Archive for the ‘未分類’ Category
強制わいせつ事件で逮捕
強制わいせつ事件で逮捕された場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県恵那警察署は、岐阜県恵那市に住むAさんを強制わいせつの容疑で逮捕しました。
ネットで知り合った女性に対して、Aさんは医師でもないのに「乳がんかどうか調べてあげる。」と言って、女性の胸を触るなどのわいせつな行為をしました。
女性は、その後、岐阜県恵那警察署に相談し、今回の事件が発覚しました。
Aさんは、「性的意図はなかった。」と供述しています。
(フィクションです。)
強制わいせつ罪
強制わいせつ罪は、個人の性的自由に対する罪であり、刑法第176条で次のように規定されています。
13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
◇客体◇
男女問わず、強制わいせつ罪の客体となります。
◇行為◇
強制わいせつ罪における行為は、
①13歳以上の者に対しては、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をすることであり、
②13歳未満の者に対しては、手段としての暴行または脅迫は要件となっておらず、単にわいせつな行為をすること、
です。
暴行・脅迫
「暴行」とは、他人の身体に対する有形力の行使をいいます。
「脅迫」は、恐怖心を起こさせる目的で、他人に害悪を告知することです。
判例・通説によれば、暴行または脅迫は、被害者が抵抗すること著しく困難となるような程度のものであることが求められます。
暴行は、殴打や体を押さえつけることのほか、衣服を引き剥ぎ、裸の写真を撮る行為などがそれに当たり、暴行そのものがわいせつ行為であってもよいとされます。
わいせつな行為
「わいせつ」とは、公然わいせつ罪やわいせつ物頒布罪における「わいせつ」とほぼ同じ意味の「いたずらに性欲を興奮または刺激せしめ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する」こととされています。
例えば、指を陰部に挿入する行為、被害者の意思に反して乳房や尻に触れる行為、無理やりキスする行為は、わいせつ行為に当たります。
◇主観的要件◇
強制わいせつ罪が成立するための主観的要件として、故意のほかに、「性欲を刺激興奮させまたは満足させるという性的意図」を要求し、報復目的で被害者を裸にして写真撮影をした加害者を無罪とした判決(最判昭45・1・29)があります。
しかしながら、強制わいせつ罪において性的意図が必要とした判決に対しては、個人の性的自由の侵害を本質とする強制わいせつ罪において、加害者側の性的意図の有無により犯罪の成立に影響を与えるべきではないという批判もありました。
このような批判もある中で,近時,最高裁判所で、金銭目的で被害児童にわいせつな行為を行い、その様子を撮影するなどした事案において、昭和45年判決は性犯罪に対する当時の社会的理解に大きく依拠したものと考えられ、その後の社会の変化により、今日では、性的意図の存在を,強制わいせつ罪成立のための要件とすることはできないと判断されました(最判平29・11・29)。
ただ、上記の最高裁判決でも,性的意図は強制わいせつ罪が成立するための必須の要件ではないとしただけであり、一切考慮されないとはしていません。
行為の客観的性質や客観的状況からだけでは、強制わいせつ罪におけるわいせつ行為であるかどうかの判断がつかない場合には、行為のわいせつ性を判断する際に加害者の主観面も考慮して判断せざるを得ないとされています。そして,行為そのものの性質に着目しただけで「わいせつな行為」である、あるいはないと判断できる場合と、それだけでは判断できない場合とがあり、判断できない場合には、行為そのものの性質に加えて加害者の主観面も含めた、行為時の具体的状況等の諸般の事情を総合的に考慮して判断するとされました。
平成29年判決の事案は、被告人に性的意図があったと認定するには合理的な疑いが残るが、行為の客観的性質から明らかに強制わいせつ罪におけるわいせつ行為に当たり、故意が認められる以上、強制わいせつ罪の成立を認めました。
上記事例では、Aさんは乳がんの診断と称して女性の胸などを触っていますが、Aさんは医師ではありませんし、胸を触るような正当な理由はありません。仮にAさんが診療目的などを主張し,わいせつ目的ではなかったと主張した場合であっても,胸の触り方や,時間,場所などの具体的事情如何では,Aさんの行為の客観的性質から強制わいせつ罪における「わいせつ行為」であると認定され、強制わいせつ罪の成立が認められる可能性があります。
強制わいせつ罪の法定刑は懲役形のみであり、比較的重い罪ですので、強制わいせつの疑いで捜査を受けておられるのであれば、今後の対応などについて弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
飲酒運転で物損事故
飲酒運転で物損事故を起こした場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
