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殺意を否認する場合
殺意について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県羽島郡笠松町に住むAさんは、同居の親族を殺害したとして、殺人の容疑で岐阜県岐阜羽島警察署に逮捕されました。
Aさんは、「殺すつもりはなかった。包丁を向けたら相手がビビると思って向けただけ。」と殺意を否認しています。
接見にやってきた弁護士にも同じように殺意はなかったと話しています。
(フィクションです。)
殺意について
殺人罪は、「人を殺した」ことで問われる罪ですが、殺人罪が成立するためには、人の死という結果をもってのみではなく、「人を殺す」という意思に基づいて殺害行為を行い、よって人を死亡させた場合でなければなりません。
つまり、殺人罪においては、殺害行為という客観的構成要件の他に、その主観的構成要件として、殺害行為を認識・予見し、かつ認容するという故意が必要となります。
罪を犯す意思である故意、殺人罪においては「殺意」が認められなければ殺人罪は成立しません。
故意について、客体の認識は、単に「人」であることの認識で足り、行為の認識は、殺人の手段となる行為により、死の結果が発生可能であることを認識していればよいとされます。
故意は未必的なものでも、条件付きのものでも構いません。
確定的殺意と未必的殺意のいづれであっても殺人罪は成立しますが、その量刑には違いが出てくるため、その区別についての認定は重要な問題となります。
殺人事件において、殺意を否認するケースは少なくありません。
通常、殺意の認定に当たっては、まず①行為態様が考慮されます。
具体的には、被害者の身体のどの部位に、どの程度の創傷を、どのような凶器を使用して、どのような方法で負わせたのか、という点を明らかにして、殺意の有無を検討します。
被害者の身体のどの部位については、東部、顔面、頸部、胸部、腹部は体の枢要部であるため、それらの部位に対する攻撃は、一般的に被害者に対して死の結果をもたらすおそれのある行為として殺意を認定する上での重要な間接事実とされます。
また、傷が深ければ深いほど殺意が認定される方向に働きますし、傷の箇所が多ければ多いほど殺意が認められる方向に働きます。
凶器が刃物や拳銃などであって場合は、その人体への危険性から、人を殺害するに足りる凶器と認められますが、刃物についてはその刃体や刃渡りの長さが短い場合には、創傷の部位や程度などと併せて検討されます。
本来殺害に用いられるための凶器でない金属バットなども、創傷の部位や程度、その他の要素と併せて殺意の有無について検討されます。
①行為態様の他にも、②犯行に及ぶ動機の有無、③犯行に至る経緯の中での言動、④犯行時の言動、⑤犯行後の言動等をも考慮し、そこでみられる間接事実から、殺意を推認させるものがあるかどうかが検討されます。
以上の要素を総合的に考慮して、殺意の有無について判断されます。
そのため、殺意を否認している場合には、それらの要素から殺意が認められないことを客観的証拠に基づいて立証する必要があります。
殺意が認められない場合には、殺人罪ではなく傷害致死罪が成立するにとどまります。
どちらの罪が成立するかで、有罪となった場合に科される刑罰も変わってきますので、殺意を否認する場合には、早期に弁護士に相談されることをお勧めします。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件を起こし対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
盗撮事件における弁護活動
盗撮事件における弁護活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県大垣市に住むBさんは、夫のAさんがいつも帰宅する時間になっても家に帰ってこず、携帯も繋がらないため、何かあったのではないかと心配になり、警察署に相談の電話をしました。
すると、Aさんが盗撮事件で逮捕され、岐阜県大垣警察署にいることが分かりました。
すぐにAさんと面会したいと申し出ましたが、警察からはすぐにはできないと言われ、Bさんは途方に暮れています。
(フィクションです。)
Aさんは、盗撮事件を起こし逮捕されてしまいました。
Aさんの家族は、いつまでたっても帰宅しないAさんに何かあったのではと心配し、警察署に相談の連絡をしたところ、Aさんが逮捕されて警察署にいることが分かりました。
しかし、Aさんの家族は、盗撮で捕まったとした聞かされておらず、すぐにAさんと面会することもできないと言われ、途方に暮れています。
このような事態において、弁護人である弁護士は、Aさんの早期釈放を目指しつつ、被害者の方への謝罪及び被害弁償、そして示談に向けた活動を行い、最終的には不起訴処分の獲得へと動きます。
1.早期釈放に向けて
盗撮事件で逮捕されたAさんは、逮捕により、職場や家庭等の社会から隔絶された状況に置かれることになります。
社会から隔絶された環境での取調べで、Aさんの動揺や不安は想像を絶するものであり、捜査機関から、認めれば罰金を支払って出られるなどといった誘導にのり自己に不利な供述をする危険性もあります。
そのような危険を回避するためにも、弁護士との接見は重要です。
接見において、弁護士はAさんから事件について確認し、どのような取調べがされているかを聞いた上で、取調べ対応についてのアドバイスを行います。
