困難である疑いがある被疑者について、必要と認めるときに、裁判官が職権で国選弁護人を付すことができます。

被疑者の請求のよる場合は、被疑者段階で弁護料を支払う資力のない被疑者に対して、国の費用で弁護料を支払い、弁護人を付す制度です。

国選弁護人のメリットは、なんといっても弁護料を国が負担してくれる点です。
ただ、国選弁護人の選任は、裁判所または裁判官が選任するため、被疑者・被告人やその家族が自由に選ぶことはできません。
そのため、選任された弁護人は通常民事事件を取り扱っており、刑事事件には不慣れであったりする場合や、被疑者・被告人と相性が合わない場合が生じる可能性があります。
また、国選弁護制度の利用は、勾留状が発せられていることが要件となっているため、勾留が付いた後でしか国選弁護人を選任することができません。
そのため、勾留が付く前に、勾留が付かないようにする活動を国選弁護人にお願いすることはできないのです。

(2)被告人国選弁護人

被告人国選弁護制度も、被疑者国選弁護制度と同様に、被告人の請求による場合と職権による場合とがあります。

職権による場合には、被告人が未成年者、70歳以上、耳が聞こえない、口がきけない、心神喪失・心身耗弱の疑いがある、その他必要と認めるときに裁判所は職権で国選弁護人を選任するものと、①法定刑が死刑または無期もしくは長期3年を超える懲役もしくは禁錮にあたる事件、②公判前整理手続もしくは期日間調整手続に付された事件、③即決裁判手続による事件のような必要的弁護事件では、弁護人が在廷しなかったり、いないときには、裁判長は職権で国選弁護人を選任しなければならない場合とがあります。

被告人の請求による場合は、資力50万円を基準として、国が弁護料を負担して弁護人を付すものです。

2.私選弁護人

被疑者・被告人またはその家族などが依頼して選任する弁護人を「私選弁護人」といいます。
被疑者・被告人は、いつでも弁護人選任することができるため、私選弁護人であれば、勾留に付される前から選任することも可能です。
そのため、身体拘束される可能性が見込まれる場合には、私選弁護人は、逮捕される前に警察に働きかけて逮捕を回避したり、逮捕後には勾留が決定するまでに、検察官に勾留請求しないよう、また裁判官に対しては勾留を却下するよう求め、勾留を回避する活動を行うことができます。
また、被疑者・被告人らが自由に弁護人選任することができるため、刑事事件に強い弁護士や被告人・被疑者らと合う信頼できる弁護士を選ぶこともできます。

国選弁護人も私選弁護人も、被疑者・被告人の権利・利益を擁護する役割を担う点に違いはありません。
ただ、選任できるタイミングが違ったり、刑事事件に精通しているかどうかといった点で異なる場合もあります。
ご家族が刑事事件で逮捕されてしまい、対応にお困りの方、弁護人をお探しの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。

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不同意堕胎で逮捕

2021-07-12

不同意堕胎罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
交際相手の女性に中絶薬を飲ませて流産させようとしたとして、岐阜県大垣警察署は、Aさんを不同意堕胎未遂の容疑で逮捕しました。
Aさんは容疑を認めており、被害女性から妊娠したことを聞いたが、責任と取りたくないと思い、ネットで外国製の中絶薬を購入し、その薬を被害女性に飲ませました。
逮捕の連絡を聞いたAさんの両親は、事件の詳細も分からず不安になり、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)

不同意堕胎罪とは

刑法第29章は、堕胎の罪について規定しており、「堕胎罪」(第212条)、「同意堕胎及び同致死傷」(第213条)、業務上堕胎及び同致死傷(第214条)、そして、「不同意堕胎」(第215条)、「不同意堕胎致死傷」(第216条)が定められています。

今回は、上の事例で問題となっている「不同意堕胎罪」について説明します。

第215条 
1 女子の嘱託を受けないで、又はその承諾を得ないで堕胎させた者は、6月以上7年以下の懲役に処する。
2 前項の罪の未遂は、罰する。

不同意堕胎罪は、妊婦の嘱託や同意がなく行われた堕胎を処罰するもので、妊婦の意思に反して妊婦の身体を危険にさらした分、同意堕胎罪などの他の堕胎の罪よりも違法性が高い行為であることから、堕胎の罪の中でも最も重い法定刑が規定されています。

不同意堕胎罪の成立には、妊婦の依頼を受けずに、あるいは妊婦の承諾なしに、堕胎させることが必要となりますが、欺罔による錯誤に基づいて同意が得られた場合には、同委の有効性が争われます。
裁判例には、被告人の欺罔により、堕胎しなければ離別されるが、子供をおろせば必ず入籍してもらえると信じた妊婦がした堕胎の承諾は、任意かつ真摯に出たものではないとして、不同意堕胎罪の成立を認めた例があります。(仙台高判昭36・10・24)