会社まで車で通勤していたAさんは、会社の飲み会の後はタクシーで帰ろうと考えていました。
しかし、Aさんは、飲み会後、タクシー代が惜しくなり、「そんなに酔ってないし大丈夫だろう。」と思い、車で家まで帰ることにしました。
帰宅途中、岐阜県下呂市の道路脇にある電柱にぶつかるという物損事故を起こしてしまいました。
Aさんは、警察に通報し、現場に駆け付けた岐阜県下呂警察署の警察官に事情を聴かれています。
Aさんは正直に飲酒運転を認めていますが、今後どうなるのか不安です。
(フィクションです。)
物損事故と刑事事件
交通事故は、車両を運転する人なら誰にでも起こし得るものです。
交通事故を起こした場合、交通事故の被害者に対する損害賠償の責任を負う民事上の責任、免許停止や取り消しといった処分を受ける行政上の責任、そして交通事故により人を死傷させてしまった場合などは刑事上の責任を負う可能性があります。
交通事故を起こした場合であっても、物損事故にとどまる場合には、通常は刑事責任を問われることはありません。
ただし、最初から物を壊す目的で物損事故を起こした場合には、器物損壊罪に問われる可能性があります。
物損事故自体については刑事責任に問われないとしても、事故の原因が飲酒運転やスピード違反であったり、事故を起こした後に警察に報告しなかったり道路上の危険を防止する措置を講じなかった場合には道路交通法違反という罪が成立することがあります。
飲酒運転
上の事例では、Aさんは飲酒運転の結果、物損事故を起こしています。
Aさんは、事故を起こした後に警察に通報していますので、当て逃げには当たりません。
しかしながら、飲酒運転については道路交通法違反に当たる可能性があります。
道路交通法は、その65条1項において、
何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。
と規定しており、酒気を帯びて車両等を運転することを全面的に禁止しています。
「酒気を帯びて」とは、社会通念上酒気帯といわれる状態をいうものであり、顔色や呼気等の外観上認知できる状態にあることをいいます。
道路交通法は、酒気を帯びて車両等を運転することを禁止しているのですが、この禁止に違反した場合、その違反が「酒酔い運転」または政令数値以上の「酒気帯び運転」に当たるときに限り罰則を設けており、政令数値未満の単なる「酒気帯び運転」については、訓示規定にとどめています。
①政令酒気帯び運転
政令で定める一定基準を超えたアルコールを身体に保有して運転する場合が該当します。
つまり、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上検出された状態がこれに当たります。
この酒気帯び運転の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
②酒酔い運転
先の酒気帯び運転とは異なり、酒酔い運転は身体内に保有するアルコール濃度の数値ではなく運転者の客観的状態から判断されます。
アルコールが原因で正常な運転ができないおそれがある状態(=酒に酔った状態)で車両等を運転した場合には、酒酔い運転となります。
酒酔いの認定は、アルコール保有量の科学的検査、飲酒量、身体の状況(言語、歩行、直立能力など)、自動車の運転状況、その他の諸般の事情を総合的に考慮して行われます。
酒酔い運転の法定刑は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金と、酒気帯び運転よりも重くなっています。
このように、物損事故であっても、飲酒運転が原因である場合には、飲酒運転について刑事責任に問われることになります。
飲酒運転のみの場合、逮捕されることはあっても、その後勾留される可能性は低く、長期の身体拘束のおそれはそう高くないでしょう。
しかしながら、飲酒運転による悲惨な人身事故が多発していることからも、飲酒運転に対する処分も厳しいものになっており、物損事故であっても、起訴される可能性は少なくありません。
ただ、法定刑に罰金刑が含まれるため、酒気帯び運転の場合、初犯であれば略式手続に付される場合もあります。
事案によって見込まれる処分も変わってきますので、飲酒運転で物損事故を起こし対応にお困りであれば、一度弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずはお気軽にご連絡ください。
レンタカーを横領で逮捕
レンタカーを横領した場合について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県北方警察署は、横領の疑いで岐阜県本巣市に住むAさんを逮捕しました。
Aさんは、今年の1月に本巣市内のレンタカー店で高級外車を借りました。
Aさんからは、数回契約期間延長を申請する連絡がありましたが、その後Aさんと連絡がとれなくなったため、レンタカー店は北方警察署に被害届を提出しました。
調べに対し、Aさんは、「そのうち返すつもりだった。」と供述しています。
(フィクションです。)
レンタカーを返却せず横領罪?