弁護人との接見は、法律家によるアドバイスを受けたり、自身の話を聞いてくれることで、Aさんを精神的に支援する重要な意味があります。
逮捕後、勾留となれば逮捕から約13日もの間Aさんの身柄が拘束されます。
勾留延長が決定すれば、最大で23日の身体拘束となります。
その間は、会社や学校に行くことができませんので、懲戒解雇や退学といった不利益が生じかねません。
そこで、弁護人は、Aさんの早期釈放に向けて身柄解放活動を行います。
性犯罪事件の中でも痴漢事件や盗撮事件の場合、被疑者が住所地に定住し、定職についており、身元引受人が確保されている場合などは、裁判所において勾留決定を出さない例も増えています。
弁護人は、検察官に対して勾留請求をしないよう要請し、仮に検察官によって勾留請求がなされたとしても、裁判官に対して、被疑者が逃亡のおそれや罪証隠滅のおそれのないことの具体的事情を説明し、勾留請求を却下するよう働きかけます。
Aさんの場合、被害者とは初対面であり、Aさんから接触する可能性は低いこと、仕事に就いており、家族の監督も期待できることなどの事情があり、これらの事情から勾留の要件は充たさない旨を主張することになるでしょう。
2.被害者対応
盗撮事件のように被害者が存在する事件では、被疑者が被疑事実を認めている場合は、被害者との示談交渉が重要な弁護活動のひとつとなります。
示談とは、加害者が被害者に対して被害弁償金を支払い、これを受けて被害者が被害届の取下げを行うなど、今回の事件は当事者間では解決したとする合意のことをいいます。
親告罪と呼ばれる被害者等の告訴がなければ公訴を提起することができない犯罪の場合、示談が成立し告訴が取消されれば、被疑者は公判請求されずに不起訴処分となります。
盗撮は、迷惑防止条例違反に当たりますが、この罪は親告罪ではないので、示談が成立したからといって必ずしも不起訴処分となるわけではありません。
しかし、一般的に、盗撮事件においては、示談成立により不起訴となる可能性は高いため、示談交渉は弁護人としての重要な弁護活動と言えます。
このような活動は、刑事事件に精通する弁護士に任せるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、盗撮事件をはじめ刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が盗撮事件で逮捕されて対応にお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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大麻の共同所持で不起訴を狙う
大麻の共同所持で逮捕され不起訴を狙う場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
会社員のAさんは、岐阜県下呂市のマンションで交際相手のBさんと同棲していました。
ある日、岐阜県下呂警察署が自宅に訪れ、Bさんに対する大麻所持の件で家宅捜索が行われました。
部屋から大麻が見つかったため、Aさんも大麻の共同所持の容疑で逮捕されてしまいました。
Aさんは、Bさんが以前外出先で大麻を使用していたことは知っていますが、大麻を家に置いていたことは知りませんでした。
Aさんの逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、すぐに接見に行ってくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)
捜査機関が、薬物乱用者や薬物密売人の住居を家宅捜索し、薬物が発見した場合、そこに同居している配偶者や交際相手なども発見した薬物についての共同所持の疑いで逮捕されるケースは少なくありません。
大麻の所持について
まずは、大麻所持罪とはどのような罪であるのか、について説明します。
大麻取締法は、「大麻取扱者でなければ大麻を所持し、栽培し、譲り受け、譲り渡し、又は研究のため使用してはならない。」(同法第3条1項)とし、「大麻を、みだりに、所持し、譲り受け、又は譲り渡した者は、5年以下の懲役に処する。」(同法第24条の2第1項)とし、「営利の目的で前項の罪を犯した者は、7年以下の懲役に処し、又は情状により7年以下の懲役及び200万円以下の罰金に処する。」(同条第2項)の罰則が設けられています。
罰則の対象となる大麻の「所持」とは、「人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為」のことをいい、所有権又は処分権を有していることまでも必要とされません。
所持の形態は、自ら保管・携帯している場合だけでなく、他人に保管させる場合、他人に依頼されて保管する場合、運搬する場合、隠匿する場合など、社会通念上実力支配関係にあると認められるすべての場合が「所持」に当たるとされています。
大麻所持罪は、故意犯ですので、「大麻を所持する」ことの認識・認容がなければ大麻所持罪は成立しません。
「大麻」についての認識は、その物が依存性のある薬理作用をもつ有害な薬物であることを未必的にであれ認識していればよいとされています。
つまり、ある者を「これは大麻である。」と確信している場合のみならず、「これは何らかの規制薬物かもしれない。」と思っていた場合であっても、大麻であることの認識・認容はあったと判断されます。
覚せい剤の所持罪についてではありますが、所持の故意について、