条文は、「堕胎させた」という表現であり、妊婦に対して自ら堕胎措置を実施する場合を意味します。
「堕胎」とは、自然の分娩期に先立って人為的に胎児を母体から分離・排出することをいい、胎児が死亡したか否かは問いません。(大判明44・12・8)
また、母胎内で胎児を殺すことも「堕胎」に当たります。

不同意堕胎罪は、未遂も処罰されます。
そのため、堕胎行為に着手したけれども、堕胎させるに至らなかった場合や、堕胎行為と流産との因果関係が認められない場合には、不同意堕胎未遂罪が成立する可能性があります。

不同意堕胎罪は、法定刑も懲役刑のみと刑法犯の中でも重い罪と言えるでしょう。
母親の同意を得ないままに、胎児の命を奪う上に、母親の身体をも危険にさらす大変悪質な行為であり、初犯であっても、起訴される可能性は高いでしょう。
しかしながら、被害女性への謝罪・被害弁償、示談成立など、被告人に有利な事情を収集・提示するなどして、執行猶予付き判決が言い渡される可能性もあります。
実刑と執行猶予とでは、その後の被告人の生活も大きく変わってきますので、できる限り早期に弁護士に相談・依頼されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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自転車のあおり運転で逮捕

2021-07-08

自転車あおり運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県郡上市内の片側2車線の市道を自転車で走行中、中央線をまたぐように繰り返し蛇行し、対向車線の乗用車の走行を妨げたとして、岐阜県郡上警察署は、市内に住むAさんを道路交通法違反の疑いで逮捕しました。
Aさんは、容疑を認めており、「車の運転者の驚く顔を見るのが楽しかった。」と供述しています。
逮捕の連絡を受けたAさんの家族は、逮捕の知らせに驚くとともに、今後どうなるのか不安でならず、刑事事件に強い弁護士に相談しようとしています。
(フィクションです。)

自転車のあおり運転

令和2年6月10日に公布された道路交通法の一部を改正する法律により、妨害運転(いわゆる「あおり運転」に当たる行為)に対する罰則が創設されました。

道路交通法第117条の2の2第11号で妨害運転に対する罰則を設けており、法定刑は3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

他の車両等の通行を妨害する目的で、次のいずれかに掲げる行為であつて、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者
イ 第17条(通行区分)第4項の規定の違反となるような行為
ロ 第24条(急ブレーキの禁止)の規定に違反する行為
ハ 第26条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為
ニ 第26条の2(進路の変更の禁止)第2項の規定の違反となるような行為
ホ 第28条(追越しの方法)第1項又は第4項の規定の違反となるような行為
ヘ 第52条(車両等の灯火)第2項の規定に違反する行為
ト 第54条(警音器の使用等)第2項の規定に違反する行為
チ 第70条(安全運転の義務)の規定に違反する行為
リ 第75条の4(最低速度)の規定の違反となるような行為
ヌ 第75条の8(停車及び駐車の禁止)第1項の規定の違反となるような行為

おあり運転に典型例である、極端な幅寄せや急な進路変更、不必要な継続的ハイビームやクラクションといった行為は、妨害運転の対象行為に当たります。
この罪の成立には、あおり運転によって相手方が事故を実際に起こしたことまで必要としておらず、行為者において、相手車両の通行を妨害する意図をもって、上の10類型のいずれかに該当する行為を、相手方に事故を起こすなどの危険を生じさせる可能性のある方法で行っていれば足ります。

妨害運転は、自動車だけでなく自転車によるものにも適用されます。
最近でも、自転車が急に反対車線に飛び出して対向車の通行を妨害した事件がニュースでも大きく取り沙汰されました。
自転車あおり運転も、一歩間違えれば、死亡事故にも発展しかねない非常に危険な行為です。

また、法律で飲酒運転が禁止されているのは周知のところですが、飲酒して自転車を運転する行為もまた飲酒運転に当たることを知っていらっしゃる方はそう多くないのではないでしょうか。

道路交通法第65条第1項は、「何人も酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と規定しています。
「車両」は、自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスのことで、「軽車両」には自転車が含まれます。
つまり、酒気を帯びて(身体の中にアルコールを保有して)自転車を運転することは法律で禁止されているのです。
ただ、すべての自転車についての飲酒運転が処罰の対象かというと、そうではなく、酒気を帯びて自転車を運転した者であり、その運転をした場合において酒に酔った状態(アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態)にあった場合には、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科される可能性があります。
酒に酔った状態の判断は、呼気検査等の数値だけでなく、運転者の様子、例えば、呂律が回っていなかったり、まっすぐ歩くことができないといった点を検討して行われます。

自転車であっても、悪質なあおり運転に対しては厳しい処罰が科せられる可能性もありますので、あおり運転で検挙され対応にお困りであれば、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件も含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りであれば、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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交通事件:危険運転