借りたレンタカーを返却しなかった場合、横領の罪に問われる可能性があります。
横領の罪とは
横領
刑法第252条 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する。
2 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。
横領罪は、他人の委託に基づいて物を占有している者が、その物を領得する行為を内容とする犯罪です。
ここでは1項について説明します。
◇主体◇
横領罪の主体は、「他人の物の占有者」です。
◇客体◇
横領罪の客体は、「自己の占有する他人の物」です。
「占有」というのは、事実上または法律上物に対する支配力を有する状態のことです。
そして、横領罪における「占有」は、物の所有者と行為者との間の委託信任関係に基づくことが必要となります。
一般的に、民法の契約に基づいて委託信任関係が発生しますが、法定代理人や法人の機関としての地位、事務管理、後見に基づく場合にも当該関係が認められます。
この委託信任関係は、事実上のものであればよく、委託者が物の保管を委託する法律上の権限を有しているか否か、受託者が受託する上で法律上の権限を有するか否かは問題となりません。
「他人の物」とは、他人の所有する財物のことをいいます。
レンタカーを借りる際、店側との自動車の賃貸借契約を交わします。
貸渡人である店が、貸受人である客に店の車を「貸す」という内容の契約ですので、借りた車自体の所有権は店にあり、客に移るわけではありません。
しかし、借りた車を支配しているのは客ですので、客が車を占有している状態にあります。
つまり、レンタカー店から借りている車は、「委託信任関係に基づいて自己が占有する他人の物」と言えます。
◇行為◇
横領罪の実行行為は、自己の占有する他人の物を「横領」することです。
「横領」の意義については、不法領得の意思を実現する行為とする領得行為説と、委託の趣旨に反した権限を越える行為とする越権行為説との対立がありますが、判例は前者によっています。
横領=不法領得の意思を実現する行為となるのですが、「不法領得の意思」とは、判例によれば、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思のことです。
この点、Aさんは「返すつもりだった。」と弁解していますが、使用窃盗が不可罰とされるように、委託物の一時的な無断使用も不可罰とされると理解することができるでしょう。
しかしながら、短期間使用することの許諾を得て自動車を借り受けた者が、その許諾の限度を超えて8日間にわたり自動車を乗り回した事案について、不法領得の意思を認めた判決(大阪高判昭和46・11・26)や、会社の職員が、その保管する会社所有の機密資料をコピーする目的で一時的に持ち出した事案について、使用後に返還する意思があったとしても、不法領得の意思を認めた判決(東京地判昭和60・2・13)があり、その利用が、権利者が許容しないであろう程度・態様のものである場合には、不法領得の意思が認められる可能性があるでしょう。
横領罪の法定刑は、5年以下の懲役で、罰金刑が設けられておらず、刑法犯のなかでも比較的重い罪となっています。
しかしながら、被害額がそれほど大きくなく、初犯であり、被害者に対する被害弁償ができれば、不起訴処分となる可能性はあります。
不起訴となれば、前科が付くことはありませんし、身柄が拘束されている場合には即釈放となります。
横領の罪に問われて対応にお困りの方は、すぐに弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門とする法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
まずは、お気軽にお電話ください。
準強制性交等事件で否認
準強制性交等事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
Aさんは、知人のVさんと食事に出かけました。
AさんもVさんは、居酒屋で飲食した後、Aさんの部屋で飲み直すことになりました。
家で飲み始めてしばらくして、Vさんは「眠たい。」と言ってベッドに横になろうとしたため、Aさんがそれを助けようとしてVさんの身体に触ったところ、Aさんはムラムラし始め、Vさんにキスをしました。
Vさんが拒まれなかったため、AさんはVさんは嫌がっていないのだと思い、そのまま行為に及びました。
しかし、翌日、Vさんは岐阜県岐阜南警察署に被害届を提出し、Aさんは準強制性交等の疑いで逮捕されていましました。
(フィクションです)
男女間のトラブルから刑事事件に発展するケースは少なくありません。
知人間で性的関係を持った場合には、一方が同意がなかったとして捜査機関に相談し、強制性交等や準強制性交等事件として立件される可能性もあります。
準強制性交等罪
(準強制わいせつ及び準強制性交等)
第178条 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第176条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。
準強制性交等罪は、刑法第178条2項に規定されています。
本罪は、①人の心神喪失・抗拒不能に乗じて、性交等をすること、②人の心神を喪失させ又は抗拒不能の状態に陥らせて、性交等をすること、を処罰の対象とします。
◇心神喪失◇
「心神喪失」とは、精神障害によって正常な判断能力を失っている状態をいいます。
強度の精神薄弱、泥酔、熟睡、麻酔状態などが「心神喪失」に当たります。
◇抗拒不能◇