「覚せい剤取締法14条にいわゆる所持とは、人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為をいう(昭和30年(あ)2311号同年12月21日大法廷判決、集9巻14号2946頁)というのは必ずしも覚せい剤を物理的に把持することは必要でなく、その存在を認識してこれを管理しうる状態にあるをもつて足りると解すべきである。」(最判昭31・5・25)
との判例があります。
つまり、薬物の所持とは、①その存在を認識していること、②管理し処分し得る状態にあること、が同時に満たされる場合に成り立つとされています。
生活の場を共有している夫婦やカップルの場合であっても、2人ともが薬物の存在を認識しており、かつ、2人ともが薬物を管理し処分し得る状態にあったことが認められる場合にのみ共同所持が成立するのであって、1人は薬物の存在を認識していなかった、あるいは、認識していても薬物を管理し処分し得る状態にはなかったであれば、その者については薬物の所持は成立しないことになります。
Aさんのように、大麻が自宅に置いてあったこと自体を知らなかった場合には、大麻の共同所持を争い、取調官の誘導に乗り自己に不利な供述がとられないように留意しながら取調べに対応する必要があります。
そのため、取調べでどのように対応すべきかについて、弁護士から適切なアドバイスを受けることは重要です。
大麻の共同所持が疑われており、犯罪事実を否定する場合には、できる限り早期に弁護士に相談し、不起訴を目指すのがよいでしょう。
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無免許運転で検挙
無免許運転で検挙された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、岐阜県加茂郡八百津町を走行中、岐阜県加茂警察署に運転免許証に提示を求められました。
Aさんは、酒気帯び運転で免許停止となっており、その停止期間中に運転していたため、道路交通法違反(無免許運転)の疑いで現行犯逮捕されました。
逮捕の連絡を受けたAさんの妻は、2度目の逮捕に驚きましたが、今度はどのような処分となるのか心配でたまりません。
(フィクションです。)
無免許運転
道路交通法は、無免許運転を禁止しています。
ここでいう「無免許運転」とは、公安委員会の運転免許を受けないで自動車又は原動機付自転車を運転することです。
自動車等を運転する者は、公安委員会の運転免許を受けなければなりません。
これまで一度も運転免許の交付を受けたことがない場合だけでなく、免許の効力が停止されている者も運転免許を受けていない者に含まれます。
例えば、有効期限の過ぎた免許で運転する場合、運転免許の取り消しを受けた後に運転する場合、運転免許の停止・仮停止期間中に運転する場合も、道路交通法において禁止されている無免許運転に当たります。
無免許運転の禁止義務に違反した場合、有罪となれば、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金の範囲で刑が科されることになります。
無免許運転に関しては、自動車等の運転者だけでなく、自動車等の提供、自動車等の同乗についても禁止されています。
道路交通法は、公安委員会の運転免許を受けないで自動車等を運転することとなるおそれがある者に、自動車等を提供することを禁止しています。
この違反の成立には、自動車等の提供者は、提供を受ける者が未必的(必ずしもそうではないかもしれないが、~かもしれない、と思うこと)にせよ無免許運転の禁止に違反して自動車等を運転することとなるおそれがあると認識していることが必要となります。
自動車等提供の禁止に違反した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金となる可能性があります。
さらに、道路交通法は、自動車等の運転者が無免許であることを知りながら、運転者に対して、自動車等を運転して自己を運送することを要求又は依頼して、当該運転者が運転する自動車等に同乗することも禁止しています。
違反した場合には、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金が科される可能性があります。
このように、無免許運転をした場合には、刑事罰が科される可能性があります。
無免許運転は、交通反則通告制度の適用対象ではないため、反則金を納付することによって、刑事処分を受けることなく処理することはできません。
無免許運転は、犯罪であり、運転者は被疑者・被告人として刑事手続に付され、事件が処理されることになります。
無免許運転が捜査機関に発覚した場合、逮捕されることがあります。
しかし、人身事故を起こしていない場合や、その場から逃亡を図ろうとせず真摯に取調べに対応している場合、家族などの身元引受が期待できる場合などであれば、勾留されず、身柄を拘束しないまま、引き続き捜査が進められるケースが多いです。
ですので、勾留が決定する前に、勾留の要件を充たしていないことを検察官や裁判官に説き、勾留とならないよう働きかけることで、勾留を回避し早期釈放となる可能性を高めることができます。
在宅事件となった場合でも、事件は終了したわけではありませんから、早い段階に釈放された場合でも、弁護士に相談・依頼し、できる限り寛大な処分となるよう情状面を考慮した弁護活動を受けることも重要でしょう。