2021-07-05

危険運転について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。

~事例~
岐阜県加茂郡坂祝町で、乗用車とトラックが衝突し、乗用車の同乗者が死亡する事故が起きました。
ドライブレコーダーの映像から、乗用車が法定速度を大幅に超えて走行しており、反対車線に進入してトラックと正面衝突したことが分かりました。
岐阜県加茂警察署は、乗用車の運転手を自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)の疑いで逮捕しました。
(フィクションです。)

危険運転致死傷罪

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転処罰法」といいます。)が、平成25年に成立し、翌年5月20日から施行されました。
自動車運転処罰法は、その名の通り、自動車の運転によって人を死傷させる行為等に対する刑罰を定めています。

自動車運転処罰法は、その第2条及び第3条において危険運転致死傷罪について規定しています。
ここでは、2条について概観します。

危険運転致死傷罪(2条)

次の8つの行為行ったことにより、人を負傷させた者は、15年以下の懲役に、人を死亡させた者は1年以上の有期懲役に処することを規定しています。

①アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させる行為。
「正常な運転が困難な状態」は、道路及び交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態にあることを意味します。
「困難な心身の状態」であることが必要なので、正常な運転ができないおそれ(可能性)がある状態とは異なり、泥酔状態で、前方の注視が困難になったり、ハンドルやブレーキ等の操作が思ったように行うことが現実に困難な状態にあることが必要となります。
そのため、故意についても、運転者において、正常な運転が困難であることの法定評価を認識していることまでは必要となりませんが、道路や交通の状態、自動車の性能等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態であることの認識が求められます。

②その進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為。
「進行を制御することが困難な高速度」とは、速度が速すぎて、道路状況に応じて自動車の進行を制御し、進路に沿って進行することが困難となるような速度のことをいいます。
この罪が成立するためには、運転者において、進行を制御することが困難な高速度で走行していたという認識が必要となります。

③その進行を制御する技能を有しないで自動車を走行させる行為
「進行を制御する技能を有しない」とは、自動車を進路に沿って走行させるための基本的な操作を行う技量を欠くことを意味します。
進行を制御する技能を有しないとされるためには、運転免許を取得していないことが前提となりますが、免許を取得していな者=進行を制御する技能を有しないというわけではなく、事故の態様、事故前の運転状況、運転経験の有無、程度等を総合的に検討した上で、進行を制御する技能を有しないかどうかが判断されます。
運転者において、進行を制御する技能を有しないことの認識が必要となりますが、技能の未熟さを認識している事実、無免許であることや運転経験がほとんどないことの認識があれば足りるとされています。

④人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
この罪は目的犯であるため、運転者において特定の相手方に対する通行を妨害する目的が必要となります。
「重大な交通の危険を生じさせる速度」とは、相手方と衝突すれば大きな事故を生じさせると一般的に認められる速度、あるいはそのような大きな事故になることを回避することが困難であると一般的に認められる速度のことです。

⑤車の通行を妨害する目的で、走行中の車(重大な交通の危険を生じさせる速度で走行中のものに限る。)の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転する行為
④は、加害車両が「著しく接近」したときに、「重大な交通の危険を生じさせる速度」で走行していることが要件となっていますが、⑤は、被害車両が「重大な交通の危険を生じさせる速度」で走行しているときは、通行妨害目的で、被害車両の前方で停止するなどして、被害車両に著しく接近することになるような方法で自動車を運転することを対象としています。

⑥高速自動車国道又は自動車専用道路において、自動車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の前方で停止し、その他これに著しく接近することとなる方法で自動車を運転することにより、走行中の自動車を運転することにより、走行中野自動車に停止又は徐行をさせる行為
この罪は、令和2年改正処罰法により新設されました。
高速自動車国道等における固有の危険性に着目して、高速自動車国道等においての適用が前提とされています。

⑦赤信号又はこれに相当する信号を殊更に無視、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
「殊更に無視」は、赤信号に従わない行為のうち、赤信号におよそ従う意思のないもので、赤信号であることを認識していること、止まろうと思えば止まれること、それでもあえて進行することがその要件とされています。

⑧通行禁止道路を進行し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為
この罪が成立するには、他の危険運転致死傷罪と同様に、危険運転行為の故意があることが必要となります。
つまり、交通禁止道路を通行していること、そして、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転していることの認識です。

危険運転致死傷罪の成立には、上の8つの危険運転行為のうちいずれかと問題の事故との間に因果関係がなければなりません。

危険運転致死は、裁判員裁判対象事件であり、この罪で起訴されれば、通常の刑事裁判ではなく、裁判員と裁判官によって審理されることになります。
裁判員裁判では、通常の刑事裁判とは異なる手続がとられますので、裁判員裁判にも精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。

弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
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