「抗拒不能」とは、心神喪失以外の理由で心理的・物理的に抵抗が不可能又は著しく困難な状態にあることをいいます。
例えば、共犯関係にない第3者に手足を縛られていたり、暴行脅迫を受けて畏怖している状態、疲労しきっている状態などです。
過去の裁判では、覚醒剤を注射し、その薬理作用により意識障害を起こさせ、被害者が抗拒不能の状態に陥った状態で性交した事件では、抗拒不能ににさせたとしたもの(福岡高判昭54・6・13)があり、医師による適切な医療行為であると誤信させて性交した事件については、錯誤によって行動の自由を失っている状態に陥れるのも抗拒不能にさせたといえるとした判例があります。(大判大15・6・25)
「心神喪失・抗拒不能に乗じ」るとは、既存の状態を利用することであり、泥酔している人に対して性交等をすることや深夜配偶者と誤信させて性交等をすることなどがこれに当たります。
また、「心神喪失・抗拒不能にさせ」るとは、その状態に陥れることで、その方法には麻酔や催眠術、欺罔などがあります。
上の事例のように、飲酒の影響下で性的関係を持つケースは少なくありませんが、相手方が「心神喪失」にあったと認められる程度泥酔していた状況を利用して性交等に及んだ場合には準強制性交等罪が成立する可能性があります。
このような場合に準強制性交等罪が成立するか否かのポイントは、主に、
①被害者が行為時に心神喪失であったかどうか。
②行為者が行為時に被害者が心神喪失の状態にあると思わなかったかどうか。
の2点にあります。
被害者が行為時に心神喪失であったか否かについては、お店でどれぐらい飲酒したのかや行為前の被害者の歩行状態、例えば、Aさん宅に入る前の被害者の歩行の様子が映った防犯カメラの映像などといった行為前後の被害者の客観的状況を考慮して判断されます。
行為者が行為時に被害者が心神喪失の状態にあると思わなかったか否かについては、故意の問題であり、抗拒不能の認識がない場合には故意がかけ犯罪が成立しないことになります。
客観的状況を行為者が認識し得る状況にあったかどうかをもとに、被疑者供述の信用性を判断します。
準強制性交等事件で逮捕されお困りの方は、刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスのご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881までご連絡ください。
ひき逃げ事件の故意否認
ひき逃げ事件の故意否認について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県可児警察署は、Aさんを過失運転致傷及び道路交通法違反(救護義務違反)の容疑で逮捕しました。
岐阜県可児郡御嵩町の路上で歩行者と接触し転倒させたにも関わらず、そのまま現場を立ち去ったとの疑いがAさんにかかっているとのことです。
Aさんは、事故を起こしたとの記憶がないため、ひき逃げについても全く覚えがありません。
Aさんは、どう対応したらいいのかと困っています。
(フィクションです。)
ひき逃げとは
いわゆる「ひき逃げ」というのは、交通事故を起こし、人に怪我を負わせたにもかかわらず、何もせずにそのまま現場から立ち去る行為のことです。
ひき逃げ行為は、道路交通法に定められている「救護義務」及び「報告義務」に違反します。
1.救護義務(道路交通法72条1項前段)
交通事故があつたときは、当該交通事故に係る車両等の運転者その他の乗務員(以下この節において「運転者等」という。)は、直ちに車両等の運転を停止して、負傷者を救護し、道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない。
交通事故を起こした場合には、負傷者を救護し、被害拡大を防止する措置をとらなければならないことを定めています。
「交通事故」とは、車両等の交通による人の死傷もしくは物の損壊のことを指します。
この「交通事故」が発生した場合には、上のような措置をとる義務が運転者らに課せられるのですが、その義務が発生するには、そもそも「交通事故」が発生していなければなりません。
義務を運転者らに負わせるためには、運転者らが、その車両等の交通によって人を死傷させた、あるいは物を損壊したことについて認識していることが必要となります。
なぜならば、救護義務違反は、「ついうっかり」という「過失」犯ではなく、「わざと」である「故意」犯であるからです。
ここで問題となるのが、その認識の程度です。
これについては、①人又は物件に接触し、若しくはこれを転倒せしめたことのみについての認識で足りるとする見解、と、②人の死傷又は物件の損壊を生ぜしめたことの認識まで必要とするとの見解があります。
2つの見解のうち、②が有力とされており、救護義務違反の罪は故意犯であり、人の死傷又は物件の損壊という点について認識が必要とされるが、その認識は、必ずしも確定的なものである必要まではなく、未必的で足りるとするのが判例となっています。
例えば、進路付近に人か動物かよくわからないけれども何か動く物があることを発見しつつ、その直後に異様なショックを感知したような場合に、人の死傷か物件の損壊のいずれかについての事故の確定的認識はなかったとしても、未必的認識があったと認めたもの(最高裁、昭和47年3月28日)や、車両が他人の車両や物件に接触または衝突したときは、相手方の運転者等が怪我を負っていることまでの認識がなかったとしても、接触・衝突の認識があれば、少なくとも相手方の車両や物件の損壊については未必的にも認識があったと認められ、義務違反を認めたもの(東京高裁、昭和30年1月28日)があります。