無免許運転で検挙された場合であっても、初犯である、同種の前科前歴がある、無免許運転で事故を起こした等、事案によって見込まれる処分や弁護活動内容も変わってきますので、一度交通事件に詳しい弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無免許運転で検挙され対応にお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
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少年事件の検察官送致(逆送)決定
少年事件の検察官送致(逆送)決定について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県各務原警察署は、強盗致傷の容疑で、大学生のAくん(18歳)を逮捕しました。
Aくんには、他に同種の余罪もあり、Aくんの両親は、「被害者の怪我の程度も重く、それなりの重い処分が見込まれる。」と警察から言われています。
Aくんの両親がネットで調べたところ、検察官送致という処分となれば成人の刑事手続に付されて刑事処分が科されることを知り、A君もその可能性があるのではないかと思い、少年事件に詳しい弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
今年の5月21日に、事件を起こした18歳、19歳の厳罰化を図る少年法改正案が、参議院本会議で可決・成立しました。
改正少年法の内容として、18歳と19歳の少年を「特定少年」と位置づけ、家庭裁判所から検察官に逆送する事件の対象を拡大する点が注目されています。
今回は、少年事件の終局決定の一つである「検察官送致」(逆送)決定について説明します。
検察官送致(逆送)
少年事件は、原則、すべての事件が家庭裁判所に送られ、調査、審判を経て、家庭裁判所は処分を決定します。
家庭裁判所が行う処分には、中間決定と終局決定とがあります。
中間決定は、終局決定をする前の中間的な処分であり、試験観察があります。
終局決定には、次の7種類あります。
①審判不開始
②不処分
③保護観察
④児童自立支援施設・児童養護施設送致
⑤少年院送致
⑥検察官送致
⑦都道府県知事・児童相談所長送致
一定の要件に該当する場合には、終局決定として、⑥検察官送致がなされることがあります。
その要件とは、
(1)審判時、少年が20歳以上であることが判明した場合(年齢超過)
(2)刑事処分が相当であると認められる場合
(3)故意の犯罪行為により、被害者を死亡させた罪の事件であって、その罪を犯したときに少年が16歳以上だった場合(原則逆送)
です。
検察官送致が決定すると、少年は、成人の刑事手続に付されることになります。
(1)年齢超過
事件が家庭裁判所に送致され、調査・審判を行っている段階で、少年の年齢が20歳を超えていることが判明した場合に、成人の刑事事件の手続に戻すために行われるものです。
少年の年齢が20歳に達するまでに審判期日が設定されるか微妙なケースでは、付添人である弁護士は、検察官に早期に事件を家庭裁判所に送致するよう求めたり、家庭裁判所に対して20歳になるまでに審判を行うよう求めるなど、年齢超過による逆送を防ぐよう関係機関に働きかけます。
(2)刑事処分相当
家庭裁判所は、死刑、懲役、禁錮にあたる罪の事件について調査をした結果、その罪質及び情状に照らして刑事処分が相当であると認めるときは、事件を検察官に送致しなければなりません。
(3)原則逆送
家庭裁判所は、故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件であり、その罪を犯すとき16歳以上の少年に係るものについては、事件を検察官に送致する決定をしなければなりません。
ただし、この場合であっても、調査の結果、犯行の動機及び態様、犯行後の情況、少年の性格、年齢、行状及び環境その他の事情を考慮して、刑事処分以外の措置を相当を認めるときは、検察官送致以外の処分を決定することができます。
刑事処分相当で逆送となる可能性がある事件や、原則逆送事件においては、弁護士は、早い段階から環境調整を行い、裁判官や調査官との面談・協議を行い、刑事処分ではなく保護処分が相当であると裁判所に認められるよう働きかけます。
検察官送致決定で刑事事件の手続に付された場合でも、公判での審理の結果、少年について刑事処分ではなく保護処分が相当であるときには、事件が再び家庭裁判所に送致され、審判が開かれることがあります。
現行法では、18歳、19歳であっても、上の要件に該当しなければ、保護処分などの検察官送致以外が決定されることになっています。
保護処分であれば、少年に前科が付くことはありません。
一方、刑事処分であっても、略式手続により略式命令が言い渡される場合のように、前科は付くけれども迅速・簡易な手続で事件が処理されることにメリットがあると言えるケースもあるでしょう。
事案によって、どの処分の獲得を目指していかなる活動をするのかは異なりますので、お子様が事件を起こして対応にお困りの方は、できる限り早期に弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
刑事事件・少年事件の対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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育児放棄で保護責任者遺棄致死