認識の程度についての判断は、個々の交通事故について具体的状況に基づいて行われますが、一般的には、交通事故当時の運転者等の身体的・心理的状況、現場の状況、事故発生時の衝撃・音響・叫び声の有無、車両の損壊、事故の態様など客観的事情を総合的に考慮して判断されることになります。
このような客観的事情から、Aさんが接触事故を起こしたこと自体を認識していたとは認められない場合には、救護義務違反は成立しないことになります。
2.報告義務(道路交通法72条1項後段)
この場合において、当該車両等の運転者(運転者が死亡し、又は負傷したためやむを得ないときは、その他の乗務員。以下次項において同じ。)は、警察官が現場にいるときは当該警察官に、警察官が現場にいないときは直ちに最寄りの警察署(派出所又は駐在所を含む。以下次項において同じ。)の警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならない。
交通事故が発生した場合には、事故関係者は事故現場の状況を警察官に報告しなければなりません。
この義務違反についても、救護義務違反と同様に故意犯であるため、そもそも交通事故の認識がなければ成立しません。
Aさんのように歩行者と接触したこと自体気付いていなかった場合には、故意はなくひき逃げには当たらない旨を主張することになります。
取調べでは、自己に不利な供述がとられないよう、早期に弁護士に相談し取調べ対応についてのアドバイスをもらうようにしましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、交通事件にも対応する刑事事件専門の法律事務所です。
ひき逃げを疑われており対応にお困りの方は、一度弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
少年の恐喝事件
少年の恐喝事件について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県加茂警察署は、知人のVくんに暴行を加えて現金1万円と財布などを脅し取ったとして、Aくん(16歳)とBくん(15歳)を恐喝の疑いで逮捕しました。
二人は容疑を認めているとのことですが、逮捕の連絡を受けたAくんの母親は、今後どうなるのか不安で仕方ありません。
Aくんの母親は、すぐに対応してくれる弁護士を探すことにしました。
(フィクションです。)
まずは、恐喝罪とはどのような罪であるのかについて説明します。
恐喝罪
恐喝罪は、
①人を恐喝して、財物を交付させる
②人を恐喝して、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させる
罪です。
◇客体◇
恐喝罪の客体は、他人の占有する他人の財物と財産上の利益です。
◇行為◇
恐喝罪の行為は、
(a)人を恐喝して財物を交付させること
(b)人を恐喝して財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させること
です。
「恐喝」というのは、脅迫または暴行を手段として、その反抗を抑圧するにたりない程度に相手方を畏怖させ、財物の交付または財産上不法の利益を得させるよう要求することです。
ここでいう「脅迫」とは、人を畏怖させるにたりる害悪の告知をいいます。
また、「暴行」とは、人に対する不法な有形力の行使のことです。
恐喝罪に求められる暴行・脅迫の程度は、相手方の反抗を抑圧する程度に達していないレベルのものであり、相手方の反抗を抑圧する程度に達する場合には、恐喝罪ではなく強盗罪が成立することになります。
恐喝罪の成立には、恐喝行為の結果、畏怖した相手方の処分行為に基づいて財物を交付し、財物の占有を取得したという、恐喝行為と財物の交付との間には因果関係が必要となります。
不法利益取得の場合も、恐喝行為により相手方を畏怖させて利益を移転させたという因果関係が必要です。
恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役となっており、罰金刑はなく刑法犯のなかでも重い罪となっています。
少年の恐喝事件
少年による恐喝事件の多くは、同級生や後輩を脅して金銭を要求するといったいじめから発展したようなケースが多く見受けられます。
また、犯行を一人で行うことはほとんどなく、仲間と共謀して行うことが多く、そのような場合には共犯事件として扱われます。
複数人と共謀して恐喝したのであれば、共犯者ともども逮捕・勾留される可能性は非常に高いでしょう。
少年と言えども、他の仲間と口裏合わせをして責任逃れをしたり、被害者と接触して供述を変えるよう脅したりするおそれがあると考えられ、少年の身柄を拘束して捜査を進める必要があると判断されるからです。
捜査段階での逮捕・勾留、家庭裁判所送致後の観護措置により、少年が長期間身体拘束を余儀なくされる可能性はあります。
しかしながら、事件の内容や事件後の対応によっては、勾留や観護措置を回避することができる場合もありますので、逮捕のおそれがある場合や逮捕された場合には、早期に弁護士に相談するのがよいでしょう。
家庭裁判所に送致された後、審判で最終的な処分が決定することになります。
処分には、保護観察処分や少年院送致などさまざまな種類があります。
どのような処分が少年の更生に適したものであると判断されるかによりますが、非行事実の内容や要保護性の程度に基づいて行われます。
要保護性というのは、簡単に言うと、少年が将来再び非行に陥る危険性があり、保護処分により再非行を防止することが可能であることです。
恐喝事件は決して軽微な犯罪ではありませんが、その後に少年が反省し、被害者にも謝罪や被害弁償などを行うなかで事件と向き合うことができ、再び過ちを犯さないように家庭や交際関係など周囲の環境を整備している場合には、審判で要保護性が解消されたと判断される可能性があり、処分についても社会内処遇となることが期待できるでしょう。
少年事件は成人の刑事事件と異なる点も多いため、少年事件でお困りであれば、少年事件に強い弁護士にご相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
少年事件を数多く取り扱ってきた経験豊富な弁護士が対応いたします。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
少年審判に向けた付添人活動
少年審判に向けた付添人活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県岐阜市を走る電車内で、女子高生に対して痴漢をしたとして、市内に住む高校生のAくんが迷惑防止条例違反の疑いで逮捕されました。
岐阜県岐阜羽島警察署は、取調べ後にAくんを釈放しましたが、警察からは「後日、家庭裁判所に送られるので、少年審判を受けることになる。」と言われました。
少年審判と聞いて不安になったAくんとAくんの両親は、少年事件に強い弁護士に相談することにしました。
(フィクションです。)
少年審判について
捜査機関は、少年の被疑事件について捜査を遂げた結果、犯罪の嫌疑がある場合、および犯罪の嫌疑が認められない場合でも家庭裁判所の審判に付すべき事由がある場合は、すべての事件を家庭裁判所に送致しなければなりません。
これを「全件送致主義」といい、少年保護の専門機関である家庭裁判所に、少年に対してどのような処遇が適当かという判断を委ねるものであって、教育による少年の改善更生を目指すことを目的とするためと言われています。
事件が家庭裁判所に送致されると、少年は、家庭裁判所調査官による調査を受けた上で、審判期日での審理を行い、終局決定が言い渡されることになります。
少年事件は、成人の刑事事件のように公開法廷での公判が開かれることはなく、非公開の審判にて審理が行われます。
また、少年審判では、裁判官は、家庭裁判所送致の際に捜査機関から送付されてきた記録を検討し、調査官の調査等を踏まえた上で審判に臨むことになります。
そのため、審判までに裁判官は一定の心証を形成しており、審判期日で初めて付添人が意見を述べるのでは時すでに遅し、ということになります。
そのため、審判までに、書面を提出したり、調査官や裁判官と協議を行うなど、付添人の意見を家庭裁判所に事前にしっかりと伝えておかなければなりません。
裁判所では把握していない少年についての事情などもありますので、少年の更生に資する情報は積極的に裁判所に伝えておく必要があるでしょう。
少年審判に向けた付添人活動
審判では、非行事実及び要保護性について審理されます。
1.非行事実
非行事実は、成人の刑事事件でいうところの「公訴事実」です。
非行事実を争う場合には、少年の言い分を確認しつつ、証拠を十分に検討して、どのような主張立証活動を行うのか吟味しなければなりません。
非行事実に争いがない事件では、通常1回の審判で決定の告知まで行われるのに対して、審判期日に先立って進行協議や打ち合わせといった期日が設けられたり、証拠調べのための期日を複数回設けたりと期日が複数回にもなります。
2.要保護性
要保護性とは、次の3つの要素から構成されるものと考えられています。
①犯罪的危険性
少年の性格や環境に照らして、将来再び非行に陥る危険性があること。
②矯正可能性
保護処分による矯正教育を施すことによって再非行の危険性を除去できる可能性。
③保護相当性
保護処分による保護が最も有効かつ適切な処遇であること。
これらの要素を考慮して、要保護性について判断されます。
犯罪の軽重が量刑に直結する成人の刑事事件とは異なり、少年事件では、行った行為が重い罪に当たる場合でも、要保護性が解消されたと判断されれば、保護観察処分といった社会内処遇が選択されることもあるのです。
そのため、要保護性の解消に向けた活動は、非常に重要な付添人活動と言えます。
そのような活動には、少年自身の内省を深めたり、家庭や学校といった少年の居場所となる周囲の環境を改善することが含まれます。
痴漢事件であれば、なぜ事件を起こしてしまったのか、被害者はどのような気持ちでいるのか、再犯を防止するためには何をすべきか、といった点を少年自身が考えることが非常に重要です。
付添人は、少年が事件、そして被害者と向き合い、内省を深め、自身が抱える問題に向き合い、対処法を見つけ出せるよう手助けをします。
一方的に押し付けるのではなく、あくまでも少年自身が考えることが重要だからです。
また、家庭環境や学校などに問題がある場合には、どのように改善すべきかも少年や家族、学校関係者らと共に考え、更生のために適した環境を整えられるよう支援することも重要な活動です。
このように少年審判に向けた付添人活動は、最終的な結果にも影響し得る重要なものです。
お子様が事件を起こしてしまい対応にお困りであれば、少年事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
少年事件でお困りの方は、今すぐお電話ください。
勾留延長阻止で釈放
勾留延長阻止に向けた活動について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県養老郡養老町に住むAさんは、同棲する交際相手の女性に暴力を振るい怪我を負わせたとして、岐阜県養老警察署に傷害の疑いで逮捕されました。
Aさんは、逮捕後に勾留となり10日の身体拘束を余儀なくされています。
勾留延長を心配するAさんの両親は、早期釈放に向けて動いてくれる弁護士を探しています。