育児放棄で保護責任者遺棄致死に問われるケースについて、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県瑞穂市のマンションに幼児(2歳)を置去りにし、長期間家を空けた結果、幼児が飢餓と脱水で死亡した事件で、幼児の母親のAさんが岐阜県北方警察署に保護責任者遺棄致死の容疑で逮捕されました。
Aさんは、大まか容疑を認めており、交際相手と旅行にいくため幼児を置去りにしたまま家を1週間以上空けていたと話しています。
(フィクションです。)
育児放棄
幼い児童への殴る蹴るなどの暴行により児童を死なせてしまうという痛ましい事件が近年世間を騒がせています。
児童虐待については、児童虐待の防止等に関する法律第2条において、以下のように定義しています。
保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の物で、児童を現に監護するものをいう。)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。)について行う次に掲げる行為をいう。
1.児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
2.児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
3.児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前2号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他保護者としての監護を著しく怠ること。
4.児童に対する著しい暴言又は拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
上の3号のように、暴力等を振るわないものの子に対して必要な育児をしない育児放棄(ネグレクト)の類型も少なからず存在しており、結果として子供が亡くなってしまうケースもあります。
育児放棄の場合、必要な育児をしないという不作為が問題となり、保護責任者遺棄致死罪が成立する可能性があります。
保護責任者遺棄致死罪
保護責任者遺棄致死罪は、保護責任者遺棄罪の結果、人を死亡させた場合に成立する罪です。
保護責任者遺棄罪
老年者、幼年者、身体障害者又は病者を保護する責任のある者がこれらの者を遺棄し、又はその生存に必要な保護をしなかったときは、3月以上5年以下の懲役に処する。
■主体■
保護責任者遺棄罪の主体は、「保護する責任のある者」(保護責任者)です。
通説及び判例は、保護責任の根拠を、法令、契約、事務管理、習慣・条理に求めています。
法令に基づく保護責任は、親権者の監護義務、親族の扶養義務など私法上の保護義務や、警察官の保護義務など公務上の保護義務があります。
契約に基づく保護責任は、介護契約の場合などがあります。
事務管理というのは、義務なくして他人のために事務の管理を始めた場合をいうのであって、義務なく病人を引き取り同居させた場合などが事務管理に基づく保護責任を発生させます。
そして、習慣・条理に基づく保護義務は、物の道理から導かれる義務で、判例では、ホテルの一室において13歳の少女に覚せい剤を注射して錯乱状態に陥れたが、救護措置をとらずに立ち去り死亡させた事例において、保護責任者遺棄致死罪が認められています。
■客体■
保護責任者遺棄罪の客体は、「老年者、幼年者、身体障がい者又は病者」であり、扶助を要する者です。
■行為■
保護責任者遺棄罪の行為は、「遺棄又は不保護」です。
「遺棄」とは、要扶助者をより危険な場所に移転させることや、要扶助者を危険な場所に置いたまま立ち去る行為を指します。
「不保護」とは、場所的隔離を伴わずに要扶助者の生存に必要な保護をしないことをいいます。
育児放棄のケースにおいて、遺棄が認められたものに、14歳から2歳の子供4人を自宅に置いて6カ月間にわたり家出をし、その間、二度ほど自宅に戻って食事の世話をしたにすぎず、子供を重度の栄養失調症にさせるなどした事例(東京地判昭63.10.26)があります。
また、不保護とされた事例としては、身体が極度に衰弱して日常の動作が不自由となった実子を医師の専門的施療等を受けさせることなく放置した事例(最決昭38・5・30)があります。
■故意■
本罪の故意は、被遺棄者が老年者、幼年者、身体障がい者又は病者であり、扶助を要することの認識、遺棄又は不保護を行うことの認識、そして、自ら保護責任を基礎づける事実の認識が必要となります。
以上が保護責任者遺棄罪の構成要件であり、保護責任者遺棄の罪を犯した結果、人を死亡させた場合には、保護責任者遺棄致死罪が成立し、傷害罪と比較して重い刑により処断されます。
保護責任者遺棄致死の場合、傷害致死罪の法定刑(3年以上の有期懲役)と、基本犯である保護責任者遺棄罪の法定刑(3月以上5年以下の懲役)とを比較して、上限、下限とも重い方に従うことになります。
つまり、3年以上20年以下の懲役の範囲内で刑罰が決められます。
法定刑もかなり重く、有罪となれば実刑となる可能性は高いでしょう。
事案によって、殺人罪の成立が争われたり、遺棄・不保護と死の因果関係の認定が微妙なもの、事実に争いはなくとも情状を酌量すべき事情がある場合など、さまざまですので、どのように対応すべきかは刑事事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。
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淫行条例違反~年齢の認識~