(フィクションです。)
DV事案については、被害者との関係性から、被疑者を釈放すれば、被害者と接触し被害者に供述を変えるよう迫るなど罪証隠滅のおそれが認められ、逮捕後に勾留される可能性は高いと言えるでしょう。
そもそも「勾留」というのは、被疑者・被告人を刑事施設等にその身柄を拘束する裁判及びその執行のことをいいます。
逮捕から48時間以内に、警察は被疑者の身柄を検察官に送致します。
そうでない場合は、被疑者を釈放しなければなりません。
被疑者の身柄を受けた検察官は、被疑者の身柄を受けてから24時間以内に、被疑者を釈放する、あるいは裁判官に対して当該被疑者について勾留請求を行います。
検察官の請求を受けて、裁判官は被疑者を勾留すべきか否かを検討し、勾留しないと決定した場合には、当該被疑者は釈放されます。
勾留とした場合、被疑者は、検察官が勾留請求をした日から原則10日間刑事施設で身柄が拘束されることになります。
検察官が、10日間で終局処分を決定することができず、更に捜査する必要があると考える場合には、裁判官に対して勾留延長の請求を行います。
この請求を受けて、裁判官は勾留延長について判断します。
勾留延長についても最大で10日間とすることができるので、延長が認められれば、最初の勾留請求の日から最大で20日もの間身柄が拘束されることになります。
身体拘束中は、刑事施設において、厳しい規制の中で生活しなければなりません。
外部との接触が極端に制限された環境での取調べは、精神的にも大きな負担となります。
また、身体拘束が長期化すればするほど、仕事や学校を休まざるを得ず、解雇や退学といった可能性も高まります。
そのため、身体拘束は、本人だけでなく、その家族の生活にも影響します。
最悪の事態を回避するためにも、一日も早く身体拘束から解放されることは重要です。
早期釈放を実現するには、できれば勾留が決定する前の段階から身柄解放活動に着手し、勾留を阻止することが望ましいでしょう。
また、勾留が決定した場合であっても、すぐに勾留に対する準抗告を行い、一日でも早く釈放されるよう働きかけることが重要です。
しかし、様々な理由から、弁護士に相談・依頼するのが遅くなり、相談・依頼したときには既に勾留日から日数が経過していることもあります。
そのような場合であっても、勾留の延長を阻止したり、勾留の取消しを行うなどの方法により、できる限り早期に釈放を目指しましょう。
DV事案では、勾留の判断の際に被害者との接触による罪証隠滅のおそれが認められることが多いため、弁護士は、被害者との示談を成立させることにより、勾留の理由または勾留の必要性がなくなったとして勾留取消請求を行ったり、被害者との示談が成立したことで最初の勾留期間内に終局処分をするよう検察官に要請し勾留延長を阻止するといった活動を行います。
長期の身体拘束は、被疑者・被告人だけでなく、その家族の生活にも大きく影響するため、できるだけ早くに釈放となるよう迅速に動かなければなりません。
そのような活動は、刑事事件に精通する弁護士に任せましょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
これまで数多くの刑事事件・少年事件で身柄解放活動を行い、早期釈放に成功してきた実績があります。
ご家族が刑事事件・少年事件で逮捕・勾留されてお困りの方は、今すぐ弊所の弁護士にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
薬物事件で一部執行猶予
一部執行猶予について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県岐阜市のAさんは、覚醒剤の使用で岐阜県岐阜北警察署に逮捕されました。
Aさんは、覚醒剤などの違法薬物を使用・所持の前科があります。
薬物から手を洗いたいと思うAさんですが、今回はさすがに実刑も覚悟しています。
逮捕の知らせを受けたAさんの家族は、すぐに薬物事件に強い弁護士に相談の電話を入れました。
(フィクションです。)
有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予し、その期間内に再度罪を犯すことなく経過した場合に刑罰権を消滅させる制度を「執行猶予」といいます。
この執行猶予には、「刑の全部執行猶予」と「刑の一部執行猶予」の2種類があります。
「刑の全部執行猶予」は、刑の全部の執行を猶予する執行猶予です。
例えば、裁判官に、「被告人を懲役3年に処する。その刑の全部の執行を5年間猶予する。」と言われた場合、被告人はすぐに刑務所に入ることはなく、5年間の間再び罪を犯すことがなければ、言い渡された懲役3年という刑罰の効力が失われることになります。
一部執行猶予について
刑の全部執行猶予とは異なり、服役期間の一部の執行を猶予するのが刑の一部執行猶予制度です。
この制度は、2016年6月から施行されています。
一部執行猶予は、「特別予防のための実刑のバリエーション」といわれており、受刑者の再犯防止や社会復帰のために効果的な制度として期待され導入されました。
一部執行猶予は、全部実刑と全部執行猶予の中間刑ではなく、あくまでの実刑の1種ですので、まずは実刑か全部執行猶予かが検討され、実刑の場合に一部執行猶予とするかが検討されることになります。
一部執行猶予は、刑法及び薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律に定められています。
1.刑法上の刑の一部執行猶予
刑法上の刑の一部執行猶予の対象となる者は、
・前に禁固以上の刑に処さられたことのない者