淫行条例違反事件における年齢の認識について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県垂井警察署は、高校1年生(15歳)の女子生徒と性交したとして、岐阜県青少年健全育成条例違反の疑いで、会社員のAさん(25歳)を逮捕しました。
Aさんと女子生徒は出会い系アプリを通じて知り合いました。
Aさんは、「相手が18歳未満だとは知らなかった。」と年齢の認識について否認しています。
(フィクションです。)
淫行条例違反とは
各都道府県では、18歳未満の者とのみだらな性交や性交類似行為を行うことを禁止する内容の条例が制定されています。
岐阜県においても、「岐阜県青少年健全育成条例」の第23条で、青少年(18歳未満の者)に対して、みだらな性行為・わいせつな行為をすることを禁止しており、それに違反した場合の罰則は、2年以下の懲役又は100万円以下の罰金となっています。
青少年とのみだらな性交等を禁止した条項を、淫行条例と呼びます。
ここで禁止されているのは、18歳未満の者に対する性行為一般ではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交等や、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交等です。
そのため、交際中の場合、少なくとも知り合って相当期間は性交等がない状況が続いた上、性交等に至った場合は、交友関係等の検討の上、みだらな性行為・わいせつな行為には当たらないと判断されることがあります。
逆に言えば、出会い系サイトやSNSで知り合い、初めて会ったその日に性交等をしたということであれば、みだらな性交等にあたり、淫行条例違反となる可能性があります。
年齢の認識
淫行条例違反は、故意犯ですので、罪を犯す意思がなければ犯罪は成立しません。
淫行条例違反における故意は、青少年(18歳未満の者)とみだらな性行為又はわいせつな行為をすることの認識・認容です。
淫行条例違反事件において、よく主張されるのが、「18歳未満だとは知らなかった。」という相手方の年齢の認識がないことの弁解です。
さきほども申し上げましたが、淫行条例違反は故意犯ですので、相手方を18歳未満の者だと知らなかった場合には、故意はなく犯罪は成立しません。
故意には、「この人は18歳未満に違いない。」という確信的故意に限るものではなく、「もしかしたら、この人は18歳未満かもしれない。だけど、まあいいか。」といった意思、これを「未必の故意」と言いますが、この場合も故意が認められることになります。
ですので、相手がはっきりと年齢を言わなかった場合でも、実際に会ったときの相手方の容姿や話し方、話の内容(どこどこの中学校・高校に通っている、といったような話をした場合)などから、18歳未満であること、もしくは18歳未満であるかもしれないと思っていたのであれば、故意が認められる可能性があるのです。
淫行条例違反で故意を否認するのであれば、一般人をして相手方が18歳以上だと信じるであろう事情があったこと、例えば、相手から提示された身分証明書の生年月日が偽造されていたため18歳以上だと信じていた場合など、について客観的な証拠に基づいて主張していく必要があるでしょう。
容疑を認める場合には、被害者、実際の交渉相手は被害者の保護者となりますが、示談交渉を行い、示談を成立させることが事件解決のキーとなります。
一方、容疑を争う場合には、自己に不利な供述がとられないよう取調べに対応し、自己に有利な主張を支える証拠を収集する必要があるでしょう。
そのため、淫行条例違反事件で被疑者として捜査対象となった場合には、弁護士に相談し、きちんと対応することをお勧めします。
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淫行条例違反事件で対応にお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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勾留阻止で釈放
勾留阻止で釈放を目指す場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県関市の会社に勤めるAさんは、会社の女子トイレにカメラを設置し、盗撮しようとしました。
カメラに気付いた女性が上司に報告し、会社は岐阜県関警察署に通報しました。
その後、カメラにAさんがカメラを設置している様子が録画されていたことが分かり、関警察署はAさんを迷惑防止条例違反の疑いで逮捕しました。
Aさんは、その後岐阜地方検察庁に送られ、検察官からの取調べを受けることになりました。
検察官の取調べ前に、Aさんの家族から依頼を受けて駆け付けた弁護士と接見をすることになり、Aさんは弁護士に今後の流れや釈放の可能性について聞いています。
(フィクションです。)
逮捕後の流れ
あなたは、ある罪を犯したと疑われ、警察に逮捕されました。
警察官は、あなたを警察署に連行し、事件についての取調べを行います。
強制的に被疑者の身柄を確保した場合、捜査手続には時間制限が設けられていますので、その限られた時間の範囲内で警察や検察は捜査を行います。
警察は、あなたを逮捕した時から48時間以内に、あなたを釈放するか、そうでなければ、関係書類や証拠物と一緒にあなたの身柄を検察官に送ります。