・前に禁固以上の刑に処さられたことがあっても、その刑の全部の執行を猶予された者
・前に禁固以上の刑に処さられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがない者
です。
また、言い渡される刑が3年以下の懲役又は禁固であり、犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、再犯防止に必要かつ相当であることが認められる場合に、1年以上5年以下の期間、その刑の一部の執行を猶予することができると定められています。(刑法第27条の2)
2.薬物使用等の罪を犯した者に対する刑の一部執行猶予に関する法律上の一部執行猶予
この一部執行猶予が適用できるのは、覚醒剤や大麻などの違法薬物の使用や所持等となっています。
この制度が適用される要件は、
・刑法上の刑の一部執行猶予の対象となる者
・薬物使用等の罪を犯した者
・犯情の軽重及び犯人の境遇その他の情状を考慮して、刑事施設における処遇に引き続き社会内において規制薬物等に対する依存の改善に資する処遇を実施することが再犯防止に必要かつ相当であることが認められる場合
とされます。
また、この場合には保護観察は必要的に付されることになります。
薬物事件で執行猶予が難しい場合には、一部執行猶予となるよう裁判に挑む場合もあります。
薬物事件においては、どのような環境が更生に適しているのかを考えることが大切です。
ご家族が薬物事件で被疑者・被告人となりお困りの方は、薬物事件に強い弁護士に相談されるのがよいでしょう。
弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所は、薬物事件を含めた刑事事件・少年事件を専門に扱う法律事務所です。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。
覚醒剤の所持で逮捕
覚醒剤の所持罪について、弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所が解説します。
~事例~
岐阜県瑞浪市に住むAさんは、突然岐阜県多治見警察署の家宅捜索を受けました。
すると、Aさんの自宅から覚醒剤が発見され、Aさんは覚醒剤の所持で逮捕されました。
Aさんは、「交際相手から預かったもので私は使用していません。」と述べています。
逮捕の連絡を受けたAさんの両親は、娘の薬物事件での逮捕に非常に驚きましたが、詳細が分からず困っています。
(フィクションです。)
覚醒剤の所持罪
覚醒剤が法律で禁止されている違法薬物であることはよく知られています。
覚醒剤については、覚せい剤取締法について規制されており、覚醒剤及び覚醒剤の原料の輸入、輸出、所持、製造、譲渡、譲受及び使用に関して厳しく取締っています。
覚醒剤事件のなかでも、覚醒剤の所持で検挙されるケースが多いです。
覚せい剤取締法第41条の2は、
覚醒剤を、みだりに、所持し、譲り渡し、又は譲り受けた者(第42条第5号に該当する者を除く。)は、10年以下の懲役に処する。
2 営利の目的で前項の罪を犯した者は、1年以上の有期懲役に処し、又は情状により1年以上の有期懲役及び500万円以下の罰金に処する。
3 前2項の未遂罪は、罰する。
と規定しており、「みだりに」「覚醒剤を」「所持する」ことを禁止しており、違反行為を処罰の対象としています。
「みだりに」というのは、社会通念上正当な理由が認められない、という意味で、日本国内の行為であれば、日本の法律に違反することを意味します。
「所持」の意義については、判例は、「人が物を保管する実力支配関係を内容とする行為をいうのであって、その実力支配関係の持続する限り所持は存続するものというべく、かかる関係の存否は、各場合における諸般の事情に従い社会通念によって決定されるものである」としています。(最高裁大法廷判決昭和30年12月21日)
この点、上記の事例について考えてみると、Aさんの自宅内に覚醒剤があったのであるから、Aさんは当該覚醒剤を自己の実力支配内に置いていたと言えるでしょう。
しかし、犯罪が成立するためには、「故意」がなければなりません。
故意とは、罪を犯す意思のことをいい、覚醒剤の所持罪の場合では、「覚醒剤を自己の実力支配内に置くことを認識していること」です。
覚醒剤事件では、他人の覚醒剤を所持した事案も少なくなく、その場合には、「他人が勝手に置いて行った。」とか、「その覚醒剤を自分で使うつもりはなかった。」と主張することが多いのですが、積極的に覚醒剤を保管する意思がなかった場合でも所持罪は成立するのか否かということが問題となります。
これについては、所持はあくまでも覚醒剤を自己の実力的支配内に置く行為であればよく、その態様の如何を問わないため、覚醒剤と知りながら自己の実力的支配内に置けば所持罪が成立するとされています。
そのため、Aさんは、「交際相手から預かったもので私は使用していません。」と言っていますが、Aさんが預かった物が覚醒剤であると知りつつ、それを自宅に置いていたのであれば、Aさんに対する覚醒剤の所持罪が成立することになります。
覚醒剤の所持罪の法定刑は、10年以下の懲役と重い罪となっています。
また、共犯が疑われるため、逮捕・勾留の身体拘束に加えて、接見禁止に付される可能性もあります。
そうなれば、弁護士以外の者との面会ができなくなってしまいます。
ご家族が覚醒剤事件で逮捕されてお困りであれば、薬物事件にも対応する刑事事件・少年事件専門の弁護士法人あいち刑事事件総合法律事務所にご相談ください。
無料法律相談・初回接見サービスに関するご予約・お問い合わせは、フリーダイヤル0120-631-881で24時間受け付けております。