釈放された場合、あなたは普段の生活を送りながら、取調べのために何度か警察署に出頭することになります。
一方、検察官に送致された場合、あなたの身柄は検察庁に送られ、検察官からの取調べを受けます。
そして、検察官は、警察から送られてきた関係書類や証拠物、あなたの取調べでの供述を検討し、あなたの身柄を確保したまま捜査をすすめるべきか、それとも釈放すべきかを検討します。
この判断は、検察官があなたの身柄を受けてから24時間以内にされます。
検察官が、あなたの身柄を確保したまま捜査すべきと判断すれば、検察官は裁判官に対してあなたを勾留するよう請求します。
検察官からの請求を受けた裁判官は、あなたと面会した上で、あなたを勾留するかどうかを判断します。
裁判官が、あなたを勾留しないと判断すれば、あなたは即日釈放されます。
他方、勾留の決定がなされれば、あなたは、検察官が勾留の請求をした日から原則10日間警察署の留置場などに収容されることになります。
勾留期間は原則10日ですが、検察官が勾留の延長を請求し、裁判官がこれを認めれば、逮捕から最大23日もの間、あなたの身柄が拘束されることになります。
そうなれば、あなたは勾留期間中会社や学校に行くことができませんので、事件が明るみになり、懲戒解雇や退学といった処分が下されてしまうおそれも出てきます。
そのような事態を避けるためにも、逮捕後すぐに弁護士に相談・依頼し、勾留阻止に向けた活動を行い、釈放を目指すことが重要です。
勾留阻止に向けて
勾留の要件としては、①被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること、②住居不定、罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれのいずれかがあること、③被疑者を勾留する必要性、相当性があること、④先行する逮捕手続が適法であること、があげられます。
勾留阻止に向けた活動では、勾留の要件が欠けることを具体的に主張する必要があります。
例えば、②の要件を充たさないことを主張する場合、特に、罪証隠滅のおそれ、そして逃亡のおそれの有無についてが問題となることが多いのですが、罪証隠滅のおそれについては、罪証隠滅の対象となる被害者や目撃者の連絡先を知らない場合や、被害者と既に示談が成立している場合には、被疑者が被害者らに近づき被害届の取下げを迫ったり供述を変えるよう脅したりする可能性がないことを述べ、罪証隠滅を疑うに足りる相当な理由が認められないことを主張します。
また、逃亡のおそれについては、被疑者が定職に就いていたり、扶養する家族がいる場合や、会社の重要な役職を任されていたり、被疑者が学生である場合には授業に出席しなければ卒業に必要な単位がとれないなどといった、被疑者がその立場を捨ててまで逃亡する可能性がないことを示すことにより、逃亡すると疑うに足りる相当な理由が認められないことを主張します。
加えて、勾留の必要性・相当性に欠ける点を主張することも勾留阻止においては重要です。
事案の軽重・種類・態様等の事件の性質や、被疑者の年齢・境遇・心身の状況、家族関係経済状況といった被疑者の個人的事情から、被疑者を勾留する必要がなく、勾留することが相当でない、つまり、勾留によって被疑者が被る不利益が大きいことを具体的事情を述べて主張する必要があります。
勾留阻止に向けた活動は、具体的には3つの段階に分けられます。
まずは、検察官に送致された段階です。
事件が検察官に送致された場合には、検察官との面談や意見書の提出の方法により、勾留の要件に欠けることを主張し、検察官に勾留の請求をしないよう働きかけます。
次の段階は、検察官が裁判官に対して勾留請求をした段階です。
裁判官が勾留の判断をする前に、裁判官と面談する、あるいは意見書を提出することによって、勾留の要件を充たしていない旨を主張し、勾留の決定をしないよう働きかけます。
最後は、勾留が決定された段階です。
それまでの勾留阻止に向けた働きかけは、正式な手続に沿ったものではなく、あくまでも勾留しないようにとのお願いという形でしたが、勾留が決定した後には、その決定に対する不服申立という手続をとることができます。
この手続により、勾留を決定した裁判官とは別の3人の裁判官によって、最初の決定に間違いがないかが判断されます。
不服申立が認められれば、勾留を決定した裁判は取り消され、検察官の勾留請求は却下されるため、被疑者は釈放されることになります。
逮捕から勾留が決まるまでの時間はそう長くはありません。
早期の釈放を目指すのであれば、逮捕後すぐに勾留阻止に向けた活動に着手する必要があります。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が刑事事件・少年事件を起こし逮捕されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
財布の置き引きで逮捕
財布の置き引き事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県揖斐郡池田町のスーパーマーケットのセルフレジに置き忘れられた財布を持ち去ったとして、岐阜県揖斐警察署は、市内に住むAさんを窃盗の疑いで逮捕しました。
財布の持ち主が店を出た直後に財布がないことに気が付き、利用したセルフレジに戻ったところ既に財布はなく、店員に問い合わせましたが落とし物の届は出ていませんでした。
財布の持ち主は岐阜県揖斐警察署に被害届を出したことで事件の捜査が開始されました。
(フィクションです。)
財布の置き引きは何罪?
誰かが置き忘れたであろう財布を見つけて、それを自分のものにしようと持ち去った場合、窃盗罪、もしくは、占有離脱物横領罪が成立する可能性があります。
■窃盗罪■
窃盗罪は、他人の財物を窃取する罪です。
「他人の財物」とは、「他人が占有する財物」のことです。
ここでポイントとなるのが「占有」という概念です。
窃盗における「占有」は、人が物を実力的に支配する関係を意味し、「他人が占有する」とは、自分以外の者が事実上支配している状態のことをいいます。
事実上支配している状態には、物を客観的に支配している場合はもちろんのこと、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も含まれます。
事実上支配しているかどうかについての判断は、支配の事実と占有の意思があるかどうかの点から行われます。
「窃取」とは、財物の占有者の意思に反して、その占有を侵害し、目的物を自己又は第三者の占有に移すことをいいます。
窃盗罪の成立には、以上の客観的要件に加えて、主観的要件を満たしている必要があります。
この主観的要件は、故意、そして、不法領得の意思です。
故意は、罪を犯す意思のことで、窃盗罪の場合は、他人の占有する財物を摂取することの認識・認容です。
そして、故意とは別に、不法領得の意思がなければ窃盗罪は成立しません。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い、これを利用し又は処分する意思のことです。
例えば、嫌がらせ目的で財布を盗んだだけであれば、窃盗罪には当たりません。
■占有離脱物横領罪■
占有離脱物横領罪は、遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領する罪です。
「横領」とは、不法領得の意思をもって、占有を離れた他人のものを自己の事実上の支配内におくことをいいます。
「他人の占有を離れた」とあることからも分かるように、窃盗罪と区別するポイントは、他人の財物を入手した時点で、その財物に他人の占有が認められるか否か、となります。
先にも述べたように、他人の「占有」は、持ち主がその物を持っている状態だけでなく、持ち主が物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態も含みます。
そして、持ち主が、物を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態かどうかは、持ち主の物に対する支配の事実や占有の意思の観点から判断されます。
具体的には、持ち主が物を置き忘れてから気付くまでの時間的・場所的近接性や、持ち主が物を置き忘れた場所をどの程度認識していたかなどが検討されます。
上の事例では、持ち主が店を出てすぐに財布を置き忘れたことに気が付いており、セルフレジに向かったことから、持ち主は、気が付いた時に置き忘れた場所にすぐに戻って取り戻せることができる時間的・場所的関係にあり、物の支配を取り戻そうと思えばいつでも取り戻せる状態にあったと言えるでしょう。
いずれの罪が成立するにせよ、財産犯の場合、被害者への被害弁償と示談の有無が最終的な処分結果に大きく影響することになります。
そのため、できる限り早期に被害者への謝罪と被害弁償を行い、示談成立に向けて動く必要があります。
被害者との示談交渉は、弁護士を介して行うのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
他人の財布を置き引きして逮捕されてお困りであれば、弊所の弁護士に今すぐご相談ください。
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薬物事件で即決裁判手続
即決裁判手続について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県海津警察署は、岐阜県海津市に住むAさん(自営業)を覚せい剤取締法違反(所持)の疑いで逮捕しました。
後日、Aさんの妻のもとに、Aさんが勾留されたとの連絡がきました。
Aさんが不在では店を回すことが難しく、Aさんの妻は一日でも早く戻ってきてほしいと思っています。
Aさんの妻は、急いで対応してくれる弁護士を探し出しました。
(フィクションです。)
薬物事件~公判請求が不可避な場合~
薬物事犯には、覚せい剤取締法違反、大麻取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反などがありますが、違反に対する刑罰はきわめて厳しくなっています。
例えば、覚せい剤の単純所持の法定刑は、10年以下の懲役となっており、大麻の単純所持については、5年以下の懲役であり、罰金刑はありません。
薬物事件で逮捕されたからといって、必ずしも起訴されるとは限りません。
有罪を証明するだけの十分な証拠がない場合や、有罪の立証には十分な証拠はあるけれども、所持していた薬物の量が微量で本人の再犯可能性が低いと思われるような場合には、不起訴で処理されることもあります。
しかしながら、薬物事犯は、他の犯罪と比べると起訴されることが多く、重大犯罪につながりやすい覚せい剤事犯や薬物の再犯であれば起訴される可能性は非常に高くなります。
上の事例では、Aさんは覚せい剤の使用で逮捕・勾留されています。
初犯であり、個人での使用とはいえ、Aさんが起訴される可能性は高いでしょう。
しかしながら、初犯かつ単純な使用の覚せい剤事犯であれば、起訴されたとしても、執行猶予付きの判決が望めるところとなります。
そのような場合には、公判請求されたとしても、できる限り早期に判決を得て被告人を裁判手続から解放させるべく、即決裁判手続を行うよう活動することが弁護人に求められることがあります。
即決裁判手続とは
即決裁判手続とは、事案が明白かつ軽微で、罰金または執行猶予判決が見込まれる争いのない事件について、被疑者・弁護人の同意の下、簡易で迅速な訴訟手続を行う制度のことです。
■即決裁判手続の要件■
①事案が明白であり、かつ、軽微であること、証拠調べが速やかに終わると見込まれるなど、即決裁判手続で審理するのが相当と認められる事件であること。
②死刑、無期、短期1年以上の懲役または禁錮に当たる罪ではないこと。
③被疑者の書面による同意があること。
④被疑者に弁護人があるときは、弁護人の書面による同意があるか、少なくとも意見を留保していること。
これらの要件を満たす場合に、検察官は即決裁判手続の申立てを行います。
即決裁判手続は、起訴からできる限り早い時期に公判期日が指定されます。
そして、原則として1回の審理で即日執行猶予判決が言い渡されます。
即決裁判手続は、被告人にとって、起訴後速やかに公判期日が開かれ、執行猶予付き判決となるというメリットがあります。
そのため、争いがなく執行猶予が見込まれる事件では、身体拘束を早期に解くためにも、捜査段階で検察官に即決裁判手続の申立てをするよう働きかけることを検討することがあります。
即決裁判手続となるよう働きかけるべきか否かは、事案にもよりますので、薬物事件で逮捕・勾留されてお困りの方は、一度薬物事件に精通する弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
ご家族が薬物事件で逮捕・勾留されてお困りであれば、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
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